がん保険
がんになったら医療保険だけで足りる?高額療養費制度と保障の落とし穴を解説

がんは日本人の2人に1人が生涯で罹患するとされる疾病です(国立がん研究センター がん情報サービス)。医療保険に加入していればがん治療もカバーされると考えがちですが、近年のがん治療は外来での抗がん剤治療が中心になりつつあり、医療保険の入院給付金だけでは対応しきれないケースが増えています。一方で、公的医療保険の高額療養費制度を活用すれば、月の自己負担は一定額に抑えられるという事実も見落とされがちです。この記事では、公的制度・医療保険・がん保険それぞれの守備範囲を整理し、過不足のない備え方を考えます。
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「最新がん統計」
まず確認すべき公的制度|高額療養費制度と傷病手当金

民間の医療保険やがん保険の必要性を判断する前に、公的医療保険制度でどこまでカバーされるかを確認しましょう。
高額療養費制度で月の自己負担に上限がある
健康保険が適用される治療(手術・抗がん剤・放射線治療など)であれば、高額療養費制度により月の自己負担額に上限が設けられています。69歳以下・年収約370万〜770万円の方の場合、月の自己負担上限は約8〜9万円程度です。
旧記事のシミュレーションでは「外来で抗がん剤治療・薬剤費年間100万円→全額自己負担」とされていましたが、健康保険適用の抗がん剤であれば高額療養費制度が使えるため、月の自己負担は約8〜9万円に収まります。年間でも約100万円ではなく、約100〜108万円程度が上限の目安となります(多数回該当でさらに軽減される場合もあります)。
出典:金融庁「公的保険について(民間保険の検討にあたって)」
傷病手当金で収入減もカバーされる
会社員や公務員が加入する健康保険には傷病手当金の制度があり、がん治療で仕事を休んだ場合に給与の約3分の2が最長1年6か月間支給されます。治療中の収入がゼロになるわけではないため、この制度を踏まえたうえで民間保険の必要額を考えることが重要です。ただし、自営業者が加入する国民健康保険には傷病手当金がないため、自営業者は民間保険での備えの優先度が高くなるでしょう。
医療保険でがん治療はどこまでカバーできるか

公的制度を確認したうえで、次に民間の医療保険の保障範囲を整理しましょう。
入院給付金と手術給付金はカバーされる
一般的な医療保険であれば、がんによる入院や手術は保障対象です。入院1日あたりの給付金が入院日数分支払われ、手術給付金は入院日額の10倍程度が一般的でしょう。がんの摘出手術や内視鏡手術、放射線治療を伴う手術なども対象となるケースが多いでしょう。
外来治療が保障されないケースに注意
医療保険でがん治療をカバーする際の最大の落とし穴は、外来中心の治療が保障されないケースです。近年のがん治療では、抗がん剤治療やホルモン療法が外来で行われることが増えており、入院日数は短期化しています。
入院給付金は入院日数に連動するため、外来中心の治療では給付額がごく少額、あるいはゼロになる可能性があります。通院給付金が付いている契約でも、「退院後の通院」のみを対象とし、入院を伴わない外来治療は対象外という契約が少なくないため、契約内容を事前に確認しておくことが重要です。
先進医療は医療保険の対象外
重粒子線治療や陽子線治療といった先進医療の技術料は、健康保険の適用外であり、高額療養費制度も使えません。全額自己負担となるため数百万円に及ぶケースもあるでしょう。医療保険に「先進医療特約」を付けていれば技術料がカバーされますが、特約を付けていない契約では保障対象外です。
がん保険の上乗せが有効なケース

公的制度と医療保険でカバーしきれない部分に備えるのが、がん保険の役割です。特に以下のケースでは、がん保険の上乗せを検討する価値があります。
・外来中心の抗がん剤治療が長期化する場合:医療保険の入院給付金では対応できない。がん保険の通院保障や診断一時金でカバーできる
・治療開始時にまとまった資金が必要な場合:がん保険の診断一時金は、がんと確定診断された時点でまとまった金額を受け取れる。セカンドオピニオンの費用や、治療に伴う生活環境の整備に充てられる
・差額ベッド代・ウィッグ・交通費など公的制度の対象外の費用:高額療養費制度の対象外であり、医療保険でもカバーされないケースが多い
・自営業者・フリーランス:傷病手当金がないため、治療中の収入減を診断一時金でカバーする意味が大きい
一方で、高額療養費制度+傷病手当金+貯蓄で対応できる範囲であれば、がん保険の上乗せは必須ではありません。公的制度でカバーできる部分と、自己負担で対応可能な部分を把握したうえで、不足分だけを民間保険で補うのが合理的な考え方です。
まとめ|公的制度→医療保険→がん保険の順で守備範囲を確認する
がん治療に備える際は、公的制度・医療保険・がん保険の3つの守備範囲を順番に確認することが重要です。
・高額療養費制度:健康保険適用の治療は月の自己負担に上限がある(約8〜9万円程度)
・傷病手当金:会社員は給与の約3分の2が最長1年6か月支給(自営業者は対象外)
・医療保険:入院・手術はカバーされるが、外来中心の抗がん剤治療が保障されないケースに注意。先進医療も特約がなければ対象外
・がん保険:診断一時金・通院保障・先進医療特約で、公的制度と医療保険の隙間を埋める役割
まずは高額療養費制度の自己負担上限額と傷病手当金の受給要件を確認し、次に加入中の医療保険が外来治療や先進医療をカバーしているかを保険証券で確認しましょう。そのうえで不足する部分があれば、がん保険やがん診断一時金特約の追加を検討するのが合理的です。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しました。執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



