社会保障
失業給付(基本手当)と再就職手当の仕組みを詳しく解説|2025年改正・給付日数・受給額の計算方法

雇用保険の基本手当(いわゆる失業給付)は、離職後の生活を支えながら再就職活動を行うための公的保障です。
2025年4月の雇用保険法改正により、自己都合退職の給付制限期間が従来の2か月から原則1か月に短縮されたほか、教育訓練を受講した場合には給付制限が解除される仕組みも導入されました。
また、早期に再就職した場合に支給される再就職手当は引き続き残日数の60〜70%が一括で支給される一方、就業促進定着手当の上限は20%に引き下げられています。
この記事は、基本手当の受給要件や計算方法、再就職手当・就業促進定着手当の仕組み、退職前後の公的保障の全体像を整理した内容です。
基本手当(失業給付)の受給要件

基本手当を受給するためには、離職前に雇用保険に一定期間加入していることと、ハローワークで求職の申し込みを行い「失業の状態」にあることが必要です。
離職理由によって求められる加入期間が異なる点も押さえておきましょう。
自己都合退職・定年退職の場合
離職日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12か月以上あることが条件になります。
被保険者期間の1か月は、賃金支払基礎日数が11日以上ある月、または労働時間が80時間以上ある月が対象です。
会社都合退職(特定受給資格者)・特定理由離職者の場合
倒産や解雇などの会社都合で退職した方(特定受給資格者)や、有期雇用契約の更新がされなかった方などの特定理由離職者は、離職日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あれば受給できます。
自己都合退職に比べて要件が緩和されており、後述する所定給付日数も手厚くなっています。
出典:厚生労働省「Q&A〜労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)」
2025年4月改正による給付制限の見直し

2025年4月1日施行の雇用保険法改正で、自己都合退職者にとって最も影響の大きい変更が給付制限期間の短縮です。
従来は退職してから基本手当を受け取るまでに約2か月半かかっていたものが、約1か月半に短縮されました。
給付制限期間の短縮(2か月→1か月)
自己都合退職の場合、7日間の待期期間に加えて給付制限期間が設けられています。
改正前は原則2か月でしたが、2025年4月1日以降に退職した場合は原則1か月に短縮されました。
ただし、退職日からさかのぼって5年間のうちに2回以上、正当な理由なく自己都合退職して受給資格決定を受けた場合は、給付制限が3か月となる点に注意が必要です。
教育訓練受講による給付制限の解除
2025年4月以降に受講を開始した教育訓練給付金の対象講座などを自主的に受けている場合、自己都合退職であっても給付制限が解除され、待期期間の7日間を終えた後から基本手当を受給できるようになりました。
なお、ハローワークの受講指示による公共職業訓練等は、従来から給付制限の解除対象です。
スキルアップと生活保障を両立しやすくなる改正として注目されています。
出典:厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」
所定給付日数の仕組み

基本手当が支給される日数の上限を「所定給付日数」といい、離職理由・被保険者期間・離職時の年齢によって90日から最大330日の間で決定されます。
離職理由によって日数に差が出るため、退職前に確認しておくことが欠かせません。
自己都合退職(一般の離職者)の所定給付日数
自己都合退職の場合、離職時の年齢は関係なく、被保険者期間のみで給付日数が決まります。
・被保険者期間1年以上10年未満:90日
・被保険者期間10年以上20年未満:120日
・被保険者期間20年以上:150日
最長でも150日(約5か月)であり、会社都合退職と比べると短く設定されています。
会社都合退職(特定受給資格者)の所定給付日数
特定受給資格者の場合は、被保険者期間に加えて離職時の年齢によっても日数が変わり、自己都合退職よりも手厚い給付日数が設定されています。
たとえば、45歳以上60歳未満で被保険者期間20年以上の場合は最大330日(約11か月)まで受給できます。
30歳未満で1年以上5年未満でも90日、35歳以上45歳未満で10年以上20年未満は240日、といったように年齢と加入期間の組み合わせで細かく区分される仕組みです。
基本手当日額の計算方法

基本手当は1日単位で計算され、その金額は離職前6か月間の賃金をもとに算出されます。
賃金日額と給付率
まず、離職前6か月間に支払われた賃金の合計を180で割って「賃金日額」を算出します。
この賃金日額に給付率(45〜80%)を掛けたものが基本手当日額となります。
給付率は賃金日額が低いほど高く設定されており、離職前の賃金のおよそ50〜80%が支給される仕組みです。
基本手当日額には年齢区分ごとの上限額が定められており、令和7年8月1日以降は次のとおりとなっています。
・29歳以下:7,255円
・30歳以上44歳以下:8,055円
・45歳以上59歳以下:8,870円
・60歳以上64歳以下:7,623円
出典:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります〜令和7年8月1日から〜」
受給総額のシミュレーション
たとえば、40歳・月収30万円・勤続12年・自己都合退職の場合を試算してみましょう。
賃金日額は300,000円×6÷180=10,000円で、給付率は約62%となり基本手当日額は約6,200円です。
所定給付日数は120日のため、受給総額は約74万円になります。
ただし、4週間ごとの失業認定を受ける必要があり、受給期間は離職日の翌日から1年間が期限です。
なお、基本手当は全額非課税のため、所得税や住民税はかかりません。
確定申告の必要もない点はメリットの一つといえるでしょう。
再就職手当の仕組みと計算方法

再就職手当は、基本手当の受給資格がある方が所定給付日数を一定以上残した状態で早期に再就職した場合に、一時金として支給される制度です。
早く再就職するほど支給額が多くなる仕組みで、就職へのインセンティブとして機能しています。
再就職手当の支給要件
再就職手当を受給するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
・7日間の待期期間を満了した後に就職していること
・就職日前日までの支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること
・1年を超えて勤務することが確実であること
・再就職先で雇用保険の被保険者になること
・離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと
・受給資格決定前から採用が内定していないこと
・過去3年以内に再就職手当または常用就職支度手当を受けていないこと
・給付制限中の最初の1か月間はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職であること
再就職手当の計算式と具体例
計算式は「基本手当日額 × 支給残日数 × 支給率」です。
支給率は残日数によって異なります。
・支給残日数が所定給付日数の3分の2以上:支給率70%
・支給残日数が所定給付日数の3分の1以上:支給率60%
なお、再就職手当の計算に用いる基本手当日額には上限があり、令和7年8月1日以降は59歳以下で6,570円、60歳以上64歳以下で5,310円です。
たとえば、基本手当日額5,000円・所定給付日数120日の方が、30日分の基本手当を受給した後に再就職した場合、支給残日数は90日(120日の3分の2以上)となるため、支給率70%が適用されます。
再就職手当は5,000円×90日×70%=315,000円が一括で支給されます。
再就職手当も非課税であり、確定申告は不要です。
就業促進定着手当と2025年4月の改正

再就職手当を受給した方が再就職先で6か月以上勤務し、かつ離職前より賃金が低下している場合に支給されるのが就業促進定着手当です。
再就職後の収入減少を一部補填する役割を担っています。
2025年4月改正の変更点
2025年4月の改正では、就業促進手当に関して2つの変更がありました。
・就業手当の廃止:短期就労者向けの就業手当は2025年3月末で廃止
・就業促進定着手当の上限引き下げ:従来の支給残日数の30〜40%から、一律20%に引き下げ
就業促進定着手当の計算式は「(離職前の賃金日額 − 再就職後の賃金日額)× 再就職後6か月間の就業日数」ですが、この金額が上限額(基本手当日額×支給残日数×20%)を超える場合は上限額が適用されます。
上限引き下げにより、実際の受給額は改正前より減少するケースが多い点に留意が必要です。
退職前後の公的保障の全体像

失業給付は退職後の収入を支える柱ですが、それだけで生活のすべてをカバーできるわけではありません。
退職前後に利用できる公的保障を把握しておくことで、民間保険や貯蓄の過不足を正確に判断できるようになります。
退職前に確認すべき公的保障
・傷病手当金:病気やケガで退職する場合、退職後も最長1年6か月(通算)受給可能
・高額療養費制度:医療費の自己負担が月額約8〜9万円(年収約370万〜770万円区分)に抑えられる
・国民健康保険料の軽減:特定受給資格者・特定理由離職者は、離職翌年度末まで国民健康保険料の軽減措置を受けられる
退職後に把握すべきポイント
退職後は健康保険と年金の切り替えが必要になります。
任意継続被保険者制度(退職前の健康保険に最長2年間加入を続けられる仕組み)と国民健康保険を保険料で比較し、有利な方を選択することが家計への影響を抑える判断材料となります。
また、60歳以上65歳未満で特別支給の老齢厚生年金を受給している方は、ハローワークで求職の申し込みをすると基本手当の受給期間中は年金が全額支給停止となる仕組みです。
基本手当の日額と年金の日額(年金額÷360)を比較し、どちらが有利かを事前に確認しておくことが欠かせません。
基本手当の受給が終了した後は年金の支給が再開されますが、事後清算の手続きに時間がかかる場合もあるため、家計の資金繰りには注意しておきましょう。
こうした公的保障の全体像を把握したうえで、不足する金額を民間の所得補償保険や貯蓄で準備するのが合理的な順序といえるでしょう。
失業給付+高額療養費+傷病手当金(該当する場合)の合計で月々の支出をどの程度カバーできるかを試算しておくと、民間保険の過剰加入を防ぎ、必要な備えだけに集中する判断が可能になります。
まとめ
2025年4月の雇用保険法改正により、自己都合退職の給付制限期間が2か月から1か月に短縮され、教育訓練受講による給付制限の解除も導入されました。
再就職手当は残日数の60〜70%が一括で支給される一方、就業促進定着手当の上限は20%に引き下げられ、就業手当は廃止されています。
基本手当の所定給付日数は、自己都合退職で最大150日、会社都合退職(特定受給資格者)で最大330日と離職理由によって差があるため、退職前に離職票の離職理由区分を確認しておくことが重要です。
また、60歳以上の方は基本手当と老齢厚生年金の併給調整にも注意が必要となります。
失業給付を含めた公的保障の全体像を把握し、不足分だけを民間保険や貯蓄で備えるという順序で家計を見直すことが、退職前後の不安を軽減する第一歩となるでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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