税金(一般的な内容)
地震保険料控除とは?控除額の計算方法・旧長期損害保険との違い・申請手順をわかりやすく解説

地震保険料控除とは、地震保険の保険料を支払った場合に、一定額を所得から差し引ける所得控除の一つです。国税庁によると、所得税では最大5万円、住民税では最大2万5,000円が控除の対象となっています。2024年度の地震保険付帯率は全国平均で70.4%と初めて70%を超え、多くの世帯が地震保険に加入していますが、控除の仕組みを正しく理解していないと、年末調整や確定申告で適用漏れにつながりかねないでしょう。この記事では、地震保険料控除の計算方法から旧長期損害保険料との関係、申請手順まで整理していきます。
地震保険料控除の仕組みと対象となる契約

地震保険料控除は、平成19年分から損害保険料控除に代わって創設された制度です。居住用建物や家財を対象とする地震保険の保険料が控除の対象となっています。
地震保険は火災保険に付帯して契約する仕組みのため、火災保険料と地震保険料を合算して支払うケースがほとんどでしょう。ただし、控除の対象となるのは地震保険に該当する部分の保険料のみであり、火災保険料は控除の対象外となっている点に注意が必要です。
控除対象となる契約の要件
国税庁No.1146によると、地震保険料控除の対象となるのは以下の要件を満たす契約となっています。
・契約者本人、または契約者と生計を一にする配偶者その他の親族が所有する居住用建物・家財を対象とする契約
・地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする損害を補償する契約
・損害保険会社や共済団体と締結した契約
別荘や空き家は「常時居住の用に供する」という要件を満たさないため、控除の対象外となっています。また、店舗併用住宅の場合は、居住用部分に相当する保険料のみが対象です。ただし、住宅部分が建物全体の90%以上を占める場合は、保険料の全額を控除対象にできる仕組みとなっています。
出典:国税庁「No.1146 地震保険料控除の対象となる保険や共済の契約」
所得税における地震保険料控除額の計算方法

所得税の地震保険料控除額は、年間の支払保険料が5万円以下なら全額、5万円を超える場合は一律5万円が上限です。生命保険料控除と比べて計算がシンプルな点が特徴といえるでしょう。
国税庁No.1145によると、地震保険料のみの場合の計算方法は以下の通りとなっています。
・年間の支払保険料が5万円以下の場合:支払金額の全額が控除額
・年間の支払保険料が5万円超の場合:一律5万円が控除額
たとえば、年間の地震保険料が3万円であれば、3万円がそのまま控除額になります。一方、年間保険料が8万円の場合は、8万円ではなく上限の5万円が控除額となる仕組みです。
支払った金額がそのまま控除されるか、5万円で打ち止めになるかのいずれかであるため、計算に迷うことはほとんどないでしょう。
住民税における地震保険料控除額の計算方法

住民税では、所得税とは異なる計算方法が適用され、控除額の上限は2万5,000円です。所得税と比べて控除額が小さくなる点に注意が必要でしょう。
住民税の地震保険料控除額は以下のように計算します。
・年間の支払保険料が5万円以下の場合:支払金額の2分の1が控除額
・年間の支払保険料が5万円超の場合:一律2万5,000円が控除額
たとえば、年間の地震保険料が3万円の場合、所得税では3万円が控除されますが、住民税では1万5,000円(3万円×1/2)が控除額です。所得税と住民税で控除額が異なる点は見落としやすいポイントでしょう。
旧長期損害保険料の経過措置とは

平成18年12月31日以前に契約した一定の長期損害保険については、経過措置として地震保険料控除の対象にできる場合があります。該当する契約が残っている方は、控除の申請漏れがないか確認しておくとよいでしょう。
平成19年分から損害保険料控除は廃止されましたが、以下の3つの要件をすべて満たす長期損害保険契約については、引き続き控除が認められています。
・平成18年12月31日までに締結した契約であること(保険期間の始期が平成19年1月1日以後のものは除く)
・満期返戻金等のあるもので、保険期間が10年以上の契約であること
・平成19年1月1日以後に契約内容の変更をしていないこと
旧長期損害保険料の控除額(所得税)
旧長期損害保険料の控除額は、地震保険料とは異なり、支払金額に応じた段階的な計算式が用いられる仕組みです。
・年間の支払保険料が1万円以下の場合:支払金額の全額
・年間の支払保険料が1万円超2万円以下の場合:支払金額×1/2+5,000円
・年間の支払保険料が2万円超の場合:一律1万5,000円
地震保険料と旧長期損害保険料の両方を支払っている場合は、それぞれの方法で計算した控除額を合算して申告できます。ただし、合計額の上限は所得税5万円、住民税2万5,000円です。
なお、一つの契約で地震保険料と旧長期損害保険料の両方に該当する場合は、いずれか一方を選択して控除を受ける決まりとなっており、両方を同時に適用することはできません。
地震保険料控除でいくら税金が安くなるか:計算例

控除額がわかっても、実際にいくら税金が軽減されるのかイメージしにくい方も多いでしょう。ここでは具体的な計算例を紹介します。
計算例:年間地震保険料3万円、課税所得500万円の場合
まず、控除額を確認しましょう。年間保険料が3万円で5万円以下のため、所得税の控除額は3万円(全額)です。住民税の控除額は3万円×1/2=1万5,000円となっています。
次に、税額の軽減額を計算してみましょう。課税所得500万円の場合、所得税率は20%(国税庁の速算表による)のため、所得税の軽減額は3万円×20%=6,000円です。住民税率は一律10%のため、住民税の軽減額は1万5,000円×10%=1,500円と算出されます。
合計すると、年間7,500円の節税効果が得られる計算です。生命保険料控除ほどの金額にはなりませんが、年末調整の書類に記入するだけで受けられるため、忘れずに申請しておきたい控除の一つといえるでしょう。
計算例:年間地震保険料6万円、課税所得700万円の場合
年間保険料が6万円で5万円を超えているため、所得税の控除額は上限の5万円です。住民税の控除額は上限の2万5,000円となっています。
課税所得700万円の場合、所得税率は23%のため、所得税の軽減額は5万円×23%=1万1,500円と算出されます。住民税の軽減額は2万5,000円×10%=2,500円となり、合計で年間1万4,000円の節税効果です。
地震保険料を一括払いした場合の取り扱い

複数年分の地震保険料を一括で支払った場合でも、控除は毎年受けられます。一括払いだからといって初年度にまとめて控除されるわけではない点に注意しましょう。
地震保険は最長5年契約が可能で、保険料を一括で支払うケースもあるでしょう。この場合、一括払保険料を保険期間(年数)で割った1年分の金額が、毎年の控除対象保険料です。
たとえば、5年契約で保険料10万円を一括払いした場合、10万円÷5年=2万円が毎年の控除対象保険料となっています。保険会社からは毎年、控除対象額が記載された「地震保険料控除証明書」が届くため、その金額を年末調整や確定申告で忘れずに申告しましょう。
地震保険料控除の申請方法:年末調整と確定申告

地震保険料控除は、会社員であれば年末調整で、自営業者やフリーランスであれば確定申告で申請が可能です。手続き自体はシンプルなので、流れを押さえておきましょう。
年末調整での申請手順
会社員の場合、以下の手順で申請を行います。
・毎年10月以降に保険会社から届く「地震保険料控除証明書」を準備する
・勤務先から配布される「給与所得者の保険料控除申告書」の地震保険料控除欄に、保険の種類・保険期間・支払保険料などを記入する
・控除証明書を添付して勤務先に提出する
保険料が給与から天引きされている場合は、控除証明書の添付が不要となるケースもあるでしょう。詳細は勤務先の担当部署に確認することをおすすめします。
確定申告での申請手順
自営業者やフリーランスの方、年末調整で申請が間に合わなかった方は、確定申告で控除を受けられます。
・確定申告書の「地震保険料控除」欄に控除額を記入する
・地震保険料控除証明書を確定申告書に添付するか、申告の際に提示する
・e-Taxで電子申告する場合は、証明書の電磁的記録印刷書面(二次元コード付き)でも対応可能
申告期間は毎年2月16日から3月15日までです。なお、控除の適用を受けるだけの還付申告であれば、翌年1月1日から5年間は申告が可能となっています。
地震保険料控除と生命保険料控除の違い

どちらも保険料に関する所得控除ですが、計算方法や控除の上限額に違いがあります。両方とも年末調整で申請できる点は共通しているものの、仕組みはかなり異なるでしょう。
生命保険料控除は、新制度で一般・介護医療・個人年金の3区分に分かれており、それぞれ最大4万円(合計最大12万円)の控除を受けられます。一方、地震保険料控除は1区分のみで、上限は所得税5万円・住民税2万5,000円です。
また、生命保険料控除では保険料に応じた段階的な計算式が適用されるのに対し、地震保険料控除は5万円以下なら全額、5万円超なら上限5万円というシンプルな仕組みとなっています。計算の手間という点では、地震保険料控除のほうがわかりやすいといえるでしょう。
地震保険料控除で押さえておきたいポイント

地震保険料控除を漏れなく活用するために、いくつかの実務上の注意点を確認しておきましょう。
控除証明書を紛失した場合
控除証明書を紛失した場合は、契約先の保険会社に連絡すれば再発行が可能です。年末調整の提出期限に間に合わなくても、確定申告で控除を受けることができるため、慌てずに対応しましょう。
複数の地震保険に加入している場合
建物と家財でそれぞれ地震保険に加入しているケースや、住宅を複数所有しているケースでは、支払った保険料の合計額をもとに控除額を計算する仕組みです。ただし、控除額の上限は合計で所得税5万円・住民税2万5,000円であり、契約ごとに別々の上限が設けられているわけではない点に注意しましょう。
地震保険の付帯率は上昇傾向
損害保険料率算出機構の統計によると、2024年度の地震保険付帯率は全国平均で70.4%と初めて70%を超え、22年連続の増加です。世帯加入率も35.4%に達しており、地震への備えとして加入する世帯は増加傾向となっています。加入している場合は、毎年の控除申請を忘れずに行いましょう。
出典:損害保険料率算出機構「グラフで見る!地震保険統計速報」
まとめ
地震保険料控除は、地震保険料を支払っている方が年末調整や確定申告で所得控除を受けられる制度です。
・所得税の控除上限は5万円、住民税の控除上限は2万5,000円
・旧長期損害保険料にも経過措置があり、合算で上限5万円まで控除可能
・一括払いの場合でも、1年分に換算した額で毎年控除を受けられる
・年末調整では「給与所得者の保険料控除申告書」に記入し、控除証明書を添付するだけで手続きが完了する
控除額自体は生命保険料控除と比べると小さめですが、毎年確実に節税できる制度であり、書類の記入もシンプルでしょう。地震保険に加入している方は、保険会社から届く控除証明書を大切に保管し、年末調整や確定申告で忘れずに申請することをおすすめします。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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