火災保険
住宅ローンに火災保険はなぜ必要?公的支援制度の限界と保険料を抑えるポイント

住宅ローンを組む際、銀行から火災保険の加入を求められて「本当に必要なの?」と感じる方は少なくありません。火災保険が必要な理由を理解するには、災害時に公的支援制度でどこまでカバーされるかを先に確認することが重要です。自然災害で住宅が損壊した場合に利用できる被災者生活再建支援制度は最大300万円ですが、住宅の再建費用には到底足りません。公的支援では補えない住宅の修繕・再建費用をカバーし、住宅ローンの返済を継続するために火災保険が不可欠です。この記事では、公的支援制度の限界を踏まえたうえで、火災保険の契約時に注意すべきポイントと保険料を抑える方法を解説します。
公的支援制度の限界|被災しても住宅再建費用はカバーされない

自然災害で住宅が損壊しても、公的支援制度で住宅の再建費用を賄うことはできないという点は、住宅購入者が最初に認識すべき事実です。
被災者生活再建支援制度は最大300万円
自然災害で住宅が全壊・大規模半壊した場合、被災者生活再建支援制度により最大300万円(基礎支援金+加算支援金)が支給されます。しかし、住宅の再建費用が数千万円に及ぶことを考えると、この金額では圧倒的に不足します。支援金はあくまで「生活の再建を支援する」ものであり、住宅の再建費用を補償する制度ではない点に注意が必要です。
出典:内閣府「被災者生活再建支援制度の概要」
住宅ローンが残ったまま住めなくなるリスク
災害で住宅が損壊しても、住宅ローンの返済義務は消えません。住宅金融支援機構や金融機関には返済猶予の制度がありますが、これは返済を一時的に猶予するもので、債務が免除されるわけではありません。「住めない家のローンを払い続けながら、新たな住居費も負担する」という二重負担のリスクを避けるためにも、火災保険で修繕・再建の資金を確保しておくことが欠かせないでしょう。
銀行が火災保険を必須とする理由

銀行が火災保険の加入を融資条件とするのは、融資した資金の回収リスクを軽減するためです。住宅ローンは購入した住宅を担保にして融資を受ける仕組みであり、災害で担保価値が下がれば返済が滞るリスクが高まります。火災保険で修復費用を保険金で賄えれば、金融機関にとっても借主にとっても安全です。銀行は保険会社の指定まではしませんが、未加入の場合は融資が実行されない可能性があるため、火災保険は事実上の必須条件といえます。
契約時に注意すべき3つのポイント

火災保険の契約では、以下の3点を確認しましょう。
保険金額は「再調達価額」で設定する
保険金額は、同じ建物を新たに建て直すために必要な金額(再調達価額)で設定するのが基本です。再調達価額より低く設定すると、万が一の際に修繕費が不足する可能性があります。ネット保険の見積り機能であれば、建物の面積・所在地・構造などを入力すると再調達価額が自動計算されるため、提示された範囲内で保険金額を設定しましょう。
水災補償の要否はハザードマップで判断する
2024年10月の改定で、水災リスクが市区町村単位で5段階(1等地〜5等地)に細分化されました。水災リスクが高い地域(5等地)は保険料が高くなる一方、リスクが低い地域(1等地)は安くなります。自治体のハザードマップと損害保険料率算出機構の「水災等地検索」で自宅の水災リスクを確認し、補償の要否を判断しましょう。河川沿いや低地に住んでいる場合は、水災補償を外すべきではありません。
出典:損害保険料率算出機構「火災保険参考純率改定のご案内」
地震保険はセットで加入する
地震・噴火・津波による損害は火災保険では補償されません。地震保険は火災保険に付帯する形でのみ契約でき、契約期間は火災保険と同様に最長5年となっています。地震リスクの高い日本では、火災保険と地震保険のセット加入が実務上の基本です。
保険料を抑える4つの方法

火災保険料は値上がり傾向にありますが、以下の方法で負担を抑えることが可能です。
・契約期間を最長の5年にする:1年契約を毎年更新するより、5年契約にした方が年あたりの保険料が割安になる。契約期間中は保険料が変わらないため、値上がり前に長期契約を結ぶメリットがある
・免責金額(自己負担額)を設定する:免責金額を設定すると保険料が下がる。ただし、いざというときの自己負担は増えるため、預貯金とのバランスを考えて設定する
・不要な補償を外す:マンション高層階で水災リスクが低い場合は水災補償を外すことで保険料を抑えられる。ただし、内水氾濫(下水道の溢れ)や土砂災害も水災補償の範囲であるため、洪水ハザードマップだけで判断しないよう注意が必要
・複数の保険会社で見積もりを比較する:同じ補償内容でも保険会社によって保険料が異なる。更新の3か月前から見積もりを取り始めるのが目安
2024年10月の保険料改定と2025年問題

2024年10月には火災保険の参考純率が全国平均で13.0%引き上げられ、過去最大の値上げ幅となりました(参考純率は各保険会社が保険料を設定する際の基準であり、実際の保険料と同率で値上がりするわけではありません)。また、2015年に最長10年契約を結んだ方は2025年に一斉更新を迎えるため(いわゆる「2025年問題」)、更新時に保険料が大幅に上がるケースもあるでしょう。更新が近い方は早めに見積もりを取り、補償内容の見直しを検討しましょう。
まとめ|公的支援では住宅再建費用は賄えない。火災保険で備える
住宅ローンと火災保険の関係を整理すると、以下のようになります。
・被災者生活再建支援制度は最大300万円。住宅の再建費用(数千万円)には到底足りない。公的支援では補えない部分をカバーするのが火災保険の役割
・住宅ローンの返済義務は災害で住宅が損壊しても消えない。二重負担のリスクを避けるために火災保険は不可欠
・保険金額は再調達価額で設定し、水災補償の要否はハザードマップで判断する
・地震保険はセットで加入。地震・津波による損害は火災保険では補償されない
・保険料を抑えるには、5年契約・免責金額の設定・複数社の見積もり比較が有効
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しました。執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



