資産運用
不動産管理会社の選び方とは?管理委託と自主管理の違い・手数料相場・サブリースの注意点・変更の判断基準をわかりやすく解説

不動産投資において、物件の管理をどのように行うかは収益に直結する判断です。国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」(2019年)によると、すべて自主管理しているオーナーは全体の約18.5%にとどまり、大多数が管理会社に業務を委託しています。
管理委託の手数料は家賃収入の3〜5%が一般的な相場とされていますが、日本賃貸住宅管理協会の2022年度調査では全国平均で「5%」が約7割を占めており、手数料率の安さだけで管理会社を選ぶと入居率の低下や対応品質の悪化につながるリスクがあります。2021年6月には賃貸住宅管理業法が全面施行され、200戸以上を管理する業者は国土交通大臣への登録が義務化されており、無登録営業には1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるため、管理会社が登録業者かどうかの確認は最低限必要な自己防衛策といえるでしょう。
この記事では、管理委託と自主管理の違いから、管理手数料の仕組み、サブリース契約の注意点、管理会社を変更すべき判断基準まで解説します。
管理委託と自主管理の違い

不動産投資の管理方法は、管理会社に業務を委託する「管理委託」と、オーナーが自ら管理業務を行う「自主管理」の2つに大別されます。それぞれの特徴を理解したうえで、保有物件の規模や投資スタイルに合った方法を選ぶことが重要です。
管理委託の仕組みと対象業務
管理委託とは、入居者募集・家賃回収・クレーム対応・退去時の精算・建物の日常点検・修繕手配などの管理業務を、専門の管理会社に委託する方法を指します。オーナーは毎月の家賃収入から管理手数料を支払い、管理業務の大部分を任せることができます。
管理会社に委託できる主な業務は以下のとおりです。
・入居者の募集・内見対応・賃貸借契約の締結
・毎月の家賃回収と滞納者への督促
・入居者からのクレーム対応・設備トラブルの一次対応
・退去時の立ち会いと原状回復の手配
・共用部の清掃・建物の日常点検
・契約更新手続き
ただし、修繕工事の費用や入居者募集時の広告費(AD)は管理手数料とは別に請求されるのが一般的であり、管理手数料だけで全費用が賄われるわけではない点に注意が必要です。
自主管理の仕組みと現実的な負担
自主管理とは、上記の管理業務をオーナー自身が行う方法であり、管理手数料が発生しないため手取り収入を最大化できるメリットがあります。
しかし、自主管理には相応の時間・労力・知識が求められます。深夜の設備トラブルへの対応、家賃滞納者への督促、退去時の原状回復費用の交渉など、精神的にも負荷の高い業務が含まれるため、副業として不動産投資を行っている方にとっては現実的な選択肢になりにくい場合があるでしょう。
自主管理が合理的に成り立つのは、物件が自宅から近く、保有戸数が少なく(目安として1〜3戸程度)、不動産や建物に関する基礎知識がある場合に限られるケースが多いといえます。保有戸数が増えるほど管理業務の負担は加速度的に増加するため、規模の拡大を見据えるのであれば管理委託への切り替えを検討するタイミングを事前に設定しておくことが合理的です。
「入居者募集だけ委託する」という中間的な選択肢
管理委託と自主管理の中間として、入居者募集から契約締結までの業務だけを不動産会社に委託し、入居後の管理は自分で行うという方法もあります。この場合、月々の管理手数料は発生せず、入居者募集時に仲介手数料や広告費を支払うだけで済みます。
家賃の入金確認やトラブル対応に対応できる時間と体制がある方にとっては、コストを抑えながら管理品質を維持できる選択肢となるでしょう。
管理手数料の相場と費用構造

管理手数料の水準は収支に直接影響するため、相場を正しく把握したうえで、手数料と業務内容のバランスで判断することが重要です。
管理委託の手数料相場は家賃の3〜5%
賃貸管理手数料の相場は家賃収入の3〜5%が一般的であり、委託する業務範囲によって料率が変動します。集金代行のみであれば3%程度、入居者対応・建物管理を含む全般委託であれば5%程度が目安となっています。
たとえば、家賃10万円の物件であれば月額3,000〜5,000円、家賃8万円×10戸の一棟アパートであれば月額24,000〜40,000円の管理手数料が発生する計算です。年間では28万8,000〜48万円の差が生じるため、手数料率の1〜2%の違いが長期的な収益に与える影響は小さくありません。
ただし、手数料率が低い管理会社では対応業務の範囲が限定されていたり、入居者募集の広告費や契約更新事務手数料が別途請求されたりするケースも少なくないため、月額手数料だけでなく「年間で実際にかかるトータルコスト」で比較することが重要です。
サブリース(一括借上げ)の手数料は10〜20%
サブリース契約は管理会社がオーナーから物件を一括で借り上げ、管理会社が入居者に転貸する仕組みであり、空室の有無にかかわらずオーナーに一定の賃料が支払われます。手数料にあたる保証料は家賃の10〜20%程度が一般的であり、通常の管理委託と比べて2〜4倍以上のコストがかかる計算です。
サブリース契約では借地借家法第32条に基づく賃料減額請求権がサブリース業者にも認められており、「家賃保証」と銘打たれていても契約期間中に保証賃料が引き下げられるリスクがあることは、最高裁判所平成15年10月21日判決でも確認されています。「30年一括借上げ」「家賃保証」といった広告文言だけで安心するのは危険であり、契約書における賃料改定条項と解約条件を必ず確認すべきです。
なお、2020年12月に施行された賃貸住宅管理業法では、サブリース業者に対して誇大広告の禁止、不当な勧誘行為の禁止、契約締結前の重要事項説明義務が課されています。
賃貸住宅管理業法による管理会社の規制

2021年6月に全面施行された賃貸住宅管理業法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)により、賃貸管理業界に法的な規制が設けられました。オーナーの立場からも、この法律の内容を理解しておくことで管理会社選びの判断基準が明確になります。
200戸以上の管理業者は登録が義務
管理戸数が200戸以上の賃貸住宅管理業者は、国土交通大臣への登録が義務づけられています。登録の有効期間は5年間で、更新が必要です。無登録で200戸以上の管理業務を営んだ場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。
管理会社が登録業者かどうかは、国土交通省の「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」で登録番号を検索して確認できるため、管理委託を検討する際にはまずこの確認を行うことが基本的な自己防衛策です。
管理業者に課される4つの義務
登録を受けた賃貸住宅管理業者には、以下の義務が課されています。
・業務管理者の配置:各営業所に1名以上、管理業務に関する実務経験2年以上の有資格者を配置する義務
・管理受託契約締結前の重要事項説明:報酬額・業務内容・実施方法・免責事項などを書面で事前に説明する義務。説明から契約締結まで1週間程度の猶予期間を設けることが推奨されている
・財産の分別管理:オーナーから預かる家賃や敷金を、管理業者自身の資産と分別して管理する義務
・定期報告:管理業務の実施状況やトラブルの発生・対応状況を、1年を超えない期間ごとにオーナーへ報告する義務
これらの義務が果たされていない管理会社は法令違反の可能性があるため、契約前の確認と契約後のモニタリングの両方が重要です。
出典:国土交通省「賃貸住宅管理業法 法律、政省令、解釈・運用の考え方、ガイドラインについて」
管理会社を選ぶ際にチェックすべき5つのポイント

管理手数料の安さだけで管理会社を選ぶと、入居率の低下や対応品質の悪化によって、結果的に手残り収入が減少するケースが実際に報告されています。ここでは、管理会社選びで確認すべき具体的なポイントを整理します。
管理戸数と入居率の実績
管理戸数の推移は管理会社の信頼性を示す指標のひとつです。管理戸数が安定的に増加している会社は、既存オーナーからの評価が高く、紹介やリピートで受託が増えている可能性があります。
一方、短期間で急激に管理戸数が増加している場合は、無理な営業を行っている可能性や、人員体制が追いつかず管理品質が低下するリスクがあるため、注意が必要でしょう。入居率についても、管理物件全体の入居率を具体的な数値で確認し、目安として95%以上を維持できているかをチェックすることが判断材料になります。
入居者募集力(客付け力)
空室期間の長さは収益に直結するため、管理会社の入居者募集力は手数料率以上に重視すべきポイントです。具体的には、以下の点を確認するとよいでしょう。
・主要な不動産ポータルサイト(SUUMO、HOME'S、athomeなど)への掲載対応
・仲介業者との連携ネットワークの広さ
・空室発生から新規入居までの平均日数
・募集条件(家賃設定、敷金・礼金)に対する提案力
管理手数料が3%でも空室期間が長ければ、5%の管理会社に委託して早期に入居者を確保したほうがトータルの収益は上回るケースがある点は認識しておく必要があります。
トラブル対応のスピードと体制
入居者からの設備故障の連絡やクレームに対して、どの程度の時間で一次対応が行われるかは、入居者の満足度と退去率に直結します。24時間対応のコールセンターを設置しているか、休日・夜間の緊急対応体制が整備されているかを事前に確認しておくことが望ましいでしょう。
対応が遅い管理会社では入居者の不満が蓄積し、契約更新時の退去率が上昇して長期的な空室リスクが高まるという悪循環に陥る可能性があります。
管理委託契約の内容と解約条件
管理委託契約を締結する際には、手数料率だけでなく以下の条項を必ず確認すべきです。
・契約期間と自動更新の有無:多くの管理委託契約は1〜2年の自動更新型であり、解約の申し入れ期限(通常は1〜3か月前)を過ぎると次の更新期間まで解約できない場合がある
・解約時の違約金の有無:中途解約に違約金が設定されている場合がある
・原状回復工事の発注先:管理会社の指定業者に限定されている場合、工事費用が割高になるケースがある
・入居者情報の引き継ぎ:管理会社変更時に入居者データや契約書類がスムーズに引き継がれるか
契約書の細部まで確認せずに締結すると、管理品質に不満が生じても容易に変更できない状況に陥るリスクがあります。
宅建業の免許番号で営業年数を推定する
宅地建物取引業の免許番号には、「東京都知事(3)第XXXXX号」のように更新回数を示す数字が含まれています。宅建業免許は5年ごとの更新であるため、(3)であれば10年以上、(5)であれば20年以上の営業実績があることがわかります。長期にわたって営業を継続している管理会社は、一定の経営基盤と業務の安定性をもっている可能性が高いといえるでしょう。
管理会社を変更すべき3つの判断基準

管理会社との契約は長期的な関係になりますが、管理品質に問題がある場合には変更を検討する必要があります。ただし、管理会社の変更にはオーナー側にも手間とコストが発生するため、感情的な判断ではなく客観的な基準に基づいて判断することが重要です。
入居率が継続的に低下している
管理物件の入居率が、エリアの平均と比較して明らかに低い状態が6か月以上続いている場合は、管理会社の客付け力に問題がある可能性を検討すべきでしょう。空室の原因が家賃設定にあるのか、募集活動の不足にあるのか、物件の設備・内装に問題があるのかを切り分けたうえで、改善提案がない管理会社であれば変更を視野に入れる合理的な理由となります。
定期報告や対応が不十分
賃貸住宅管理業法では、登録管理業者に対して1年を超えない期間ごとの定期報告が義務づけられています。この報告がなされていない場合は法令違反の可能性があり、管理会社としての適格性そのものが疑問視されるでしょう。
また、オーナーからの問い合わせに対する返答が遅い、修繕の提案がない、入居者トラブルの報告が事後になるといった状態が常態化している場合も、管理品質に問題があると判断できるでしょう。
不透明な費用請求が続いている
原状回復工事費用が相場と比較して明らかに高い、修繕見積もりに詳細な内訳がない、広告費の請求根拠が不明確といった状況が繰り返される場合は、管理会社が中間マージンを過剰に取得している可能性を疑うべきです。
管理会社を変更する際には、新しい管理会社に入居者情報と契約書類の引き継ぎスケジュールを事前に確認し、入居者に対しても管理会社変更と新たな家賃振込先を書面で通知する手続きが必要となります。現在の管理委託契約の解約条件(解約通知期限・違約金の有無)を確認したうえで、計画的に進めることが重要です。
管理品質が物件の資産価値と出口戦略に与える影響

管理会社の品質は日々のキャッシュフローだけでなく、物件の資産価値と将来の売却価格にも影響を及ぼします。
適切な管理が入居率と家賃水準を維持する
建物の日常的なメンテナンスが行き届いている物件は、入居者の満足度が高く退去率が低い傾向にあります。退去率が低ければ空室期間の発生頻度が減り、入居者の入れ替えに伴う原状回復費用や募集広告費も抑えられるため、長期的な収益の安定につながるでしょう。
反対に、共用部の清掃や設備の点検が不十分な物件では入居者の不満が蓄積し、退去率の上昇→空室期間の長期化→家賃引き下げという悪循環に陥るリスクが高まる点は見過ごせません。
修繕履歴の管理が売却価格に影響する
物件を売却する際、買い手は修繕履歴を重視する傾向があります。いつ・どの部位に・いくらの修繕を行ったかが記録として整理されている物件は、建物の維持管理状態を客観的に示せるため、買い手の安心感につながり売却価格の維持に寄与するでしょう。
管理会社が修繕提案と履歴管理を適切に行っているかどうかは、日々の管理業務だけでなく出口戦略の成否にも関わる重要なチェックポイントです。
管理委託を検討する前に確認すべきこと

管理会社に業務を委託する際、手数料や業務範囲の比較だけに目を向けがちですが、その前に確認しておくべき点が2つ挙げられるでしょう。
管理手数料は不動産所得の必要経費になる
管理会社に支払う管理手数料は、国税庁(No.1370)が定める不動産所得の計算において必要経費に算入できます。つまり、管理委託によって経費が増加する分、所得税・住民税の負担はその分軽減される仕組みとなっています。
たとえば管理手数料が年間48万円(月4万円)の場合、所得税率20%の方であれば48万円×20%=約9.6万円の税負担が軽減されるため、実質的な管理委託コストは手数料の額面よりも低くなる計算です。自主管理との比較においては、この税効果も加味したうえで判断するのが合理的でしょう。
投資全体の優先順位を確認する
不動産投資の管理にかかるコストを検討する以前に、家計全体の優先順位を確認しておくことが欠かせません。生活防衛資金(目安として生活費6か月分)が確保されているか、高額療養費制度(自己負担上限は年収約370万〜770万円の方で月額80,100円+α)や傷病手当金(給与の約3分の2、最長18か月)といった公的保障の内容を把握しているか、NISAのつみたて投資枠やiDeCoといった税制優遇の枠を活用できているか、といった点を整理したうえで不動産投資の管理コストを判断することが、家計全体のリスク管理として合理的です。
管理手数料の節約にこだわるあまり自主管理を選択し、本業に支障が出たり精神的な負担が増大したりするのであれば、管理委託によって「時間と安心を買う」という判断のほうが結果的に合理的な場合もあるでしょう。
まとめ
不動産管理会社の選び方は、不動産投資の収益とリスクの両方に影響を及ぼす重要な判断です。管理委託の手数料は家賃の3〜5%が相場ですが、手数料率の安さだけでなく、入居率の実績、客付け力、トラブル対応体制、契約条件の透明性を総合的に評価することが大切でしょう。
2021年6月に全面施行された賃貸住宅管理業法により、200戸以上を管理する業者には国土交通大臣への登録義務が課されているため、管理委託を検討する際には登録の有無を最初に確認しましょう。サブリース契約については、借地借家法第32条に基づく賃料減額請求権がサブリース業者にも認められている点を十分に理解したうえで判断することが不可欠です。
管理会社の品質は日々のキャッシュフローだけでなく、物件の資産価値や将来の売却価格にも影響を及ぼすため、「安さ」ではなく「費用対効果」の視点で選ぶ意識をもつことが、長期的な投資成果の向上につながるでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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