資産運用
不動産投資とは?仕組み・種類・メリット・デメリットをわかりやすく解説

不動産投資とは、マンションやアパートなどの不動産を購入し、第三者に貸し出すことで家賃収入(インカムゲイン)を得たり、購入時より高い価格で売却して売却益(キャピタルゲイン)を得たりする投資方法です。国土交通省が公表した令和7年地価公示によると、全国の全用途平均は前年比2.7%上昇し、バブル崩壊後の1992年以降で最高の伸び率を記録しました。一方で、不動産投資には空室リスクや金利上昇リスクなど、株式投資や金投資とは異なる特有のリスクも存在します。不動産投資を検討する前には、生活防衛資金の確保と公的保障の把握が前提条件であり、「家賃保証」や「高利回り保証」といった甘い勧誘には、国土交通省も注意喚起を行っている点を押さえておく必要があるでしょう。この記事では、不動産投資の基本的な仕組みから種類ごとの特徴、メリット・デメリット、そして投資判断で見落としやすいポイントまでを解説します。
不動産投資で利益を得る2つの仕組み

不動産投資で得られる利益は、大きく分けて「インカムゲイン(家賃収入)」と「キャピタルゲイン(売却益)」の2種類に分類されます。それぞれの仕組みと特徴を確認しましょう。
インカムゲイン:家賃収入で毎月の安定収益を得る
インカムゲインとは、所有する不動産を入居者に貸し出すことで、毎月の家賃収入を得る方法です。株式投資における「配当金」、債券投資における「利息」に相当するものといえるでしょう。
家賃収入は入居者がいる限り毎月継続的に発生するため、安定した収益源となり得ます。ただし、入居者がいなければ家賃収入はゼロになるため、空室リスクが不動産投資における最大のリスク要因の一つです。また、家賃収入からは管理費、修繕費、固定資産税、ローン返済額などの各種経費を差し引く必要があり、手元に残る金額(キャッシュフロー)は家賃の全額ではありません。
キャピタルゲイン:売却益で利益を得る
キャピタルゲインとは、購入した不動産を購入時より高い価格で売却することで得られる利益です。国土交通省の地価公示によると2025年は全国的に地価が上昇傾向にありますが、将来の地価が上がるか下がるかを正確に予測することは困難であり、売却時に購入価格を下回れば損失(キャピタルロス)が発生します。
不動産投資の基本戦略としては、インカムゲインを中心に長期的な家賃収入を積み重ね、適切なタイミングで売却してキャピタルゲインも狙うという考え方が一般的でしょう。売却益だけを狙う短期売買は、不動産取得にかかる諸費用(登記費用、不動産取得税、仲介手数料など)の負担が重く、利益を出しにくい構造になっています。
不動産投資の主な種類と特徴


不動産投資にはさまざまな形態があり、必要な資金規模やリスクの大きさ、管理の手間が異なります。ここでは代表的な5つの投資方法を整理しましょう。
区分マンション投資
区分マンション投資とは、マンションの一室(区分所有)を購入して貸し出す方法です。一棟まるごと購入するよりも少ない資金で始められるため、不動産投資の入口として選ばれることが多い形態といえます。
一方で、一室のみの所有では空室になった場合に家賃収入がゼロになるリスクがあるほか、管理費や修繕積立金が毎月発生します。特に新築ワンルームマンションは、購入直後に物件価格が大幅に下落するケースがあるため、「新築プレミアム」と呼ばれる価格の上乗せ分に注意が必要です。
一棟アパート・マンション投資
一棟アパートや一棟マンションをまるごと購入し、複数の部屋を貸し出す方法です。区分マンション投資と比べて、複数の入居者から家賃収入を得られるため、一部の部屋が空室になっても収入がゼロにはなりにくい利点があるでしょう。
ただし、初期投資額は数千万円〜数億円規模になることが一般的であり、建物全体の修繕(外壁塗装、屋上防水、給排水管の交換など)にかかる費用もオーナー負担となります。木造アパートは法定耐用年数が22年と短く、融資期間が制限される場合がある点も考慮に入れる必要があるでしょう。
戸建て投資
中古の一戸建て住宅を購入し、ファミリー層に貸し出す方法です。ファミリー層は単身者と比べて入居期間が長い傾向があり、長期にわたる安定した家賃収入が期待できます。
中古戸建ては数百万円〜1,000万円台で購入できる物件もあり、比較的少ない資金で始められる場合があります。しかし、一戸のみの所有であるため空室時は収入がゼロになること、築古物件の場合は想定外の修繕費が発生しやすいことが注意点です。
REIT(不動産投資信託)
REIT(リート)とは、投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設、マンションなどの不動産に投資し、賃貸収入や売却益を投資家に分配する金融商品です。証券取引所に上場しているJ-REIT(日本版REIT)であれば、数万円〜十数万円程度から購入でき、株式と同じように市場で売買が可能です。
現物不動産と異なり、物件管理の手間がかからない点がメリットといえます。一方で、REITの価格は株式市場の影響を受けやすく、不動産市場の実態以上に価格が変動する場合もあるでしょう。また、現物不動産のような融資(レバレッジ)を活用した投資はできません。
不動産クラウドファンディング
インターネットを通じて複数の投資家から資金を集め、不動産に投資する仕組みです。1万円程度から参加できるサービスもあり、少額で不動産投資を体験できる手段として近年注目を集めています。
ただし、投資期間中は原則として途中解約ができないケースが多いほか、運営会社の信用リスクも考慮する必要があるでしょう。金融庁への登録状況や運営会社の財務状況の確認が不可欠です。
不動産投資のメリット

不動産投資には株式投資や金投資とは異なる独自のメリットがあり、資産形成の一手段として検討されることがあります。ここでは主要なメリットを整理しましょう。
毎月の安定したキャッシュフローが期待できる
入居者がいる限り、毎月一定の家賃収入が見込めます。株式の配当金は企業業績によって増減し、金投資は保有中に利息や配当を生みませんが、不動産は賃貸借契約に基づいた家賃が定期的に入金される仕組みです。
公的年金だけでは老後の生活費に不安がある場合、家賃収入が「第二の年金」として機能する可能性があるでしょう。ただし、この安定性は空室が発生しないことが前提であり、空室が長期化すれば収支が逆転するリスクがあります。
融資(レバレッジ)を活用した投資ができる
不動産投資の特徴的なポイントの一つは、金融機関からの融資を活用して、自己資金以上の規模の物件を購入できることです。たとえば自己資金500万円でも、融資を受けることで3,000万円の物件に投資し、3,000万円分の家賃収入を得る構造が成り立ちます。
これは株式投資(信用取引を除く)や金投資では基本的にできない不動産投資ならではの特徴ですが、レバレッジは利益だけでなく損失も拡大させるため、返済計画に余裕がなければローン返済が困難になるリスクも伴う点に十分な注意が必要です。
インフレに対する防衛手段になり得る
物価が上昇する局面では、不動産価格や家賃も上昇する傾向があります。実際に国土交通省の令和7年地価公示では、全国の住宅地が前年比2.1%上昇しており、消費者物価指数の上昇と歩調を合わせる形で地価が上昇している状況です。
ただし、すべての不動産がインフレに連動するわけではなく、人口減少が進む地方では地価が下落し続けている地域も少なくありません。「不動産はインフレに強い」という一般論を鵜呑みにせず、投資対象エリアの人口動態や将来性を個別に検証する視点が重要です。
税制上の優遇措置がある
不動産投資では、家賃収入から各種の必要経費を差し引いて課税所得を計算します。国税庁(No.1370)によると、必要経費として認められるのは「不動産収入を得るために直接必要な費用のうち家事上の経費と明確に区分できるもの」であり、代表的なものとして減価償却費、固定資産税、管理委託料、修繕費、借入金利子などが挙げられています。
特に減価償却費は、実際の現金支出を伴わずに経費として計上できるため、帳簿上の赤字を作り出しやすい特徴があるでしょう。不動産所得が赤字になった場合、他の所得(給与所得など)と損益通算して所得税・住民税の負担を軽減できる仕組みがあります。
ただし、国税庁(No.1391)では、不動産所得の赤字のうち、土地を取得するために要した借入金の利子に相当する部分は損益通算の対象にならないと定めています。「節税目的」だけで不動産投資を始めると、想定した税メリットが得られない場合もあるため、税制上の仕組みを正確に理解しておくことが不可欠です。
出典:国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
出典:国税庁「No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」
不動産投資のデメリットとリスク

不動産投資には、他の投資商品と比べて特有のデメリットやリスクが存在します。メリットだけでなくリスク面も十分に理解した上で、投資判断を行いましょう。
空室リスク:入居者がいなければ収入はゼロ
不動産投資における最大のリスクは空室リスクです。入居者が退去した後、次の入居者が決まるまでの期間は家賃収入が発生しません。その間もローン返済、管理費、固定資産税などの固定費は継続して発生するため、空室が長期化すれば持ち出しが膨らむことになります。
特に人口減少が進む地方や、最寄り駅から遠い立地では空室リスクが高くなる傾向があるでしょう。投資前には対象エリアの賃貸需要を客観的なデータ(自治体の人口統計、賃貸物件の空室率など)で確認することが重要です。
流動性リスク:売りたいときにすぐ売れない
株式やREITは市場で即日売却が可能ですが、現物不動産は買い手を見つけるまでに数か月〜半年以上かかることも珍しくありません。急に現金が必要になった場合に、希望価格で売却できる保証はないため、不動産は「換金しにくい資産」である点を認識しておく必要があるでしょう。
金利上昇リスク:ローン返済額が増加する
変動金利でローンを組んでいる場合、金利が上昇すると毎月の返済額が増加し、キャッシュフローが悪化します。日本銀行は2024年にマイナス金利政策を解除し、政策金利の引き上げを実施しており、今後も金利環境が変化する可能性は十分にあるでしょう。
金利が1%上昇した場合に返済額がどの程度増えるか、シミュレーションを事前に行っておくことが不可欠です。
修繕・維持管理コスト:想定外の出費に備える必要がある
建物は経年劣化するため、屋根や外壁の塗り替え、給排水管の交換、設備の更新などに定期的な修繕費がかかります。特に築古物件では購入後に想定外の修繕費が発生するケースがあり、「利回りが高い=手取りが多い」とは限らない点に注意が必要です。
災害リスク:地震・水害で建物が損傷する可能性
日本は地震、台風、水害などの自然災害が多い国であり、不動産は物理的な損傷を受けるリスクが常に存在します。火災保険や地震保険への加入はもちろん、ハザードマップで投資対象エリアの災害リスクを事前に確認することが重要です。
不動産投資で見落としやすい3つのポイント

不動産投資会社やセミナーでは語られにくい、しかし投資判断に直結する重要なポイントを3つ取り上げます。
「表面利回り」と「実質利回り」の違いを正しく理解する
不動産投資の広告でよく使われる「利回り○%」は、多くの場合「表面利回り(グロス利回り)」であり、年間家賃収入÷物件価格×100で計算される数値に過ぎません。
実際の収益を判断するためには、管理費、修繕積立金、固定資産税、都市計画税、火災保険料、空室損などの経費を差し引いた「実質利回り(ネット利回り)」で比較する必要があります。表面利回りが8%の物件でも、経費を差し引くと実質利回りが3〜4%になるケースは珍しくないでしょう。
サブリース(一括借上げ)の「家賃保証」を過信しない
サブリースとは、不動産管理会社がオーナーから物件を一括で借り上げ、入居者の有無にかかわらず一定の賃料をオーナーに支払う仕組みです。「空室でも家賃がもらえる」と聞くと安心感がありますが、保証される家賃は永久に固定されるわけではなく、借地借家法第32条に基づきサブリース会社が賃料の減額を請求できる点に注意しましょう。
国土交通省は令和2年に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)」を施行し、サブリース業者に対する誇大広告の禁止、不当勧誘の禁止、契約締結前の重要事項説明の義務化を規定しています。
この法律が制定された背景には、家賃保証の条件を誤認したまま契約を結び、後にトラブルに発展するケースが社会問題化していたことがあるでしょう。
出典:国土交通省「賃貸住宅管理業法 法律、政省令、解釈・運用の考え方、ガイドラインについて」
不動産投資の「優先順位」を見誤らない
不動産投資は資産形成の有力な手段の一つですが、生活防衛資金(生活費の6か月〜1年分)の確保、公的保障の把握、NISAやiDeCoの活用が先に検討すべきステップです。
会社員であれば、病気やケガで働けなくなった場合に傷病手当金(給与の約3分の2、最長1年6か月)が支給され、医療費が高額になっても高額療養費制度(年収約370万〜770万円の場合、自己負担上限は月額80,100円+α)で負担が抑えられる仕組みがあります。こうした公的保障を正確に把握することで、民間の医療保険を最適化し、不動産投資に回せる資金を捻出できる可能性があるでしょう。
不動産投資は流動性が低く、一度始めると簡単にはやめられません。まずは少額から始められるNISAやiDeCoで投資経験を積み、家計全体の資産配分の中で不動産をどう位置づけるかを検討するのが堅実なアプローチです。
不動産投資に向いている人・向いていない人

不動産投資はすべての人に適した投資方法ではありません。自身の状況と照らし合わせて、適性を冷静に判断しましょう。
不動産投資を検討しやすい人の特徴
不動産投資を前向きに検討できる条件としては、以下のような点が挙げられます。
・生活防衛資金が十分に確保されており、投資に回す余裕資金がある方
・安定した給与収入があり、金融機関の融資審査に通りやすい方
・長期的な視点で資産運用に取り組める方
・物件管理や入居者対応など、事業として運営する意識がある方
・税務や法律の基礎知識を学ぶ意欲がある方
慎重に検討すべき人の特徴
一方で、以下に当てはまる場合は不動産投資について慎重な判断が求められるでしょう。
・生活防衛資金が不十分で、投資に回す余裕資金がない方
・「不労所得」のイメージだけで物件管理の手間を理解していない方
・「節税」だけを目的に投資を検討している方
・不動産投資セミナーや営業担当の勧誘をきっかけに検討を始めた方
不動産投資は「投資」という名称がついていますが、実態は「賃貸事業の経営」に近い性質を持っています。入居者募集、家賃の集金、トラブル対応、修繕の手配、確定申告など、オーナーとしての責任と判断が求められる点を理解しておくことが大切です。
まとめ:不動産投資は仕組みの理解とリスクの把握から始める
不動産投資は、家賃収入による安定したキャッシュフロー、融資を活用したレバレッジ効果、税制上の優遇措置など、他の投資商品にはない特徴を持っています。国土交通省のデータが示すように、近年は地価の上昇傾向も追い風となっているでしょう。
しかし、空室リスク、金利上昇リスク、流動性リスク、修繕・維持管理コストといったデメリットを正しく理解せずに始めると、想定外の損失を被る可能性があります。特にサブリースの「家賃保証」については、国土交通省が法律を整備して注意喚起を行うほどトラブルが多発している領域であり、契約条件を慎重に確認する姿勢が欠かせません。
不動産投資を検討する際は、まず生活防衛資金の確保と公的保障の把握を行い、NISAやiDeCoの活用を優先した上で、余裕資金の範囲内で取り組むことが堅実な第一歩です。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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