投資リスクなどへの対策
詐欺対策の相談窓口と被害防止|警察相談「#9110」と家計復旧の整理

警察庁が2026年2月に公表した「令和7年の犯罪情勢」によると、2025年の特殊詐欺の認知件数は27,758件、被害額は1,414.2億円(前年比+96.7%)で、いずれも過去最多となりました。被害防止と不審な連絡を受けた段階の相談には、警察相談ダイヤル「#9110」と消費者ホットライン「188」が公的窓口として整備されています。
本記事では、警察庁・警視庁・消費者庁の公的相談窓口と被害後の家計復旧の選択肢を整理する内容です。特に詐欺被害が所得税の雑損控除の対象外となる点や、振り込め詐欺救済法による被害回復分配金など、被害後の手取りに影響する論点を中心に解説します。
2025年の特殊詐欺被害は過去最多1,414億円

2025年は特殊詐欺の認知件数・被害額が過去最多を更新する状況です。被害の傾向を押さえることが、家族間の情報共有と注意喚起の起点となります。
認知件数27,758件・被害額1,414億円の内訳
警察庁の発表によると、2025年の特殊詐欺被害は次の通りです。
・認知件数:27,758件(前年比+31.9%)
・被害額:1,414億1,743万円(前年比+96.7%)
・オレオレ詐欺の認知件数:14,393件、被害額1,121億円
特に2025年は「警察官や検察官を名乗る手口」が急増し、特殊詐欺被害の中核となりました。20代・30代の被害認知件数が前年から2倍以上に増加し、高齢者だけでなく若年層への被害拡大も進んでいます。
SNS型投資・ロマンス詐欺も高止まり
特殊詐欺とは別カテゴリで集計される「SNS型投資・ロマンス詐欺」も被害が高止まりの状況です。2025年上半期だけで認知件数4,737件・被害額389.3億円が報告され、インターネットバンキング利用の送金が被害額の45.2%を占める構造となっています。SNSやマッチングアプリ経由で被害者と接触する手口が定着しつつある状況です。
公的相談窓口の活用

不審な電話やメールを受けた段階での早期相談が、被害阻止につながります。公的相談窓口は緊急性と相談内容に応じた使い分けが基本です。
警察相談専用ダイヤル「#9110」
緊急性のない相談には、警察相談専用ダイヤル「#9110」が全国共通で利用できます。最寄りの警察本部の相談窓口に接続され、専門の相談員が状況に応じた助言を提供する公的窓口です。
受付時間は原則として平日の日中で、都道府県警察によって時間帯が異なります。事件性が明確な緊急通報は110番、相談ベースでは#9110を選ぶ使い分けが基本です。
消費者ホットライン「188」と他の専門窓口
消費者庁が所管する消費者ホットライン「188」は、悪質商法・契約トラブル・消費生活全般の相談を受け付けています。最寄りの消費生活センターへ自動接続され、契約のクーリング・オフや解約交渉の助言を受けられます。
金融商品の相談は金融庁の金融サービス利用者相談室、未公開株関連は日本証券業協会の通報窓口(0120-344-999)が用意済みです。サイバー犯罪は各都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口が一覧化されており、被害内容に応じた窓口選択が肝心となります。
被害発生時は最寄り警察署で被害届の提出
実際に被害が発生した場合は、最寄り警察署の生活安全課または刑事課が被害届の提出先です。被害届の受理番号は、振り込め詐欺救済法に基づく被害回復分配金の申請や、保険会社への請求の証拠書類として求められる場面が出てきます。被害判明後はできるだけ早く警察への届出を済ませることが、後の手続きの起点です。
被害を未然に防ぐための具体策

警察庁・警視庁が公表する被害防止策には共通点があります。手口の進化に対応しつつ、家族間での合意形成も含めた対策が現実的でしょう。
「お金」「個人情報」「緊急性」の3点に警戒
電話やメールで突然次のような話を切り出されたら、詐欺を疑って対応するのが現実的な姿勢となります。
・還付金・未払い料金など「お金の話」:ATMで還付金が受け取れる、口座番号を伝えればすぐ振り込めるなどの説明は、ほぼ全て詐欺の手口
・銀行口座番号・パスワード・マイナンバーなど「個人情報の要求」:公的機関は電話でこれらを聞き出すことはない
・「今日中」「今すぐ」など緊急性を煽る表現:冷静な判断を妨げる手口の典型
身元確認は自分で公式番号にかけ直す
警察官・市役所職員・金融機関職員を名乗る電話を受けた場合、相手が伝えた連絡先ではなく、自分で公式サイトから調べた番号にかけ直して確認するのが鉄則です。不審なメールやSMSのリンクは開かず、公式サイトをブックマークから開くか、検索エンジン経由でアクセスする習慣が被害防止につながります。
家族間での情報共有と防犯機器の活用
詐欺の手口は四半期単位で変化するため、家族内での定期的な情報共有が有効です。高齢の親族がいる世帯では、迷惑電話防止機能や自動録音機能のある電話機の導入も検討材料となります。総務省・警察庁が連携する「迷惑電話対策相談センター」も、対策機器の相談先として活用できる位置付けです。
被害発生後の家計復旧と税務上の整理

被害発生後の対応は、警察への届出と並行して、家計面の整理も欠かせません。特に税務上の取り扱いには重要な制約があり、誤解したまま申告すると追加の手取り損失につながる構造です。
詐欺被害は原則として雑損控除の対象外
所得税の雑損控除は、災害・盗難・横領による損失に限定されており、詐欺による損失は原則として控除の対象外となります。所得税法第72条で雑損控除の対象が「災害又は盗難若しくは横領」に限定されているからです。詐欺は被害者本人の意思で金銭を交付した形となり、占有が強制的に奪われる「盗難」と区別されるのが法的解釈となります。
過去の国税不服審判所の裁決でも、振り込め詐欺の被害について雑損控除の適用が認められなかった事例があります。被害金額が大きいケースほど「税金で取り戻せる」と期待しがちですが、税務上の救済は基本的に得られない構造を踏まえた家計復旧計画が前提です。
出典:国税庁タックスアンサー No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)
例外:キャッシュカード詐欺盗・スキミングは盗難扱い
同じ「詐欺」と呼ばれていても、警察庁が「盗難」に分類する手口は雑損控除の対象になり得ます。代表例は、警察官や銀行協会職員を名乗る犯人がキャッシュカードを直接受け取る「キャッシュカード詐欺盗」と、カード情報を不正機器で読み取る「スキミング」です。これらは形式上「盗難」に該当するため、警察の被害証明書を取得すれば、雑損控除の対象として確定申告できる可能性も生じます。手口を正確に申告するには、警察での被害届受理時の罪名確認が出発点です。
振り込め詐欺救済法による被害回復分配金
振り込め詐欺で犯人の口座に残高がある場合、「振り込め詐欺救済法」に基づき分配金が支払われる制度があります。金融機関が犯人の口座を凍結し、預金保険機構の公告手続きを経て残高を被害者へ分配する仕組みです。被害金の全額が戻る制度ではなく、口座残高の按分配当ですが、被害判明後すぐに警察と金融機関へ連絡することが分配対象の前提となります。
保険による補償の確認
個人賠償責任保険・サイバー保険・クレジットカード付帯補償などで、詐欺被害の一部が補償される場合もあるでしょう。ただし補償対象は限定的で、ネットショッピング詐欺やフィッシングによるクレジットカード不正利用は補償される一方、振り込め詐欺やSNS型投資詐欺は原則補償対象外となるのが通例となります。加入中の保険・カードの約款を確認し、被害判明後に保険会社・カード会社へ連絡する流れが基本です。
まとめ:相談窓口の早期活用と家計復旧の正確な理解
2025年の特殊詐欺被害は過去最多を更新し、若年層への被害拡大も進んでいます。不審な連絡を受けた段階では警察相談「#9110」と消費者ホットライン「188」が利用でき、緊急時は110番、被害発生時は最寄り警察署で被害届を提出する流れです。
被害発生後の家計復旧では、詐欺被害が原則として所得税の雑損控除の対象外となる点が重要な論点となります。例外的にキャッシュカード詐欺盗・スキミングは「盗難」扱いで雑損控除の対象となるほか、振り込め詐欺救済法による被害回復分配金や、保険・カード付帯補償による一部補償も検討材料となります。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆した内容です。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムでご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



