医療保険
糖尿病でも医療保険に入れる?加入の前に確かめたい公的保障

糖尿病は、進行すると網膜症・腎症・神経障害という3大合併症につながることがあり、治療が長く続きやすい病気です。
公的な医療保険では、治療が長引くほど自己負担の上限が下がる仕組みがあり、直近12か月間で3か月以上高額療養費に該当すると、4か月目から限度額がさらに引き下げられます。
人工透析が必要になった場合には、特定疾病療養受療証により1か月あたりの窓口負担が1万円までとなる仕組みです。
この記事では、民間の医療保険を探す前に確かめたい公的保障を解説します。
糖尿病の治療は長く続きやすい

まず、この病気がどのような経過をたどるのかを押さえます。
公的保障の効き方に関わるためです。
3大合併症と、初期に症状が出にくいこと
厚生労働省のe-ヘルスネットによると、糖尿病は血液中のブドウ糖の濃度が多くなりすぎる病気で、進行すると動脈硬化が進み、脳卒中や虚血性心疾患になりやすくなります。
また、目の網膜や腎臓、神経を傷害し、3大合併症と呼ばれる糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病神経障害を引き起こし、失明や透析につながることもある病気です。
初期にはほとんど症状がなく、症状が出たときには進行していることが多いため、年に1度は健康診査を受けて血糖値を確かめることが求められています。
負担は1か月より年単位で積み上がる
治療が長く続く場合、1回あたりの窓口負担がそれほど高額でなくても、年単位では負担が積み重なります。
公的な医療保険には、この積み重ねに対応する仕組みが用意されています。
治療が長引くほど自己負担の上限は下がる

高額療養費制度には、長期の療養に配慮した仕組みがあります。
2つ確かめます。
多数回該当で4か月目から限度額が下がる
高額療養費として払い戻しを受けた月数が直近12か月間で3月以上あったときは、4月目から自己負担限度額がさらに引き下げられます。
これを多数回該当といい、治療が長引くほど1か月あたりの上限は下がっていく仕組みです。
ただし、多数回該当は同一の保険者・同一の被保険者で適用されるため、転職などで保険者が変わったときは月数が通算されません。
令和8年8月からは年単位の上限も設けられた
協会けんぽによると、今回の高額療養費制度の見直しでは、長期療養者への配慮の観点から多数回該当の金額を維持したうえで、令和8年8月から新たに年単位の上限額が設けられています。
たとえば標準報酬月額28万〜50万円の区分では、令和8年8月から令和9年7月までの1か月あたりの上限が85,800円+(総医療費−286,000円)×1%、多数回該当の場合は44,400円、年間の上限は53万円です。
令和9年8月からは所得区分の細分化も予定されているため、実際の金額は加入している保険者で確かめます。
人工透析が必要になった場合の仕組み
合併症が進んで人工透析に至った場合には、別枠の仕組みが用意されています。
知られていないことの多い制度です。
特定疾病療養受療証で窓口負担は月1万円
治療が長期間にわたり、かつ医療費が高額となる疾病として、人工腎臓(人工透析)を実施している慢性腎不全は特定疾病療養受療証の対象です。
受療証を医療機関の窓口に提示すると、1か月あたりの自己負担限度額は1万円となります(診療のある月の標準報酬月額が53万円以上である70歳未満の被保険者またはその被扶養者は2万円)。
申請した月の初日から適用され、さかのぼれない
この受療証は、医師の証明などを添えて加入している保険者へ申請し、交付を受けて使う仕組みです。
申請月の初日から適用され、申請月の前月以前の分にはさかのぼって適用されないため、透析が始まったら速やかに申請することが欠かせません。
障害年金の対象になる場合もある
障害の状態によっては、障害年金の対象になることもあります。
受給には初診日や保険料の納付についての要件があるため、該当しそうな場合は年金事務所で確かめる流れになります。
民間の医療保険を考える順番

公的保障で賄える範囲を確かめたうえで、民間保険を考えます。
順番が要点です。
まず不足する金額を見積もる
高額療養費の上限額と特定疾病療養受療証の仕組みを当てはめると、医療費そのものの自己負担にはおおよその見当がつきます。
そのうえで、公的保障の対象にならない差額ベッド代や通院の交通費、収入が減る分を書き出すと、民間保険で備える必要がある金額が見えてきます。
割高な保険料を払い続ける前に
持病がある場合に加入しやすい保険は、通常の医療保険より保険料が高く設定されているのが一般的です。
公的保障で賄える範囲を確かめないまま「入れる保険」を探すと、必要以上の保険料を長く払い続けることにもなりかねません。
相談の場でも、加入できること自体が目的になり、保障の中身と保険料の重さを比べていない例が見られます。
告知は事実のとおりに行う
加入を申し込む場合は、健康状態や治療歴を事実のとおりに告知します。
事実と異なる告知をすると給付を受けられなくなることもあるため、迷う点は保険会社に確かめながら記入することが確実です。
まとめ:公的保障を確かめてから保険を探す
糖尿病と診断された後に医療保険を探す前に、公的保障でどこまで賄えるのかを確かめる順番が要点になります。
確かめる点は次のとおりです。
・糖尿病の3大合併症は網膜症・腎症・神経障害で、失明や透析につながることもある
・高額療養費は直近12か月間で3月以上該当すると、4月目から限度額がさらに下がる(多数回該当)
・令和8年8月からは年単位の上限額も設けられている
・人工透析を実施している慢性腎不全は、特定疾病療養受療証により窓口負担が月1万円(一定以上の所得は2万円)
・受療証は申請月の初日から適用され、前月以前にはさかのぼらない
「入れる保険」を探す前に、多数回該当と特定疾病療養受療証で医療費の自己負担がどこまで抑えられるのかを確かめ、そのうえで足りない部分だけを民間保険で補うことが、保険料の掛けすぎを防ぐ進め方になります。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆した内容です。
当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。
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