相続
代襲相続|発生する3つのケース・相続放棄では発生しない理由・再代襲の範囲を解説

代襲相続は、本来の相続人が「死亡・相続欠格・相続廃除」のいずれかに該当した場合に、その子が代わりに相続する制度です。民法第887条第2項および第889条第2項に規定されており、相続放棄では代襲相続は発生しません。また、子の代襲には再代襲(ひ孫・玄孫)が認められる一方、兄弟姉妹の代襲は甥・姪の一代限りという違いがあります。
代襲相続人の法定相続分は被代襲者の相続分をそのまま引き継ぎ、複数いる場合は均等に分割される設計です。さらに、代襲相続人となった孫は相続税の2割加算の対象外となる点も実務上の重要ポイントとなります。
本記事では、代襲相続が発生する3つのケース、相続放棄では発生しない理由、再代襲の範囲、相続分の計算方法、相続税の2割加算判定まで、国税庁・e-Gov法令検索の民法条文に基づいて整理します。
代襲相続とは|本来の相続人に代わって相続する制度

代襲相続とは、被相続人の死亡時に本来相続人となるはずだった人が相続できない場合に、その人の子が代わりに相続人となる制度を指します。
例えば、祖父Aが亡くなった際に、本来相続人となるはずの子Bがすでに亡くなっていた場合、Bの子である孫CがBに代わって相続人となる仕組みです。この場合、Bを「被代襲者」、Cを「代襲相続人(代襲者)」と呼びます。
代襲相続の制度が設けられている理由は、相続の公平性を保つためにあります。通常であれば「祖父A→子B→孫C」と財産が引き継がれるところ、たまたまBが先に亡くなっていたからといってCが財産を受け取れないのは不公平と考えられるためです。
代襲相続が発生する3つのケース

民法で定められている代襲相続の発生要件は、次の3つに限定されています。相続人となるはずだった人(被代襲者)に以下のいずれかの事由があった場合に、代襲相続が発生する設計です。
ケース1:被相続人より先に相続人が死亡していた場合
最も一般的なケースとして、相続人となるはずだった人が被相続人より先に亡くなっている場合が挙げられます。被相続人と相続人が同時に亡くなった場合(同時死亡の推定)も、代襲相続の対象となる仕組みです。
ケース2:相続人が相続欠格に該当した場合
相続欠格とは、相続人が違法行為などによって相続に関する不正を行った場合に、法律上当然に相続権を失う制度です。民法第891条に定められており、以下のような行為が該当します。
・故意に被相続人または他の相続人を死亡させた、または死亡させようとして刑に処せられた
・被相続人が殺害されたことを知りながら告発・告訴しなかった
・詐欺や強迫により、被相続人の遺言書の作成・撤回・変更を妨害した
・遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した
相続欠格に該当すると、その人は相続人になれませんが、その人の子は代襲相続人として相続できる構造です。
ケース3:相続人が相続廃除された場合
相続廃除とは、相続人が被相続人に対して虐待や重大な侮辱を加えた場合、または著しい非行があった場合に、被相続人の請求によって家庭裁判所が相続権を剥奪する制度です。廃除が認められた相続人は相続権を失いますが、その子には代襲相続が発生します。
ただし、廃除の対象となるのは遺留分を有する推定相続人(配偶者、子、直系尊属)に限られ、兄弟姉妹は廃除の対象外となる仕組みです。
相続放棄では代襲相続は発生しない

代襲相続が発生する要件は前述の3つに限定されており、相続放棄は代襲相続の発生原因には含まれていません。
相続放棄をした人は、民法第939条により「初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定されています。つまり、相続放棄をすると相続権自体が発生しないため、代襲相続人に引き継がれる相続権もない設計です。
例えば、祖父Aが亡くなり、子Bが相続放棄をした場合、Bの子である孫CはAの代襲相続人にはなりません。この点は、被相続人に借金がある場合の相続放棄を検討する際に押さえておくべきポイントです。子が相続放棄をしても、その子(孫)に借金の返済義務が移ることはない仕組みとなります。
ただし、相続放棄によって代襲相続は発生しない代わりに、次順位の法定相続人に相続権が移る点には注意が必要です。
代襲相続人になれる範囲|再代襲の有無

代襲相続人になれる人の範囲は、被代襲者が誰であるかによって異なります。
子の代襲相続:孫・ひ孫・玄孫(再代襲あり)
被相続人の子が被代襲者となる場合、孫が代襲相続人となります。さらに孫も被相続人より先に亡くなっている場合は、ひ孫が代襲相続人となる再代襲が発生する仕組みです。
民法第887条第3項により、直系卑属(子、孫、ひ孫など)については、何代先であっても再代襲が認められています。理論上は玄孫(やしゃご)以降も代襲相続が続く可能性があります。
兄弟姉妹の代襲相続:甥・姪のみ(再代襲なし)
被相続人に子も直系尊属(親、祖父母)もいない場合、兄弟姉妹が相続人となります。その兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっている場合は、甥・姪が代襲相続人となる設計です。
ただし、兄弟姉妹の代襲相続は甥・姪の一代限りであり、再代襲は認められていません。甥・姪が亡くなっていても、その子(被相続人からみた甥姪の子)は代襲相続人にはならない構造となります。
直系尊属には代襲相続がない
被相続人の父母が相続人となる場合において、父母がすでに亡くなっているときは祖父母が相続人となります。これは代襲相続ではなく、第2順位の相続人の中でより近い世代が優先されるという仕組みによるものです。
代襲相続人の相続分はどうなる?計算方法と具体例

代襲相続人の法定相続分は、被代襲者(本来の相続人)の相続分をそのまま引き継ぐ設計です。代襲相続人が複数いる場合は、被代襲者の相続分を均等に分割します。
具体例1:配偶者と子2人のうち1人が死亡、孫2人がいる場合
被相続人Aには配偶者B、長男C、次男Dがいますが、長男Cは先に亡くなっており、Cには子(Aの孫)EとFがいる場合を考えます。
・配偶者Bの相続分:1/2
・次男Dの相続分:1/4(子全体の1/2÷2人)
・孫Eの相続分:1/8(長男Cの相続分1/4÷2人)
・孫Fの相続分:1/8(長男Cの相続分1/4÷2人)
孫EとFは、亡くなった長男Cの相続分1/4を2人で均等に分けることになります。
具体例2:兄弟姉妹が相続人で、1人が死亡、甥が1人いる場合
被相続人Aには配偶者も子も親もおらず、兄Bと弟Cが相続人となるケースで、弟Cが先に亡くなっており、Cには子(Aの甥)Dがいる場合を考えます。
・兄Bの相続分:1/2
・甥Dの相続分:1/2(弟Cの相続分をそのまま引き継ぐ)
甥Dは弟Cの代襲相続人として、弟Cが受け取るはずだった相続分を取得する構造です。
代襲相続における注意点と相続税の2割加算

代襲相続が発生した場合、通常の相続よりも複雑な問題が生じやすくなります。実務上押さえておくべき注意点を整理しました。
養子縁組前に生まれた子は代襲相続できない
民法第887条第2項ただし書きにより、代襲相続人は「被相続人の直系卑属」でなければなりません。
被相続人の養子が先に亡くなっている場合、養子縁組後に生まれた養子の子は代襲相続できますが、養子縁組前に生まれた養子の子は代襲相続できません。養子縁組前に生まれた子は被相続人の直系卑属に該当しないためです。
出典:国税庁「養子縁組前に出生した養子の子の代襲相続権の有無」
相続税の基礎控除と代襲相続人
相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。代襲相続人も法定相続人の数に含まれるため、代襲相続人が複数いる場合は基礎控除額が増える可能性がある仕組みです。
例えば、本来の相続人である子1人が亡くなっており、その子(孫)が2人いる場合、法定相続人の数は1人から2人に増えることになります。
代襲相続人は遺産分割協議に参加する
代襲相続人も他の相続人と同様に、遺産分割協議に参加する権利と義務があります。代襲相続人が未成年の場合は、特別代理人の選任が必要になることもあるため、手続きが複雑化しやすい傾向です。
相続税の2割加算|代襲相続人の孫は対象外
相続税には「2割加算」という制度があり、被相続人の一親等の血族および配偶者以外の人が相続した場合、相続税額が2割増しになります。
ただし、代襲相続人となった孫(直系卑属)は2割加算の対象外となる設計です。一方、代襲相続ではなく養子縁組によって相続人となった孫(孫養子)は、原則として2割加算の対象となる点に違いがあります。
まとめ|代襲相続の仕組みを理解して適切な相続対策を
代襲相続について、本記事のポイントを整理します。
・代襲相続が発生する3条件:相続人の死亡・相続欠格・相続廃除のいずれか
・相続放棄では代襲相続は発生しない:民法第939条により「初めから相続人とならなかったもの」とみなされる
・子の代襲:孫→ひ孫→玄孫と再代襲あり(民法第887条第3項)
・兄弟姉妹の代襲:甥・姪の一代限り、再代襲なし
・代襲相続人の相続分:被代襲者の相続分をそのまま引き継ぎ、複数いれば均等分割
・養子の子:養子縁組後に生まれた子のみ代襲相続可、縁組前は不可
・相続税の2割加算:代襲相続人の孫は対象外、孫養子は対象
代襲相続は、本来の相続人が死亡・相続欠格・相続廃除によって相続権を失った場合に発生する制度です。相続放棄は代襲相続の原因にはならないため、子が相続放棄をしても孫に相続権が移ることはありません。
また、子の代襲相続には再代襲が認められる一方、兄弟姉妹の代襲相続は甥・姪の一代限りという違いがあります。代襲相続が発生すると相続人の範囲が変わり、遺産分割協議や相続税の計算にも影響が及ぶため、複雑なケースでは司法書士・弁護士・税理士など実務専門家への相談も検討する設計が現実的でしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司による執筆です。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムでご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズにお調べいただけるでしょう。



