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NISAで個別株投資の「損切り」ルール!損失を最小限に抑える方法

新NISAの成長投資枠を活用すれば、個別株も非課税で売買できるため、企業の成長とともに大きなリターンを狙える可能性があります。しかし、個別株投資は魅力的な一方で、株価が予想に反して下落し、損失が出るリスクも伴います。大切なのは、この損失をいかに最小限に抑えるかです。
この記事では、NISAでの個別株投資におけるリスク管理の要である「損切り」に焦点を当てて解説します。損切りとは何か、なぜ必要なのか、そして具体的な判断基準やルール設定方法まで、損失を最小限に抑え、賢く個別株投資を続けるための方法を提案します。
「損切り」とは?なぜNISAの個別株投資で必要なの?

損切りとは、保有している株の評価額が購入時よりも下がり、含み損(評価上の損失)が出ている場合に、それ以上の損失拡大を防ぐために売却して損失を確定させることを指します。
なぜ損切りが必要なのか?
1.損失の拡大を防ぐため: 「いずれ株価は戻るだろう」と根拠なく保有し続けると、損失がさらに拡大し、取り返しのつかない事態になる可能性があります。損切りは、いわば「これ以上の傷を負わないための撤退ライン」です。
2.資金の有効活用のため: 含み損を抱えたままの株に資金が縛られると、他の成長機会のある銘柄に投資するチャンスを逃してしまいます。損切りすることで、資金を解放し、別の銘柄で利益を狙うことができます。
3.感情的な判断を防ぐため: 損失が出ると、「損を確定したくない」という心理(プロスペクト理論)が働き、冷静な判断が難しくなります。事前にルールを決めておくことで、感情に流されず機械的に行動できます。
NISAにおける損切りの重要性
NISA口座で個別株投資をする場合、損益通算ができないという特徴があります。
・損益通算ができないデメリット: NISA口座で損失が出ても、他の課税口座で得た利益と相殺して税金を減らす「損益通算」はできません。また、損失を翌年以降に繰り越す「繰越控除」も利用できません。
・このため、NISA口座で損失を出してしまうと、税制上のメリットは一切得られず、ただ損失が確定するだけ、という状態になります。だからこそ、損失を「大きく」しないための損切りが、NISAの個別株投資においては特に重要になるのです。
損切りの「判断基準」と「ルール設定」

損切りは感情に左右されず、事前に決めたルールに基づいて行うことが鉄則です。具体的な判断基準とルール設定方法を見ていきましょう。
損切りルールの具体的な設定方法
損切りルールは、主に「購入価格からの下落率」で設定するのが一般的です。
・下落率で設定する: 「購入価格から〇%株価が下落したら損切りする」というルールを設定します。
【例】 「購入価格からマイナス10%下落したら損切りする」
100万円で買った株が90万円になったら売却。
【例】
「購入価格からマイナス15%下落したら損切りする」 損切りラインは、あなたのリスク許容度やその銘柄の特性(値動きの荒さ)によって調整します。初心者のうちは、比較的厳しめに(例:マイナス10%など)設定し、大きな損失を避けるのがおすすめです。
・絶対額で設定する: 「〇円の損失が出たら損切りする」という絶対額で決める方法です。
【例】「どんな株でも、5万円の損失が出たら損切りする」
損切りの判断基準となるシグナル
株価の下落率以外にも、損切りを検討すべきシグナルはいくつかあります。
・購入時のシナリオが崩れた場合: あなたがその株を購入した理由(企業の成長性、新製品の開発など)が、その後の状況変化で崩れた場合。
【例】「新製品が期待外れだった」「競合他社が強力な製品を発表した」など、企業の根本的な競争力が失われたと判断できる場合。
・企業の業績が著しく悪化した場合: 決算発表で赤字転落、売上高の急減、利益率の大幅な低下など、企業が本業で稼ぐ力が失われた場合。
・市場全体が大きく下落した場合: 特定の銘柄に問題がなくても、市場全体がシステム的なリスク(金融危機、パンデミックなど)で大きく下落し、回復に時間がかかると予想される場合。ただし、この場合は積立を継続するチャンスと捉える視点も重要です。
・テクニカル分析での節目を割った場合: 株価の移動平均線(25日移動平均線、75日移動平均線など)を下回ったり、支持線(以前の安値)を割り込んだりするなど、チャート上で「節目」となるポイントを下回った場合。
損切りルールを「実行」するための具体的な方法

ルールを決めても、実行できなければ意味がありません。感情に流されず損切りを実行するための方法です。
投資前に「逆指値注文」を設定する
最も効果的なのは、株を購入する際に、同時に損切りラインで自動的に売却される「逆指値注文(ストップロス注文)」を設定しておくことです。
・仕組み: 「株価が〇〇円まで下がったら、自動的に売却する」という注文です。
【メリット】
・感情に左右されない: 損失が拡大する前に機械的に売却されるため、迷いや恐怖心に打ち勝つ必要がありません。
・損失が限定される: 設定したラインで確実に損失を確定できるため、それ以上の損失拡大を防げます。
【注意点】
株価が急落した場合など、設定した価格で売却できない(スリッページ)こともゼロではありません。また、日々の値動きが激しい銘柄だと、頻繁に損切りが発動してしまう可能性もあります。
ポートフォリオ全体で「最大損失額」を設定する
個別株だけでなく、NISAのポートフォリオ全体で「最大許容損失額」を決めておくことも有効です。
【例:】「NISAの個別株ポートフォリオ全体で、年間〇万円以上の損失が出たら、一旦個別株投資を中断する」など。
これにより、個別の銘柄の損切りと合わせて、全体のリスクを管理できます。
「余剰資金」で投資する
損切りは損失を伴う行為です。生活に必要なお金で投資を行うと、いざ損切りが必要になった時に生活が立ち行かなくなり、損切りできない、あるいは無理なタイミングで売却せざるを得なくなります。必ず当面使う予定のない余剰資金で投資を行いましょう。
投資の記録をつける
損切りした銘柄も含め、投資の記録をつけておきましょう。なぜ損切りになったのか、どうすればよかったのかを振り返ることで、次の投資に活かすことができます。
まとめ:NISA個別株投資は「損切り」でリスクを管理する
NISAの成長投資枠を活用した個別株投資は魅力がありますが、元本割れのリスクと隣り合わせです。そこで重要なのが、損失を最小限に抑えるための「損切り」ルールを事前に設定し、感情に流されず実行することです。
・ルール設定: 下落率や絶対額で明確な損切りラインを設定。
・自動化: 逆指値注文を活用し、機械的な実行を。
・分散投資: そもそも大きな損失を避けるための基本。
・余剰資金: 精神的な余裕を持って投資するための大前提。
これらの方法を実践することで、NISAでの個別株投資のリスクを管理し、失敗を最小限に抑えながら、賢く資産形成を続けていくことができるでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。