iDeCo
iDeCoの受給開始年齢は何歳?60歳以降の引き出しの自由度

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、原則60歳まで引き出せない老後資金のための制度です。しかし、60歳になったからといって、すぐに受け取りを始めなければならないわけではありません。iDeCoは、60歳以降の「受給開始年齢」を自分で選べる自由度を持っています。
この記事では、iDeCoの受給開始年齢は何歳から選択できるのか、そして最長75歳まで運用を継続できることのメリットを解説します。さらに、受け取り開始年齢の選択が、将来の税金や「資産寿命」にどう影響するのかを詳しく掘り下げ、あなたの老後資金を最大限に有効活用するための戦略を提案します。
iDeCoの受給開始年齢:原則60歳から、最長75歳まで

iDeCoの資産は、原則として60歳まで引き出すことができません。しかし、60歳になったらすぐに受け取りを始めなければならないわけではなく、受給開始年齢を自分で選ぶことができます。
何歳から受け取り開始できるかの選択肢
・最短60歳から: iDeCoの加入期間が10年以上であれば、60歳から老齢給付金を受け取ることが可能です。もし加入期間が10年未満の場合は、加入期間に応じて受給開始可能年齢が61歳~65歳に繰り下がります。
・最長75歳まで繰り下げ可能: 60歳になった時点で受給要件を満たしていても、すぐに受け取らずに、運用を継続しながら受給開始時期を最長75歳まで遅らせることができます。これを「繰り下げ」と呼びます。
60歳以降も運用を継続できるメリット
60歳以降もiDeCoの運用を続ける最大のメリットは、「運用益非課税」の恩恵をさらに長く享受できることです。
・複利効果を最大限に: iDeCo口座内で運用している間は、すべての運用益が非課税です。60歳以降も運用を継続することで、この非課税期間が延び、利益が税金で引かれずに再投資され続けるため、複利効果がさらに発揮されます。
・例: 60歳で1,500万円の資産があったとして、これをすぐに受け取らず、70歳まで年率3%で運用を継続した場合、約515万円(税引前)増える可能性があります。この約515万円が非課税で受け取れるのは大きなメリットです。
・受け取り時期の柔軟性: 市場が不安定な時期に無理に受け取りを開始せず、相場が回復してから受け取りを開始するといった、より有利なタイミングを選ぶことができます。
60歳以降の拠出と運用継続(制度変更予定も)
・掛金拠出期間: 現行制度では、掛金の拠出は原則65歳未満まで可能です。
・2025年度税制改正(予定): 2025年度税制改正大綱では、iDeCoの掛金拠出可能年齢が70歳未満まで延長されることが検討されています。これが実現すれば、60代後半もiDeCoで所得控除を受けながら積立を継続できる可能性が生まれます。
受け取り開始年齢の選択が税金や資産寿命に与える影響

iDeCoの受給開始年齢をいつにするかという選択は、将来の税負担や老後資金全体の「資産寿命」に大きく影響します。
税金への影響
iDeCoの受け取り方には「一時金」と「年金」があり、それぞれに退職所得控除や公的年金等控除が適用されます。受給開始年齢を調整することで、これらの控除を効率的に活用し、税負担を最適化できます。
退職金とのバランス:
・会社からの退職金とiDeCoの一時金を同年に受け取ると、控除枠を分け合ってしまい、税金がかかる可能性が高まります。
・賢い戦略: 公的年金の受給開始年齢(原則65歳)までiDeCoの受け取りを遅らせたり、退職金とiDeCoの一時金を受け取る時期をずらしたりすることで、退職所得控除の枠を最大限に活用し、税金を軽減できる可能性があります。特に、2026年1月からは、退職所得控除の「10年ルール」が適用される予定であり、退職金受給から10年経過後にiDeCoの一時金を受け取れば、より税制優遇が受けやすくなります。
公的年金とのバランス:
・iDeCoを年金形式で受け取る場合、公的年金と合計して公的年金等控除が適用されます。
・賢い戦略: 公的年金の受給額が少ない期間(例:60歳から65歳まで)にiDeCoの年金を受け取り、公的年金が始まる65歳以降はiDeCoの受け取りを停止する、または金額を減らすといった調整も可能です。
資産寿命への影響
資産寿命とは、老後資金が枯渇せずに、いつまで持ちこたえられるかを示す期間のことです。iDeCoの受給開始年齢を調整することは、資産寿命を延ばすことにつながります。
・運用期間の延長: 受け取り開始を遅らせて運用を継続すれば、資産がさらに増える可能性があるため、結果的に老後資金全体が長持ちします。
・必要な時に取り崩す: 60歳以降も運用を継続し、必要な時に必要な分だけiDeCo資産を取り崩していくことで、老後資金の「資産寿命」を柔軟に管理し、延ばすことができます。
・他の収入源との兼ね合い: 60歳以降も働く場合や、他の金融資産(NISA、貯蓄など)がある場合は、iDeCoの受け取りを遅らせて、それらの収入で生活費をまかない、iDeCo資産はさらに育てるといった戦略が有効です。
まとめ:iDeCoの受け取り開始年齢は「戦略的」に選ぶ
iDeCoの受給開始年齢は、原則60歳から最長75歳まで、あなたのライフプランや税制状況に合わせて柔軟に選択できる重要な要素です。
・60歳以降も運用を継続することは、非課税運用益を長く享受し、複利効果で資産をさらに増やせる大きなメリットがあります。
・受け取り開始年齢の選択は、退職金や公的年金とのバランスを考慮し、退職所得控除や公的年金等控除を最大限に活用することで、老後の税負担を最適化し、資産寿命を延ばすことができます。
iDeCoは、ただ積み立てるだけでなく、「どう受け取るか」という出口戦略まで含めて計画することが重要です。あなたの老後資金を最大限に有効活用し、安心で豊かなセカンドライフを築いていきましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。