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iDeCoで元本確保型商品を選ぶべき?安定志向のための活用術

「老後資金は減らしたくないけど、元本確保型だけで本当に大丈夫?」
「iDeCoのポートフォリオに元本確保型をどう組み込めばいいんだろう?」
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金を準備するための強力な制度ですが、「投資」という言葉に不安を感じ、元本割れのリスクを避けたいと考える方も少なくありません。そんな方にとって魅力的に映るのが、元本割れのリスクがない「元本確保型商品」です。
しかし、元本確保型商品にはメリットだけでなくデメリットもあり、ご自身の状況に合わせて賢く活用することが重要です。
この記事では、iDeCoにおける元本確保型商品(定期預金、保険)の仕組みとメリット・デメリットを詳しく解説します。さらに、金利・予定利率の確認方法や、ポートフォリオにおける元本確保型の役割まで、安定志向のあなたがiDeCoを最大限に活用するための具体的な戦略を提案します。
元本確保型商品(定期預金、保険)の仕組みとメリット・デメリット

iDeCoの運用商品には、大きく分けて「元本確保型商品」と「元本変動型商品(投資信託など)」があります。ここでは、元本確保型商品の特徴を見ていきましょう。
元本確保型商品の種類と仕組み
iDeCoの元本確保型商品には、主に以下の2種類があります。
【定期預金】
・仕組み: 金融機関に一定期間お金を預け、満期になると元本と決められた金利(利息)が戻ってくる商品です。預金保険制度の対象となるため、金融機関が破綻した場合でも、元本1,000万円とその利息が保護されます。
・特徴: 非常に安全性が高く、元本割れのリスクはほぼありません。しかし、その分金利は低く、大きなリターンは期待できません。
【保険(変額年金保険など)】
・仕組み: 保険会社が提供する年金保険で、運用実績によって将来受け取る年金額や解約返戻金が変動する「変額年金保険」と、運用実績にかかわらず一定の年金額が保証される「定額年金保険」があります。iDeCoで提供される保険は、多くの場合、元本確保型に分類される「定額年金保険」です。
・特徴: 元本を保証しつつ、定期預金よりはやや高い「予定利率」が設定されていることがあります。ただし、中途解約すると元本割れするリスクがある点や、手数料が定期預金より高めに設定されている場合がある点に注意が必要です。
元本確保型商品のメリット
・元本割れのリスクがない: 最も大きなメリットであり、投資初心者やリスクを避けたい方にとっては安心感が大きいです。
・価格変動に一喜一憂しない: 市場の変動を気にする必要がないため、精神的な負担が少ないです。
・老後資金計画が立てやすい: 将来の受け取り額がある程度予測できるため、老後資金計画が立てやすくなります。
元本確保型商品のデメリット
・リターンが低い: 元本が保証される分、期待できる運用益は非常に低いです。インフレが進むと、物価上昇に資産の増加が追いつかず、実質的な資産価値が目減りする「インフレリスク」があります。
・複利効果を活かしにくい: 運用益が少ないため、長期投資の最大のメリットである複利効果を十分に享受できません。
・手数料負担が相対的に大きく感じる: 運用益が少ないため、iDeCoの口座管理手数料などが相対的に重く感じられることがあります。
金利・予定利率の確認方法

元本確保型商品を選ぶ際には、その商品が提供する金利(定期預金)や予定利率(保険)をしっかり確認することが重要です。
提供金融機関のウェブサイトで確認
iDeCoの運営管理機関(証券会社や銀行など)は、それぞれ異なる元本確保型商品を提供しています。各運営管理機関のウェブサイトで、取り扱っている定期預金や保険商品の金利・予定利率を確認しましょう。
金利・予定利率の変動に注意
定期預金の金利や保険の予定利率は、経済状況や市場金利の動向によって変動することがあります。特に、定期預金は満期ごとに金利が見直されるのが一般的です。長期で運用する場合、途中で金利が下がってしまう可能性も考慮に入れる必要があります。
複数の運営管理機関を比較検討する
iDeCoの運営管理機関によって、提供される元本確保型商品の金利や種類が異なります。口座開設前に複数の金融機関を比較し、より有利な条件の元本確保型商品を提供しているところを選ぶのが賢明です。
ポートフォリオにおける元本確保型の役割

元本確保型商品は、そのメリット・デメリットを理解した上で、iDeCoのポートフォリオにおいて重要な役割を果たすことができます。
リスク許容度に応じた活用
・リスクを極力取りたくない場合: 投資初心者で元本割れがどうしても嫌な方、あるいは老後までの期間が短く、大きな損失を避けたい50代後半の方などは、ポートフォリオの大部分を元本確保型で構成することも選択肢の一つです。
・一部に組み込む場合: 投資信託などの元本変動型商品を中心に運用しつつ、ポートフォリオの一部(例えば20%〜30%)を元本確保型にすることで、全体の価格変動リスクを抑え、安定性を高めることができます。
運用期間に応じたシフト
・若年層(20代・30代): 運用期間が長く、リスクを取る余裕があるため、基本的には元本変動型(投資信託)を中心に据え、大きなリターンを目指すのが一般的です。元本確保型は、ポートフォリオの安定化のためにごく一部組み込む程度が良いでしょう。
・中年層(40代): 運用期間が短くなり始めるため、リスク許容度を見直し、徐々に元本確保型の比率を増やしていくことを検討し始めます。
・高齢層(50代後半〜): リタイアが近づき、資産を減らしたくない時期です。この時期には、元本確保型へのスイッチングを積極的に検討し、運用益を確定させ、資産を守る戦略が有効です。
スイッチングによる戦略的な活用
iDeCoでは、運用商品を途中で変更する「スイッチング」が可能です。この機能を使って、ご自身のライフステージや市場環境の変化に合わせて、元本確保型と元本変動型の間で資産配分を調整しましょう。
・市場が不安定な時期: 一時的に元本確保型に避難させ、市場の回復を待つといった戦略も考えられます。
・リタイア直前: 運用益が大きく出ている場合、その利益を確定させるために元本確保型にスイッチングし、元本割れのリスクを回避することができます。
まとめ:元本確保型は「安定」と「安心」のための選択肢
iDeCoにおける元本確保型商品は、元本割れのリスクがないという最大のメリットがある一方で、リターンが低いというデメリットも持ち合わせています。
・元本確保型は、リスクを避けたい方や、運用期間が短い方にとって有効な選択肢です。
・金利や予定利率をしっかり確認し、複数の金融機関を比較検討しましょう。
・ポートフォリオ全体の中で、ご自身のライフステージやリスク許容度に応じた役割を持たせ、必要に応じてスイッチングを活用することが重要です。
元本確保型商品だけで老後資金の目標を達成するのが難しい場合もありますが、賢く活用することで、iDeCoで安心して老後資金を準備するための強力なツールとなるでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています