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iDeCoで老後資金はいくら準備できる?公的年金の不足額から掛金を設計する方法

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛金の全額所得控除・運用益非課税・受取時の税制控除という3段階の税制優遇を受けながら老後資金を準備できる制度です。ただし、iDeCoには掛金の上限があるため、老後資金をすべてiDeCoだけで賄えるとは限りません。この記事では、公的年金の不足額を把握したうえで、iDeCoで準備できる金額を現実的にシミュレーションし、不足分をどう補うかまでを解説します。
出典:iDeCo公式サイト「iDeCoってなに?」
まず公的年金の不足額を把握する

iDeCoの掛金を設計するには、「iDeCoでいくら準備すべきか」という目標額が必要です。この目標額は、公的年金でカバーできない老後の不足額から導き出します。
ねんきん定期便・ねんきんネットで年金見込額を確認する
50歳以上の方に届く「ねんきん定期便」には年金見込額が記載されています。50歳未満の方はねんきんネットでシミュレーションが可能です。老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計で月にいくら受け取れるかを確認しましょう。
出典:日本年金機構「ねんきんネット」
不足額の概算例
たとえば希望する老後の月の生活費が25万円で、公的年金の見込額が月16万円の場合、月9万円の不足が生じます。65歳から90歳までの25年間で計算すると、不足額の総額は約2,700万円です。ここから退職金を差し引いた金額が、iDeCo+NISAなどで準備すべき目標額になります。
iDeCoの掛金上限で準備できる金額をシミュレーションする

iDeCoには職業ごとに掛金の上限があるため、上限いっぱいまで拠出した場合にどれだけ準備できるかを把握しておくことが重要です。以下は会社員(企業年金なし)が現行の上限月2.3万円を拠出し、年率3%で運用した場合の試算になります。
・25歳から35年間:最終資産額 約1,706万円
・35歳から25年間:最終資産額 約1,026万円
・45歳から15年間:最終資産額 約522万円
※上記は積立投資の複利計算式による概算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。年率5%で運用できた場合は、35年間で約2,613万円、25年間で約1,370万円、15年間で約615万円になる計算です。
このシミュレーションからわかるように、iDeCoの現行上限(月2.3万円)だけでは老後の不足額をすべてカバーするのは難しいケースが多くなります。特に30代以降から始める場合は、NISAなど他の手段との併用が現実的でしょう。
2026年12月からの掛金上限引き上げで状況が変わる
年金制度改正法(2025年6月公布)により、会社員(企業年金なし)のiDeCo掛金上限は2026年12月から月6.2万円に引き上げられます。月6.2万円を年率3%で25年間運用した場合、最終資産額は約2,765万円になる計算です。掛金上限の引き上げにより、iDeCo単独でも不足額の多くをカバーできる可能性が広がります。
iDeCoだけでは足りない場合の補い方

iDeCoの掛金上限だけでは不足額をカバーできない場合、以下の方法で補完します。
NISAのつみたて投資枠を活用する
NISAはいつでも引き出し可能で、運用益が非課税です。iDeCoの掛金上限を使い切ったうえで、余裕資金をNISAのつみたて投資枠(年間120万円)に回すことで、老後資金をさらに積み増せます。NISAには掛金の所得控除はありませんが、流動性が高いため、老後以外の目的(教育資金・住宅資金)にも対応できる柔軟さがあります。
公的年金の繰下げ受給を検討する
公的年金の受給開始を65歳から遅らせる「繰下げ受給」を選択すると、1か月あたり0.7%、最大で84%(75歳まで繰下げた場合)の増額が受けられます。月16万円の年金を70歳まで繰り下げると、増額率は42%(0.7%×60か月)で月約22.7万円に増額される計算です。不足額(月9万円)が月約2.3万円に縮小するため、老後の資金計画に余裕が生まれるでしょう。
出典:日本年金機構「年金の繰下げ受給」
退職金の有無と金額を確認する
退職金がある場合、不足額からその分を差し引けるため、iDeCo+NISAで準備すべき金額は小さくなります。勤務先の退職金制度を確認し、見込額を把握しておきましょう。ただし、退職金とiDeCoの一時金を受け取る間隔が10年以内の場合は退職所得控除の調整がある(2026年1月以降の受取分から適用)ため、受取時期の設計も重要です。
まとめ|公的年金の不足額を把握し、iDeCo+NISAで計画的に準備する
iDeCoでの老後資金準備について整理すると、以下のようになります。
・まずねんきん定期便やねんきんネットで公的年金の見込額を確認し、老後の不足額を把握する
・iDeCoの現行上限(会社員・企業年金なしで月2.3万円)を年率3%で25年間運用した場合、最終資産額は約1,026万円。不足額全額をiDeCoだけでカバーするのは難しいケースもあるが、25歳から始めれば35年間で約1,706万円に達する
・2026年12月からの掛金上限引き上げ(月6.2万円)により、iDeCo単独でも準備できる金額が拡大する
・不足分はNISAのつみたて投資枠で補完する。公的年金の繰下げ受給で不足額そのものを縮小する方法も有効
・退職金の有無を確認し、iDeCo一時金との受取間隔(10年ルール)を考慮した設計を行う
iDeCoは税制優遇が手厚い老後資金の中核的な制度ですが、掛金上限がある以上、公的年金・NISA・退職金・繰下げ受給を組み合わせた総合的な設計が不可欠です。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しました。執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



