火災保険
保険の重複と補償不足に注意!損害保険の落とし穴と正しい見直し方

損害保険は実際の損害額までしか保険金を受け取れないため、同じ補償内容の保険に重複加入しても保険料が無駄になる可能性があります。一方で、補償内容を十分に確認しないまま加入すると、いざという時に必要な補償が受けられないケースも起こり得ます。
近年はインターネットやSNSを通じて手軽に保険に加入できる環境が整い、選択肢は広がりました。しかし、その手軽さゆえに、既存の保険との補償の重複や、必要な補償の欠落に気づかないまま契約してしまう事例も見受けられます。
この記事では、損害保険の重複で保険料が無駄になるケースと、火災保険で補償不足に陥りやすいポイントを整理し、保険の見直しに役立つチェックポイントを紹介します。
損害保険の「重複加入」で保険料が無駄になるケース

損害保険は実際の損害額を上限に保険金が支払われるため、同じ補償を複数持っていても二重には受け取れません。
生命保険と損害保険では、重複加入した場合の保険金の扱いが異なります。この違いを押さえておくことが、保険料の無駄を防ぐ第一歩となるでしょう。
生命保険と損害保険では重複加入の扱いが異なる
「保険に複数加入していれば、保険金も倍額受け取れる」と考えている方は少なくありませんが、これは生命保険に限った話であり、損害保険には当てはまりません。
生命保険(死亡保険や医療保険など)は「定額保険」に分類され、複数の保険に加入していれば、それぞれの契約から保険金を受け取ることが可能です。一方、損害保険は「実損填補」が原則であり、実際に生じた損害額までしか保険金は支払われません。これは保険法第20条(重複保険)に基づく仕組みです。
たとえば、火災で建物に2,000万円の損害が発生した場合を考えてみましょう。保険金額2,000万円の火災保険に2つ加入していたとしても、受け取れる保険金の合計は実際の損害額である2,000万円が上限となります。保険金額の合計4,000万円を受け取れるわけではないのです。
日本損害保険協会も、火災保険は「財物に生じた実際の損害額に対し保険金を支払う保険」であり、「損害額を超える保険金を取得するような不当利得は認められていない」と説明しています。つまり、損害保険の重複加入は、片方の保険料がそのまま無駄になる可能性が高いといえるでしょう。
出典:日本損害保険協会「損害保険Q&A 問57 重複保険の保険金支払い」
個人賠償責任保険は重複しやすい特約の代表例
損害保険の重複で特に注意が必要なのが、個人賠償責任保険(特約)の重複加入でしょう。
個人賠償責任保険は、日常生活で他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりした場合の賠償責任をカバーする保険で、火災保険・自動車保険・傷害保険などの特約として付帯されていることが多いものです。さらに、クレジットカードの付帯保険に含まれているケースもあります。
現在、自転車損害賠償責任保険等の加入を条例で義務化している都道府県は34に上り、努力義務としている道県を含めると44都道府県に達しています(国土交通省調べ)。この義務化に伴い、自転車保険に新たに加入する方が増えていますが、既に火災保険や自動車保険の特約で個人賠償責任保険に加入しているにもかかわらず、別途自転車保険に加入してしまい、補償が重複しているケースが散見されます。
個人賠償責任保険は実損填補型の保険であるため、複数加入していても受け取れる保険金は実際の損害額が上限です。補償金額が1億円以上の契約が1つあれば、多くの場合は十分でしょう。新たに保険に加入する前に、既存の保険契約の特約内容を確認することが重要です。
出典:国土交通省「自転車損害賠償責任保険等への加入促進について」
無駄な保険料の使い道を見直す
補償が重複している保険が見つかった場合は、一方を解約して保険料の負担を減らすことを検討しましょう。ただし、解約の際は示談交渉サービスの有無や補償範囲の違いを比較したうえで、より有利な契約を残すことが大切です。
浮いた保険料を家計の改善や将来の資産形成に振り向けるという選択肢も、合理的な判断のひとつといえます。
火災保険で「補償不足」に陥りやすい落とし穴

火災保険は火災だけでなく、風災・水災・水濡れ・盗難など幅広い損害をカバーする保険ですが、補償内容を十分に確認しないまま加入すると思わぬ落とし穴があります。
特に見落としがちなポイントを確認しておきましょう。
火災保険は「火事以外」の損害で使われることが多い
「火災保険は火事の時に使う保険」というイメージを持つ方は多いかもしれませんが、実際には火災以外の原因で保険金が支払われるケースの方が多い傾向にあります。
日本損害保険協会の資料によると、自然災害による火災保険の保険金支払いは風災と水災が中心です。2018年度・2019年度には、台風や豪雨による被害を中心に、2年連続で自然災害の保険金支払いが1兆円を超えました。また、給排水設備の事故による水濡れ(凍結や配管破損による漏水など)も、保険金が支払われる事例として多く発生しています。
こうした実態を知らないまま「火事さえカバーできればよい」と考え、風災や水災、水濡れの補償を外してしまうと、実際に損害が発生した際に保険金を受け取れないことになります。特に水害リスクの高い地域に住んでいるにもかかわらず水災補償を対象外にしてしまうケースは、安易な自己判断による典型的な失敗例といえるでしょう。
出典:日本損害保険協会「火災保険における保険金支払いと収支の状況等」(金融庁 火災保険水災料率に関する有識者懇談会 資料)
賃貸住宅で見落としがちな「借家人賠償責任保険」
賃貸アパートやマンションに住む場合に特に注意したいのが、借家人賠償責任保険の付帯漏れでしょう。
賃貸住宅の火災保険において最も重要な役割を果たすのは、入居者自身の家財補償ではなく、借りている部屋に損害を与えてしまった場合に大家(貸主)に対する賠償責任をカバーする借家人賠償責任保険です。大家が入居者に火災保険への加入を求める主な理由も、この補償にあります。
「保険料を安くしたい」という理由で火災保険の補償内容を絞る際に、借家人賠償責任保険を外してしまうと、賃貸借契約上の義務を果たせなくなる可能性があります。契約違反とみなされれば、大家から再加入を求められたり、場合によっては退去を求められたりする事態にもなりかねません。
保険料を抑えたい場合は、借家人賠償責任保険を維持したまま、家財の補償額を必要最小限に設定するなど、優先順位をつけた見直しを検討しましょう。
保険の重複・不足を防ぐためのチェックポイント

保険は加入して終わりではなく、定期的に補償内容を確認し、ライフスタイルの変化に合わせて見直すことが大切です。
以下の3つのポイントを意識して、保険の見直しに役立てましょう。
既存の保険契約との補償の重複がないか確認する
新たに保険に加入する前に、まず手元にある保険証券やWebの契約内容を確認しましょう。特に個人賠償責任保険は、火災保険・自動車保険・傷害保険・クレジットカードの付帯保険など、複数の契約に付帯されている可能性が高い特約です。補償内容が重複していないかを一覧にして整理すると、無駄な保険料を発見しやすくなります。
必要な補償が網羅されているか見直す
保険料を安くすることだけに注目すると、肝心な補償を外してしまうリスクがあります。火災保険であれば風災・水災・水濡れの補償が含まれているか、賃貸住宅であれば借家人賠償責任保険が付帯されているかを確認しましょう。ハザードマップで自宅周辺の水害リスクを確認したうえで、水災補償の要否を判断することも有効です。
保険契約の内容を正しく理解する
保険金の支払い条件や免責事項は、商品によって異なります。「いざという時に保険金が支払われなかった」という事態を避けるためにも、契約前に約款や重要事項説明書の内容を確認しておくことが欠かせません。不明点がある場合は、保険会社や代理店に問い合わせるか、ファイナンシャルプランナー(FP)に相談するのもひとつの方法でしょう。
よくある質問

保険の重複や補償不足に関してよく寄せられる疑問に回答します。
Q. 損害保険に重複加入していた場合、保険金はどのように支払われますか?
保険法第20条に基づき、重複保険の場合でも各保険会社はそれぞれの契約に基づく保険金の支払い義務を負います。ただし、受け取れる保険金の合計は実際の損害額が上限です。1つの保険会社に請求すれば、その契約の保険金額の範囲内で損害額の全額が支払われ、保険会社間で負担割合の調整が行われる仕組みとなっています。
Q. 自転車保険の義務化に対応するには、別途自転車保険に入る必要がありますか?
必ずしも「自転車保険」という名称の保険に加入する必要はありません。火災保険や自動車保険の特約として個人賠償責任保険に加入していれば、自転車事故の賠償責任もカバーされます。まずは既存の保険契約に個人賠償責任保険が含まれていないかを確認し、含まれている場合は補償金額や示談交渉サービスの有無を確認するのがよいでしょう。
Q. 賃貸住宅の火災保険で最低限必要な補償は何ですか?
賃貸住宅の火災保険で最も優先度が高いのは借家人賠償責任保険です。これは、借りている部屋に損害を与えた場合の大家への賠償責任をカバーするもので、多くの賃貸借契約で加入が求められています。加えて、日常生活で他人に損害を与えた場合に備える個人賠償責任保険と、自身の家財を守る家財補償があると安心でしょう。
まとめ
インターネットやSNSを通じて気軽に保険に加入できるようになった一方で、既存の保険との補償の重複や、必要な補償の不足に気づかないまま契約してしまうリスクも高まっています。
特に損害保険は、生命保険と異なり実際の損害額までしか保険金を受け取れないため、同じ補償内容の保険に重複加入しても保険料が無駄になるだけです。一方で、保険料を抑えることばかりを優先して借家人賠償責任保険や水災補償を外してしまうと、いざという時に補償を受けられない事態を招きかねません。
既存の保険契約の補償内容を定期的に確認し、重複は整理し、不足は補うという意識を持つことが、保険を有効に活用するための基本といえるでしょう。
お金に関する相談はファイナンシャルプランナーの金子賢司まで。日本FP協会の「CFP®認定者検索システム」、またはJ-FLEC(金融経済教育推進機構)のサイトの、J-FLEC認定アドバイザー検索で検索することも可能です。北海道エリアに絞って検索していただくと容易に検索できます。



