生命保険
DINKS夫婦に生命保険は必要?遺族年金の盲点とペアローンのリスクから考える保障設計

DINKS(共働き・子なし)夫婦は、双方に収入があるため「死亡保険は不要」と考えがちですが、公的保障の仕組みを確認すると必ずしもそうとは言い切れません。子のいない夫婦は遺族基礎年金を受け取れず、住宅ローンをペアローンで組んでいる場合は団信で消えるのは亡くなった方のローンだけという盲点もあります。この記事では、DINKS夫婦が公的保障の制約とライフスタイルを踏まえて、合理的な保障設計を組み立てるための判断基準を解説します。
DINKSが見落としやすい遺族年金の制約

DINKS夫婦が死亡保障の要否を判断するうえで、まず把握すべきなのは遺族年金の受給条件です。子どもの有無によって受け取れる金額が大きく変わる仕組みになっています。
遺族基礎年金は「子のある配偶者」のみが対象
遺族基礎年金は、亡くなった方に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」のみが受給対象です。ここでいう「子」とは、18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある方を指します。子どものいないDINKS夫婦は、遺族基礎年金(令和7年度:年額約83万円+子の加算)を受け取ることができません。
出典:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」
遺族厚生年金は受給できるが条件がある
一方、遺族厚生年金は子のない配偶者でも受給可能ですが、以下の条件に注意しましょう。
・子のない30歳未満の妻:受給期間は5年間の有期給付に限られる
・子のない夫:死亡当時55歳以上であることが条件で、受給開始は原則60歳から
・年金額は、亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3で計算される
たとえば、亡くなった方の報酬比例部分が年額80万円の場合、遺族厚生年金は年額約60万円(月額約5万円)となります。DINKS夫婦の生活水準を維持するうえで十分な金額かどうかは、残された側の収入や固定費と照らし合わせて判断する必要があるでしょう。
出典:日本年金機構「遺族年金ガイド(令和7年度版)」(PDF)
ペアローンの団信は「片方のローン」しか消えない

DINKS夫婦で住宅を購入する際、双方の収入を活かしてペアローンを利用するケースが増えています。ペアローンは住宅ローン控除を夫婦それぞれで受けられるメリットがありますが、団信の仕組みに盲点があります。
団信でカバーされるのは亡くなった方の契約分のみ
ペアローンでは、夫婦がそれぞれ別々の住宅ローンを契約し、それぞれが団信に加入します。どちらかが亡くなった場合、団信で完済されるのは亡くなった方のローン残高だけであり、残された方のローン返済はそのまま続きます。
たとえば、夫が2,500万円・妻が2,500万円のペアローンを組んでいる場合、夫が亡くなると夫の2,500万円は団信で完済されますが、妻の2,500万円のローン返済は継続する仕組みです。一人の収入で住宅ローンの返済と生活費を賄えるかどうかが問題になります。
対策は「民間保険」か「連生団信」
この問題への対策としては、主に2つの方法があります。
・定期保険や収入保障保険で、残された方のローン残高をカバーできる保障を確保する
・ペアローン連生団信を利用する(2024年6月にPayPay銀行が銀行初のサービスを開始し、その後取扱金融機関が増えつつある。金利の上乗せが必要)
ペアローンを組んでいるDINKS夫婦は、「団信に入っているから安心」と考えず、残された側のローン返済まで含めた保障の全体像を確認しておくことが重要です。
死亡保障が不要なケースと必要なケースの判断基準

DINKS夫婦の死亡保障の要否は、遺族年金の受給見込みと住居費の負担を踏まえて判断しましょう。以下に、判断基準の目安を整理します。
死亡保障の優先度が低いケース
・残された側の収入だけで現在の生活費と住居費を十分にカバーできる
・住宅ローンを単独名義で借りており、団信で全額完済される
・十分な預貯金・運用資産があり、収入の減少を一定期間吸収できる
このような状況であれば、高額な死亡保障は不要でしょう。葬儀費用(一般的に100万〜200万円程度)を預貯金で準備できれば、死亡保険に加入しないという選択も合理的です。
死亡保障を検討すべきケース
・ペアローンを組んでおり、片方が亡くなると残された側のローン返済が困難になる
・一方の収入に偏りがある場合(収入の高い側が亡くなると生活水準を維持できない)
・遺族厚生年金の受給額だけでは生活費の不足額が大きい
DINKS夫婦の場合、子育て世代のように長期間の保障は不要なケースが多いため、定期保険で必要な期間だけ保障を確保するのが合理的な選択肢です。終身保険に比べて保険料が抑えられるため、家計への負担も軽減できます。
医療保険の要否|高額療養費制度を踏まえた判断

医療保険については、公的医療保険の高額療養費制度の自己負担上限を把握したうえで判断することが重要です。
月の医療費自己負担には上限がある
69歳以下で年収約370万〜約770万円の区分の場合、ひと月の自己負担限度額は80,100円+(総医療費−267,000円)×1%で計算されます。医療費の総額が100万円かかっても、自己負担は約87,430円にとどまる計算です。さらに直近12か月で3回以上制度を利用した場合は「多数回該当」となり、4回目以降の上限は44,400円に引き下げられます。
出典:厚生労働省「高額療養費制度について」(PDF)
DINKS夫婦は預貯金でカバーしやすい
子育て費用がかからないDINKS夫婦は、家計に余裕があるケースが多いでしょう。月約8万円+αの自己負担と対象外費用(差額ベッド代・先進医療費等)を預貯金で対応できる状態であれば、医療保険の優先度は低くなります。その分を資産形成に回すことで、将来の選択肢を広げることができます。
保険料を抑えた分は資産形成に回す

DINKS夫婦は、保険を必要最小限に抑えたうえで、浮いた資金をiDeCoやNISAで運用する戦略が合理的です。
「掛け捨て+資産形成」の組み合わせ
貯蓄型の終身保険や養老保険は保障と貯蓄を兼ねていますが、保険料が割高で、運用効率はiDeCoやNISAに比べると低い傾向にあります。必要な保障は掛け捨ての定期保険で安価に確保し、残りの資金をiDeCoやNISAに回す方が、保障と資産形成を効率よく両立できるでしょう。
iDeCoとNISAの活用
・iDeCo:掛金が全額所得控除、運用益が非課税、受取時にも税制優遇が受けられる制度。夫婦それぞれが加入すれば世帯全体の所得控除を最大化できる
・NISA:運用益が非課税で、非課税保有限度額が1,800万円。iDeCoの掛金上限を超えてさらに資産を積み増す場合に活用できる
いずれの制度も元本保証ではなく、運用成果によっては損失が生じる可能性があります。リスク許容度に応じた商品選びが欠かせません。
まとめ|DINKS夫婦の保障設計は「公的保障の盲点」から組み立てる
DINKS夫婦の保障設計は、「共働きだから保険は不要」と一律に判断するのではなく、公的保障の制約を正確に把握したうえで、足りない部分だけを民間保険で補う考え方が合理的です。
・子のいないDINKS夫婦は遺族基礎年金を受け取れない。遺族厚生年金のみが頼りとなる
・遺族厚生年金は報酬比例部分の4分の3で計算され、子なし30歳未満の妻は5年間の有期給付に限られる
・ペアローンの団信は亡くなった方のローンしか消えない。残された側のローン返済まで含めた保障設計が必要
・高額療養費制度の自己負担上限(月約8万円+α)を預貯金でカバーできるなら、医療保険の優先度は低い
・保険は必要最小限の掛け捨てに抑え、浮いた資金はiDeCoやNISAでの資産形成に回す方が効率的
まずは遺族年金の受給見込み額と住宅ローンの契約形態を確認し、現在の保障で不足がないかを点検してみましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆した記事です。執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



