FPによる貸金業法学習記録
貸金業における監督処分:登録取消し・業務停止命令などの行政措置

この記事は、CFPが2025年11月16日実施の貸金業務取扱主任者を目指すために、自身の勉強記録として残すブログです。
「※本記事は筆者の学習記録であり、その内容の正確性には万全を期しておりますが、法令改正等により変更される可能性があります。実際の業務や判断においては、必ず最新の法令や専門家の助言を確認してください。
貸金業を営む者は、資金需要者等の利益の保護や、国民経済の健全な発展に寄与するという重要な社会的使命を負っている。そのため、内閣総理大臣または都道府県知事(以下「監督当局」という)は、登録を受けた貸金業者に対し、その業務の適正な運営を確保するために様々な監督処分を行う権限を有している。
監督処分とは:業務改善命令・業務停止命令・登録取消し
監督処分は、貸金業者の違反行為や不適切な業務運営に対し、その是正を図るために行われる行政処分である。処分の種類や重さは、違反の内容や程度に応じて異なる。
業務改善命令
監督当局は、その登録を受けた貸金業者の業務の運営に関し、資金需要者等の利益の保護を図るために必要と認めるときは、必要の限度において、その貸金業者の業務の方法の変更や改善に必要な措置を命じることができる。これは、比較的軽微な問題や、将来的な問題の発生を予防するために行われる処分である。
業務停止命令および登録取消し(任意的処分)
監督当局は、以下に掲げるいずれかの事由に該当する場合、その貸金業者の登録を取り消すことができる。または、1年以内の期間を定め、その業務の一部または全部の停止を命じることができる。これらは、業務改善命令よりも重い処分であり、特に登録取消しは貸金業の継続を許さない最も重い処分となる。
・営業所等について、貸金業務取扱主任者の設置義務の要件である営業所ごとに従業員50人に1人を欠くとき
・純資産額が5000万円に満たないとき
・貸金業を的確に営むための体制が整備されていないと認められるとき
・ほかに営む業務が公益に反すると認められたとき
・貸金業の業務に関し、法令または処分に違反したとき
・取り立て制限者であることを知りながら、債権譲渡など、保証契約の締結、債務の弁済の委託をしたとき
・債権譲渡など、保証契約の締結、債務の弁済の委託をした場合で、相手方が取り立て制限者であったことを知らなかったことについて、相当な理由があることを証明できず、なおかつ相手が刑法、暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したとき
・債権譲渡などを受けた者、保証業者・受託弁済者が貸金業者と密接な関係を有する場合で、その者が取り立てをする際に取り立て行為の規制に違反した、あるいは刑法、暴力行為等法律の罪を犯したとき、そのようなことをしないよう、貸金業者が相当の注意を払ったことを証明できない場合
・出資法、または暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反したとき
役員解任命令
監督当局は、登録を受けた貸金業者の役員が上記の登録取消し・業務停止事由のうち、「貸金業の業務に関し、法令または処分に違反したとき」から「出資法、または暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反したとき」までのいずれかに該当することになったとき、貸金業者に対し、その役員の解任を命じることができる。
登録取消しが義務付けられる「必要的取消し事由」
上記で述べた登録取消し事由は、監督当局の裁量で取消しまたは業務停止処分を選択できるが、以下の事由に該当する場合は、監督当局は必ず登録を取り消さなければならない(必要的取消し)とされている。
・その登録を受けた貸金業者が、登録拒否事由に該当することとなったとき
・登録換えに関する規定に違反したとき
・不正の手段により登録を受けたとき
・名義貸しをしたとき
・暴力団員を業務に従事させたり補助者として使用したとき
業務を行わない場合の登録取消し
業務の適切な運営以外にも、登録を受けた貸金業者が業務を行わない状態が続いた場合にも、監督当局は登録を取り消すことができる。
・正当な理由がないのに、その登録を受けた日から6ヶ月以内に貸金業を開始しないとき
・引き続き6ヶ月以上貸金業を休止したとき
所在不明者の登録取消しと登録の抹消
監督当局は、登録を受けた貸金業者の所在を確認できないとき、その事実を公告し、公告の日から30日を経過してもその貸金業者から申し出がないときは、登録を取り消せる。
登録の抹消
監督当局は、貸金業者の登録が効力を失ったときや、登録を取り消したときは、その貸金業者の登録を貸金業者登録簿から抹消しなければならない。
監督処分の手続きと公告
監督処分を行うにあたっては、適正な手続きが求められる。
聴聞
監督処分(登録取消しや業務停止命令など)の手続きでは、処分を受ける貸金業者の言い分を聞くための聴聞が行われる。ただし、所在不明者に対する登録の取消しの場合は、実質的に呼び出すことが不可能なため、聴聞手続きは不要である。
処分の公告
監督当局は、登録取消し処分や業務停止処分をしたときは、その旨を公告しなければならない。これにより、広く一般にその事実が知らされることになる。一方、業務改善命令や役員解任命令の場合は、公告は不要である。