税金(一般的な内容)
社会保険料控除とは?対象となる保険料・控除額・年末調整と確定申告の手続きをわかりやすく解説

社会保険料控除とは、健康保険や国民年金などの社会保険料を支払った場合に、支払った全額がそのまま所得から控除される所得控除の一つです。生命保険料控除や地震保険料控除には上限額がありますが、社会保険料控除には上限が設けられていません。また、本人の保険料だけでなく、生計を一にする配偶者や親族の保険料を支払った場合にも適用されます。この記事では、国税庁の公式情報をもとに、対象となる保険料の種類から控除額の考え方、年末調整・確定申告での手続きまで解説していきましょう。
社会保険料控除の仕組みと他の保険料控除との違い

社会保険料控除は所得控除16種類のうちの一つで、支払った社会保険料の全額が控除される点が特徴です。
国税庁のタックスアンサーNo.1130によると、社会保険料控除とは「納税者が自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合」に適用される所得控除を指します。控除できる金額は、その年に実際に支払った金額または給与や公的年金から差し引かれた金額の全額と定められています。
生命保険料控除(所得税で最大12万円)や地震保険料控除(所得税で最大5万円)と異なり、社会保険料控除には控除額の上限がありません。年間で50万円の社会保険料を支払えば50万円全額が控除され、100万円であれば100万円がそのまま控除の対象です。
社会保険料控除の対象となる14種類の保険料

社会保険料控除の対象は健康保険や年金保険料だけではなく、国税庁では14種類が定められています。
主な対象保険料を確認していきましょう。
会社員が給与から天引きされる社会保険料
会社員の場合、以下の保険料が毎月の給与から差し引かれており、すべて社会保険料控除の対象となります。
・健康保険料(被保険者として負担する分)
・厚生年金保険料(被保険者として負担する分)
・雇用保険料(被保険者として負担する分)
・介護保険料(40歳以上65歳未満の方)
これらは給与明細に記載されており、勤務先が年末調整で自動的に控除を適用するため、原則として本人による申告手続きは不要です。
自営業者・フリーランスが自分で支払う社会保険料
自営業者やフリーランスの方は、以下の保険料を自分で納付するため、確定申告で控除を受ける必要があります。
・国民年金保険料(令和7年度:月額17,510円、年額210,120円)
・国民健康保険料(税)
・国民年金基金の掛金
・介護保険料(65歳以上の方が納付書で支払う場合)
国民年金保険料は令和7年度で月額17,510円であり、12か月分を年間で支払うと210,120円の全額が所得から差し引かれることになります。
出典:厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
その他の対象保険料
上記以外にも、以下の保険料が社会保険料控除の対象です。
・後期高齢者医療制度の保険料(75歳以上の方)
・農業者年金の保険料
・存続厚生年金基金の掛金
・公務員共済組合の掛金
・労災保険の特別加入者が負担する保険料
家族の分の社会保険料も控除できる「生計を一にする」要件

社会保険料控除は本人分だけでなく、生計を一にする配偶者や親族の保険料を支払った場合にも適用されます。
たとえば、20歳になった子どもの国民年金保険料を親が代わりに支払った場合、親の社会保険料控除として申告できます。国民年金保険料は年額約21万円のため、親の所得税率が20%であれば、所得税で約4万2,000円、住民税で約2万1,000円、合計で約6万3,000円の節税効果が見込めるでしょう。
ただし、注意が必要なケースもあります。
年金から天引きされた保険料の取り扱い
配偶者や親族の公的年金から特別徴収(天引き)された介護保険料や後期高齢者医療保険料は、年金の受給者本人が支払ったものとみなされます。たとえ生計を一にしていても、年金から天引きされた保険料を他の家族の控除として申告することはできません。
一方、口座振替で支払った場合は、口座名義人の社会保険料控除として申告が可能です。夫の口座から妻の後期高齢者医療保険料を引き落とせば、夫の控除として使えるため、世帯全体の税負担を軽くできるケースがあります。
社会保険料控除による節税効果の計算例

社会保険料控除は全額控除のため、支払額が大きいほど節税効果も高くなります。具体的な計算例で確認していきましょう。
会社員(年収500万円)の場合
年収500万円の会社員が年間約72万円の社会保険料を負担しているケースを想定します。
・健康保険料:約25万円(協会けんぽ・東京都の場合)
・厚生年金保険料:約45万円
・雇用保険料:約3万円
・合計:約73万円
所得税率10%の場合、社会保険料控除による節税効果は所得税で約7万3,000円、住民税(税率一律10%)で約7万3,000円、合計で約14万6,000円の税負担軽減となります。会社員の場合はこの控除が年末調整で自動的に反映されています。
自営業者(所得400万円)の場合
自営業者が国民年金保険料と国民健康保険料を合わせて年間約60万円を支払ったケースを見てみましょう。
・国民年金保険料:約21万円(令和7年度の年額)
・国民健康保険料:約39万円(所得や自治体によって異なる)
・合計:約60万円
所得税率20%の場合、所得税で約12万円、住民税で約6万円、合計で約18万円の節税効果が期待できます。確定申告で漏れなく申告することが重要になるでしょう。
年末調整での社会保険料控除の手続き

会社員の方は、年末調整で社会保険料控除の申告を行います。ただし、給与天引き分とそれ以外で手続きが異なる点に注意が必要です。
給与天引き分は申告不要
毎月の給与や賞与から差し引かれた健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料は、勤務先が金額を把握しているため、本人が申告する必要はありません。年末調整で自動的に控除が適用されます。
給与天引き以外の保険料は申告が必要
以下のような場合は、「給与所得者の保険料控除申告書」に記入して勤務先に提出する必要があります。
・子どもの国民年金保険料を親が支払った場合
・配偶者の国民年金保険料を負担した場合
・転職の空白期間に国民健康保険料や国民年金保険料を自分で支払った場合
申告書には、保険料の種類、支払先、支払金額を記入しましょう。国民年金保険料と国民年金基金の掛金については、日本年金機構等から届く「社会保険料控除証明書」の添付が必要です。国民健康保険料や介護保険料については、証明書の添付は求められていません。
確定申告での社会保険料控除の手続き

自営業者やフリーランスの方、年金受給者の方は、確定申告で社会保険料控除を申告します。
確定申告書への記入方法
確定申告書第一表の「社会保険料控除」欄に、1年間に支払った社会保険料の合計額を記入します。第二表には、保険料の種類ごとに支払先と金額の内訳を記載する必要があります。
添付書類
国民年金保険料と国民年金基金の掛金については、控除証明書の添付または提示が必要です。控除証明書は毎年10月〜11月頃に日本年金機構から届くほか、マイナポータル連携を利用すればe-Taxでの電子提出も可能になっています。
国民健康保険料や介護保険料については証明書の添付は不要ですが、支払額を正確に把握するために、自治体から届く納付額通知書を保管しておくとよいでしょう。
社会保険料控除を最大限に活用するためのポイント

社会保険料控除は全額控除という強力な仕組みであるものの、活用方法によって節税効果に差が出る場合があります。実務上、押さえておきたいポイントを整理しましょう。
国民年金保険料の「前納制度」で割引と控除を同時に得る
国民年金保険料には、まとめて支払うことで保険料が割引される「前納制度」があります。口座振替による2年前納の場合、令和7年度は毎月納付と比べて17,010円の割引を受けられます。
前納した場合の社会保険料控除は、以下の2つの方法から選ぶことが可能です。
・前納した全額をその年の控除として申告する方法
・各年分の保険料に相当する額を各年に分けて控除する方法
まとめて控除すると、その年の課税所得が大きく減るため、所得が多い年に一括で控除するほうが有利になることもあるでしょう。
出典:厚生労働省「令和7年度における国民年金保険料の前納額について」
後期高齢者医療保険料は「口座振替」で世帯の節税に
75歳以上の方の後期高齢者医療保険料は、原則として年金からの天引き(特別徴収)で納付されます。しかし、年金天引きの場合は年金受給者本人の控除にしかならないため、本人に所得税がかからない場合は控除が無駄になってしまいます。
この場合、納付方法を口座振替に変更し、所得のある配偶者の口座から支払えば、その配偶者の社会保険料控除として活用が可能です。変更手続きはお住まいの市区町村の窓口で行えるため、世帯の税負担を見直す際に検討してみる価値があるでしょう。
年の途中で退職・転職した場合の注意点
年の途中で退職し、年内に再就職しなかった場合は年末調整が行われません。退職後に自分で支払った国民健康保険料や国民年金保険料は、翌年の確定申告で申告する必要があります。
また、退職月の給与から天引きされた社会保険料も、退職時に受け取る源泉徴収票に記載されているため、確定申告の際に忘れずに含めましょう。
社会保険料控除と小規模企業共済等掛金控除の違い

社会保険料控除と混同されやすい制度に「小規模企業共済等掛金控除」があります。iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金は、社会保険料控除ではなく小規模企業共済等掛金控除の対象です。
どちらも「支払った全額が所得から控除される」という点では共通していますが、申告時の記入欄が異なるため、混同しないようにしましょう。年末調整では、社会保険料は申告書の「社会保険料控除」欄、iDeCoの掛金は「小規模企業共済等掛金控除」欄にそれぞれ記入します。
まとめ
社会保険料控除は、支払った全額が所得から差し引かれる数少ない所得控除であり、節税効果が高い制度といえるでしょう。最後に、押さえておきたいポイントを整理します。
・控除額に上限はなく、支払った社会保険料の全額が所得から差し引かれる
・本人だけでなく、生計を一にする配偶者や親族の保険料も控除対象
・年金から天引きされた保険料は年金受給者本人の控除になる(他の家族には使えない)
・国民年金保険料と国民年金基金の掛金は控除証明書の添付が必要
・国民年金の前納制度を利用すれば、割引と控除の両方のメリットを得られる
・後期高齢者医療保険料は口座振替への変更で世帯全体の節税につながる場合がある
会社員の方は給与天引き分については自動的に控除が適用されますが、家族の分の保険料を負担している場合は年末調整での申告が必要です。自営業者の方は確定申告で漏れなく申告し、節税効果を最大限に活用しましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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