生命保険
生命保険の「高額医療費」への備え:公的医療保険の限界

「高額療養費制度があるから、医療費は大丈夫だよね?」
生命保険は、万が一の死亡リスクだけでなく、病気やケガでかかる医療費への備えとしても活用できます。特に、入院や手術が長期にわたる場合、医療費は高額になりがちです。日本の公的医療保険制度には、自己負担を抑える「高額療養費制度」がありますが、この制度だけでは賄いきれない費用があることをご存知でしょうか。
この記事では、生命保険を活用した高額医療費への備えについて解説します。高額療養費制度の仕組みと、公的医療保険では賄えない費用(先進医療、差額ベッド代など)を具体的に掘り下げます。さらに、医療保険と生命保険を組み合わせた、賢い備え方を提案します。
高額療養費制度の仕組みと自己負担額

高額療養費制度とは、ひと月に支払った医療費の自己負担額が、一定の金額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です。
仕組みと自己負担限度額
自己負担限度額:
・収入や年齢によって自己負担限度額が定められています。
・例えば、年収約370万円〜770万円の70歳未満の方の場合、自己負担限度額は「80,100円 + (医療費総額 - 267,000円) × 1%」となります。
詳細は、生命保険文化センターのサイトをご覧ください。
高額療養費制度について知りたい
メリット:
・この制度のおかげで、ひと月の医療費が何百万円かかっても、自己負担額は上限まで抑えられます。
・一定の所得以下であれば、自己負担限度額はさらに低くなります。
【補足】見送られた制度改正:
2025年8月から予定されていた高額療養費制度の改正は、実施が見送られました。 ただし、将来的に医療費負担が増える可能性は残るため、民間保険の必要性は引き続き高いと言えます。
高額療養費制度の注意点
高額療養費制度は非常に優れた制度ですが、以下の費用は対象外となります。
・差額ベッド代(個室代):
患者が希望して個室や少人数の病室に入院した場合の費用です。
・入院中の食事代:
入院中の食事代は、自己負担となります。
・先進医療の技術料:
厚生労働大臣が承認した先進医療の技術料は、公的医療保険の対象外となります。
・医療保険・生命保険で補う:
これらの費用は、高額療養費制度では賄えません。民間の医療保険や生命保険を活用して、これらの費用に備えることが重要です。
公的医療保険では賄えない費用(先進医療、差額ベッド代など)

高額療養費制度では賄えない費用は、入院期間や治療内容によって高額になる可能性があります。
先進医療費
仕組み:
・高度な医療技術を用いた治療のうち、厚生労働大臣が承認したもの。
・治療そのものには公的医療保険が適用されませんが、その治療と併用して行う通常の治療費(診察料など)には公的医療保険が適用されます。
費用の相場:
・がんの陽子線治療や重粒子線治療など、数百万円かかるものもあります。
・全額自己負担となるため、医療保険の「先進医療特約」で備えるのが一般的です。
差額ベッド代
相場:
・多くの病院で個室や少人数の病室が用意されていますが、その費用は患者が自己負担します。
・全国平均で1日あたり数千円〜数万円かかります。入院が長期にわたる場合、大きな負担になります。
必要性:
感染症へのリスク、プライバシーの確保、安静な環境など、個室を希望する理由は様々です。
入院中の食事代や雑費
費用:
・入院中の食事代は、1食あたり数百円の自己負担となります。
・タオルや洗面用具、テレビカード代など、入院生活でかかる雑費も自己負担となります。
医療保険と生命保険の組み合わせ

高額な医療費に備えるためには、医療保険と生命保険を組み合わせるのが効果的です。
医療保険の活用
・入院給付金:
入院日数に応じて、1日あたり5,000円〜10,000円といった給付金が支払われます。
・手術給付金:
手術を受けた場合に、まとまった給付金が支払われます。
・先進医療特約:
医療保険に先進医療特約を付加することで、先進医療の技術料を全額カバーできます。
生命保険の活用
リビングニーズ特約:
・生命保険の特約としてリビングニーズ特約を付加することで、余命宣告された場合に、生前に死亡保険金の一部を受け取ることができます。
・このお金を、終末期医療費や、介護費用に充当できます。
介護保障特約:
生命保険に介護保障特約を付加することで、老後の介護費用に備えることができます。
医療保険の代わりに:
医療特約を付加することで、医療保険を単独で契約する手間を省けます。しかし、保障内容が限定的になる場合があるため、注意が必要です。
まとめ:公的医療保険を土台に、生命保険・医療保険で備える
高額療養費制度は、医療費の自己負担を大きく抑える優れた制度です。しかし、先進医療費や差額ベッド代など、公的医療保険だけでは賄いきれない費用があります。
・高額療養費制度を土台に、医療保険で入院や手術の費用、先進医療特約で高額な先進医療費に備えましょう。
・生命保険のリビングニーズ特約や介護保障特約も活用することで、終末期医療や老後の介護費用に備えられます。
この記事を参考に、公的医療保険と民間保険を賢く組み合わせ、安心して日々の生活を送りましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。