生命保険
再婚家庭の生命保険選び:子どもの保障と受取人指定の注意点

「連れ子がいる場合、前妻の子どもにも保険金を遺すことはできる?」
再婚家庭では、新しい家族構成や、前妻・前夫との間にいる子どもの存在など、独身時代や初婚時とは異なる、複雑な事情を抱えることがあります。生命保険の保障額や受取人指定も、これらの事情を考慮して慎重に設定しなければ、万が一の際に、遺族間のトラブルや、思わぬ形で大切な人が困ってしまうリスクがあります。
この記事では、再婚家庭に最適な生命保険の選び方を解説します。前妻・前夫との間にいる子どもや、新しい家族への保障をどう考えれば良いか、そして受取人指定のトラブル回避方法と、遺言書との連携まで。再婚家庭ならではの賢い生命保険の活用術を提案します。
なお、本記事では一般的な事例について解説しています。個別の事例につきましては、必ず保険会社に事前に相談してください。
前妻・前夫との子どもや、新しい家族への保障

再婚家庭の生命保険を考える上で、最も重要なのが、子どもへの保障です。
新しい家族(現在の配偶者、新しい子ども)への保障
・目的:現在の配偶者の生活費や、新しく生まれた子ども(実子)の教育費、養育費などを確保します。
・保険の種類:収入保障保険や定期保険といった死亡保険で、万が一の際に、遺された家族の生活を支える資金を確保します。
・保障額:遺族の生活費、子どもの教育費、住宅ローン残高などを考慮して、保障額を設定します。
前妻・前夫との子ども(連れ子)への保障
・遺族年金の対象外:遺族年金は、法律上の親子関係(実子・養子縁組した子)がある子が対象となります。そのため、養子縁組をしていない連れ子は、生計維持関係があっても遺族年金の支給対象とはなりません。
・連れ子への保障の必要性:公的保障が期待できない分、あなたが育ててきた連れ子の教育費や、将来の生活を支える資金を生命保険で準備することが、より一層重要になります。
受取人指定のトラブル回避方法

再婚家庭で最もトラブルになりやすいのが、生命保険の受取人指定です。
受取人指定の重要性
・遺産分割協議の対象外:生命保険の死亡保険金は、受取人固有の財産であり、原則として遺産分割協議の対象とはなりません。これにより、遺言書や遺産分割協議とは別に、特定の家族に確実に財産を遺すことができます。
・トラブル回避:受取人を明確に指定しておくことで、遺された家族(前妻・前夫との子ども、現在の配偶者など)の間での遺産争いを未然に防ぐことができます。
受取人指定の注意点とトラブル回避方法
1.連れ子への保障:養子縁組をしていない連れ子に保険金を遺したい場合は、受取人にその連れ子を明記して指定する必要があります。 養子縁組をしていない連れ子は法定相続人ではないため、指定がないと保険金は支払われません。
2.前妻・前夫の子どもへの保障:前妻・前夫との間に子どもがいる場合、その子どもはあなたの法定相続人です。受取人に指定しておくことで、遺産分割とは別に、確実に財産を遺すことができます。
3.受取人の優先順位:受取人が複数いる場合、受け取れる割合を明確に指定しておきましょう。例えば、「妻50%、子ども50%」など。
4.受取人指定の定期的な見直し:家族構成の変化に合わせて、受取人を定期的に見直しましょう。特に、新しい子どもが生まれた場合や、離婚・再婚をした場合は、速やかに見直しを行う必要があります。
遺言書との連携

生命保険は、遺言書と連携させることで、より確実で円滑な財産承継が実現します。
遺言書と生命保険の関係
役割分担:
・生命保険: 遺産分割協議の対象外の固有財産として、特定の人物に確実に財産を遺す役割。
・遺言書: 遺産全体(不動産、預貯金など)の分割方法を定める役割。
メリット:遺言書と保険金: 遺言書で「全財産を妻に相続させる」と定めていても、生命保険金の受取人が子どもに指定されていれば、その保険金は子どもに支払われます。これにより、遺言書と保険金の役割を明確に分けることができます。
遺言書と生命保険を連携させるヒント
1.遺言書と保険金の受取人を一致させる:遺言書の内容と生命保険の受取人指定を一致させることで、遺族間の混乱を避けられます。
2.生命保険で「納税資金」を準備:相続税は現金で一括納付が原則です。ただし、延納(分割納付)や物納(現物納付)といった制度もあります。 遺言書で不動産などの換金しにくい財産を多く相続させた場合、生命保険金で納税資金を準備しておくことで、遺族が税金の支払いに困る事態を防げます。
3.生命保険金が「特別受益」とみなされる可能性:死亡保険金は、原則として遺産分割の対象ではありませんが、保険金が著しく高額であるなど、特別な状況の場合には、「特別受益」として遺産分割の際に考慮される可能性があります。遺族間の争いを防ぐためにも、この点も踏まえて保険金額を設定しましょう。
まとめ:再婚家庭の生命保険は「子どもの未来」を第一に
再婚家庭の生命保険選びは、子どもの未来を第一に考え、受取人指定を慎重に行うことが重要です。
・前妻・前夫との子どもや、新しい家族への保障を明確に区別して、保険金額を決定しましょう。
・受取人指定は、遺産分割協議のトラブルを避ける上で不可欠です。養子縁組の有無も考慮して、誰に、どれくらいの割合で遺したいのかを明確に指定しましょう。
・遺言書との連携も視野に入れ、万が一の際に、大切な財産をスムーズに引き継ぐための準備を進めましょう。
この記事を参考に、あなたの家庭に合った最適な生命保険を選び、安心して日々の生活を送りましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。