公的年金制度
フリーランス・自営業者が知るべき国民年金+αの老後資金対策【iDeCo・国民年金基金・小規模企業共済】

フリーランスや自営業者は、会社員と比べて老後に受け取れる年金が少なくなりがちです。国民年金だけでは、ゆとりある老後生活を送るには心もとないと感じる方も多いのではないでしょうか。この記事では、国民年金にプラスして老後資金を積み増すための具体的な方法を解説します。iDeCo、国民年金基金、小規模企業共済といった制度の仕組みやメリットを正しく理解し、将来への備えを始めましょう。
フリーランス・自営業者の年金事情:なぜ老後資金が不足しがちなのか?
日本の公的年金制度は「2階建て」の構造と呼ばれています。1階部分にあたる「国民年金(老齢基礎年金)」は、20歳以上60歳未満のすべての国民が加入する制度であり、2階部分にあたる「厚生年金」は、会社員や公務員が加入する制度となっています。
国民年金のみの加入となる背景

フリーランスや自営業者は「国民年金第1号被保険者」に該当します。会社員のように厚生年金に加入できないため、将来受け取れる公的年金は1階部分の老齢基礎年金のみとなるのが原則です。会社員であれば、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取れるため、自営業者との間に年金額の差が生じます。
将来受け取る年金額の目安
令和7年度(2025年度)の老齢基礎年金の満額は月額69,308円(年額約83万円)です。40年間(480月)にわたり国民年金保険料を納めた場合、この満額を受け取ることが可能になります。しかし、保険料の納付期間が短い場合や免除期間がある場合は、その分だけ受給額が減少します。
一方、厚生労働省の試算によると、平均的な収入(平均標準報酬45.5万円)で40年間働いた会社員の場合、老齢厚生年金と老齢基礎年金(夫婦2人分)を合わせて月額232,784円を受け取れるとされています。フリーランス・自営業者が受け取れる老齢基礎年金との差は大きく、この差が老後資金の不足につながる大きな要因となっているのです。
国民年金基金で年金を『2階建て』にする

フリーランスや自営業者でも、国民年金基金に加入することで公的年金の「2階部分」を準備することが可能です。ここでは、国民年金基金の仕組みと加入のポイントについて解説します。
国民年金基金の仕組みとメリット
国民年金基金は、国民年金の第1号被保険者が老後の年金を増やすために創設された任意加入の制度です。主なメリットは以下のとおりとなっています。
・終身年金が基本:65歳から一生涯にわたって年金を受け取れるため、長生きリスクへの備えになる
・掛金全額が社会保険料控除の対象:支払った掛金の全額が所得から控除されるため、所得税・住民税の負担を軽減できる
・将来の年金額が確定:加入時点で将来受け取る年金額が決まっているため、老後の資金計画を立てやすい
・受取時も税制優遇:受け取る年金は公的年金等控除の対象となる
なお、国民年金基金には「全国国民年金基金」のほか、歯科医師・司法書士・弁護士向けの「職能型国民年金基金」が存在しますが、いずれか1つにしか加入できません。
加入条件とプランの選び方
国民年金基金に加入できるのは、以下の条件を満たす方です。
・国民年金の第1号被保険者で、保険料をきちんと納めている方
・60歳以上65歳未満で国民年金に任意加入している方
・海外に居住し、国民年金に任意加入している方
国民年金保険料が免除されている方や、農業者年金の被保険者の方は加入できませんので注意が必要です。また、国民年金基金に加入すると付加年金には加入できなくなります。
プランは、1口目として「A型」または「B型」の終身年金から選択するのが必須となっています。2口目以降は、確定年金を含めた7種類の給付タイプから自由に組み合わせることが可能です。掛金の上限は月額68,000円で、年齢や性別によって同じ掛金でも将来の年金額が異なります。若い時期に加入するほど、同じ掛金で多くの年金を受け取れる点が特徴といえるでしょう。
なお、一度加入すると自己都合による脱退や中途解約はできない点には留意が必要です。ただし、掛金の増減や納付の一時停止は可能となっています。
iDeCo(個人型確定拠出年金)で『自分年金』を作る

iDeCo(イデコ)は、自分で掛金を拠出し、自分で運用方法を選んで老後資金を準備する私的年金制度です。運用成績によって将来の受取額が変動する点が国民年金基金との大きな違いとなっています。
iDeCoの仕組みと税制優遇
iDeCoには、3つの段階で税制優遇が用意されています。
・掛金が全額所得控除:毎月の掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として全額が所得控除の対象となり、所得税・住民税が軽減される
・運用益が非課税:通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかるが、iDeCoでは運用で得た利益に課税されない
・受取時も税制優遇:一括で受け取る場合は「退職所得控除」、分割で受け取る場合は「公的年金等控除」の対象となる
第1号被保険者(フリーランス・自営業者)の場合、iDeCoの掛金上限は月額68,000円(年額816,000円)です。ただし、この上限は国民年金基金や国民年金の付加保険料と合算した金額となります。運用商品は定期預金、投資信託、保険商品などから選択でき、運用指図は加入者自身が行います。
iDeCoは原則として60歳まで引き出すことができない点には注意が必要です。老後資金専用の制度として設計されているため、途中での資金引き出しを想定していない点は事前に理解しておきましょう。
出典:iDeCo公式サイト「iDeCoの加入資格・掛金・受取方法等」
国民年金基金とiDeCoは併用できる?最適な活用法
国民年金基金とiDeCoは併用が可能です。ただし、両方の掛金を合算して月額68,000円が上限となる点に注意してください。たとえば、国民年金基金に月額20,000円を拠出している場合、iDeCoに拠出できるのは月額48,000円が上限となります。
両制度にはそれぞれ特徴があり、使い分けのポイントは以下のとおりです。
・安定志向の方:国民年金基金は将来の年金額が確定しており、終身で受け取れるため、確実性を重視する方に適している
・積極運用を目指す方:iDeCoは運用次第で資産を大きく増やせる可能性がある反面、元本割れのリスクも伴う
・バランス型:両方を組み合わせることで、安定的な年金収入と運用による上乗せの両方を狙える
どちらを優先するかは、リスク許容度や老後の資金計画によって異なります。両制度の仕組みを理解したうえで、自身のライフプランに合った配分を検討することが重要です。
小規模企業共済で退職金代わりを準備

会社員には退職金制度がある一方、フリーランスや自営業者には退職金がありません。小規模企業共済は、この課題を解決するための国の制度として活用できます。
小規模企業共済の仕組みとメリット
小規模企業共済は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する、小規模事業者のための積立式の退職金制度です。個人事業主や小規模企業の経営者・役員が加入でき、全国で約159万人が加入しています(2022年3月時点)。
主なメリットは以下のとおりです。
・掛金が全額所得控除:支払った掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として全額が所得から控除され、節税につながる
・掛金を柔軟に設定可能:月額1,000円から70,000円まで500円単位で設定でき、加入後の増減も可能
・退職金として受け取り可能:事業の廃止や退任時に共済金を受け取れる。一括受取りは退職所得扱い、分割受取りは公的年金等の雑所得扱いとなり、税制面で有利
・貸付制度の利用:掛金の範囲内で事業資金の貸付を受けられる
年間最大84万円(月額70,000円×12か月)を所得控除できるため、課税所得が高い方ほど節税効果が大きくなります。たとえば、課税所得1,000万円の方が月額70,000円を掛けた場合、年間約36万円程度の節税効果が見込めます。
加入できるのは、常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主および会社役員、またはその共同経営者です。
注意点として、掛金納付月数が20年未満で任意解約した場合は元本割れする可能性があります。また、12か月以上の掛金滞納は強制解約となるため、長期継続を前提に加入を検討することが大切です。
フリーランスが実践すべき老後資金戦略ロードマップ

ここまで解説した各制度を踏まえ、フリーランスや自営業者が実践すべき老後資金戦略について、具体的なロードマップを提案します。
具体的な貯蓄目標設定と運用ポートフォリオの考え方
まずは、老後にいくら必要なのかを試算することから始めましょう。一般的に、老後の生活費は現役時代の7〜8割程度が目安とされています。総務省の家計調査によると、65歳以上の単身無職世帯の平均支出は月額約15万円、夫婦のみの無職世帯では月額約27万円程度となっています。
国民年金の満額が月額69,308円であることを考えると、単身でも毎月約8万円程度の不足が生じる計算になります。65歳から90歳まで25年間と仮定すると、不足額は約2,400万円に達します。この不足分を補うために、以下のような戦略が考えられます。
【ステップ1:基盤を固める】
まずは国民年金保険料を確実に納付し、満額の老齢基礎年金を受け取れる状態を目指します。経済的に厳しい時期があっても、保険料の免除・猶予制度を活用し、将来の追納を視野に入れることが重要です。
【ステップ2:節税しながら備える】
小規模企業共済を活用し、退職金相当の資金を準備しつつ節税効果を得ます。掛金は無理のない範囲から始め、事業が軌道に乗ったら増額を検討しましょう。
【ステップ3:2階部分を構築する】
国民年金基金またはiDeCo(もしくは両方)を活用して、年金の上乗せを図ります。安定性を重視するなら国民年金基金、運用で増やしたいならiDeCoを中心に、あるいはバランスよく併用することで、リスク分散を図れます。
【ステップ4:余裕があれば投資を追加】
上記の制度をフル活用したうえで、さらに余裕資金があれば、NISAなどの非課税投資制度を活用した資産運用も選択肢に入ります。
重要なのは、無理のない範囲で継続することです。フリーランスや自営業者は収入が不安定になりがちですから、掛金の増減が可能な制度の柔軟性を活かしながら、長期的な視点で老後資金を準備していきましょう。
まとめ:国民年金+αで築く安心の老後
フリーランスや自営業者は、会社員と比べて公的年金だけでは老後資金が不足しやすい立場にあります。しかし、国民年金基金、iDeCo、小規模企業共済といった制度を上手に活用すれば、節税メリットを享受しながら着実に老後資金を積み立てることが可能です。
各制度の特徴をまとめると、以下のようになります。
・国民年金基金:終身年金で将来の受取額が確定。掛金は社会保険料控除の対象
・iDeCo:運用次第で資産を増やせる可能性。掛金・運用益・受取時すべてで税制優遇
・小規模企業共済:退職金の代わりになる。掛金全額が所得控除の対象。貸付制度も利用可能
これらの制度は併用可能であり、組み合わせ方次第で節税効果を最大化しながらリスク分散を図ることもできます。自身の年齢、収入状況、リスク許容度などを考慮し、最適なバランスを見つけることが大切です。
老後資金の準備は「早く始めるほど有利」という原則があります。時間を味方につけ、無理のない範囲でコツコツと積み立てを続けることで、将来の安心につながる備えを築いていきましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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