学資保険
ひとり親家庭の学資保険活用術|保険料節約・払込免除特約・公的制度併用で教育資金を無理なく準備

子どもの教育資金を計画的に準備したいけれど、毎月の生活費や予期せぬ出費で手一杯――。特にひとり親家庭では、学資保険の保険料が家計の大きな負担になりがちです。「子どもの将来のために加入したいけれど、今の収入で続けられるか不安…」そんな声は少なくありません。
しかし、学資保険は工夫次第で保険料負担を抑えながら、必要な教育資金を確保することができます。本記事では、最新制度・条件・税制優遇・進学ルート別試算(3パターン)を紹介します。
保険料負担を抑える方法

ひとり親家庭が無理なく続けるための「設計の工夫」と「家計全体の見直し」の要点をまとめます。
保険期間と払込期間を短縮する
大学入学時の資金を優先し、中学・高校時の祝い金を省くタイプを選ぶと総保険料を抑えられます。払込期間を短くすることで総支払額が減るケースもあります。ボーナスや児童扶養手当の一部を年払いに充てれば、負担分散も可能です。
返戻率を重視した設計
例:総支払額180万円で満期200万円受取の場合、返戻率=(2,000,000円 ÷ 1,800,000円)×100=111.1%。複数プランを比較し、家計に無理のない範囲で効率の良い設計を選びましょう。
年払いと月払いの比較
同条件で比較すると、
・月払い:15,000円 × 12か月 × 10年=1,800,000円
・年払い:178,000円 × 10年=1,780,000円
→ 年払いで総額20,000円の節約。毎月のキャッシュフローに余裕があれば年払いを検討。
公的制度との併用
学資保険と児童扶養手当、高等教育の修学支援新制度、給付奨学金などを組み合わせれば、必要資金を確保しつつ保険負担を軽減できます。
払込免除特約の重要性

契約者が死亡・高度障害・三大疾病等で働けなくなった場合に保険料払込が免除される特約です。ひとり親家庭では収入源が1人に集中するため、「最後の安全網」としての価値が高い特約。加入前に免除事由・特約保険料・免除後の保障を必ず確認しましょう。
公的支援制度の最新情報と条件

制度は毎年見直しがあるため、最新の公式情報の確認を前提に活用しましょう。
児童扶養手当(こども家庭庁所管)
2025年4月以降の全部支給(満額)の目安:第1子46,690円、第2子加算11,030円、第3子以降加算11,030円(2024年11月施行済の引上げ反映)。
対象条件:18歳到達年度末まで(中度以上の障害がある場合は20歳未満)の児童を監護するひとり親等、所得制限あり。
申請:市区町村役場の子育て支援窓口。必要書類(申請書、戸籍謄本、所得証明、本人確認、振込口座等)。
詳細:児童扶養手当について|こども家庭庁
高等教育の修学支援新制度(文部科学省)
2025年度から多子世帯(扶養する子が3人以上)に所得制限なしで授業料・入学金を減免、加えて給付奨学金(返済不要)がセットで支援。
対象条件:住民税非課税水準またはそれに準ずる世帯(多子世帯は所得制限撤廃)。対象校は大学・短大・専門学校等。
申請:高校在学中は進学予定校経由、在学中は学校窓口経由。
詳細:高等教育の修学支援新制度|文部科学省
モデルケース試算(根拠付き・3パターン)

条件:長男:小5、次男:小2/年収:300万円(児童扶養手当満額想定)/学資保険:満期200万円・払込10年・年払い178,000円・返戻率110%/公的制度:児童扶養手当+修学支援新制度(長男進学時)/教育費データ:文科省「子供の学習費調査」、日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査」。
【ケース1】公立進学ルート
小中高すべて公立 → 国立大学(自宅通学)。教育費総額の目安:約727万円。
児童扶養手当(第1子46,690円+第2子加算11,030円=月57,720円)→ 年間692,640円、10年間で約6,926,400円。
学資保険満期200万円、修学支援新制度(大4年)で約80〜100万円。
→ 公的制度+保険でほぼ全額カバー可能。
【ケース2】私立進学ルート
小中高すべて私立 → 私立大学文系(自宅外)。教育費総額の目安:約2,209万円。
学資保険200万円+児童扶養手当約692.6万円(10年)+修学支援新制度(私立大4年)約160〜180万円。
→ なお不足額は約1,000万円前後。貸与型奨学金や教育ローン活用が現実的。
【ケース3】ミックス型(小:公立/中高:私立/大:私立文系・自宅)
教育費総額:小(公立)約193万円+中(私立)約421万円+高(私立)約291万円+私立大文系(4年・自宅)約410万円=合計約1,315万円。
学資保険200万円+児童扶養手当約692.6万円(10年)+修学支援新制度(私立大4年)約120〜140万円。
→ 公的制度+保険で約1,000万円前後を確保、不足は約300万円程度で、奨学金・アルバイト等で補填可能。
税制優遇

ひとり親控除:扶養する子と同居等(所得500万円以下)。所得税控除35万円、住民税控除30万円。年収300万円なら年間約5〜6万円の税負担軽減の目安。
寡婦控除:配偶者と死別・離婚等。所得税控除27万円、住民税控除26万円。年収300万円なら年間約4〜5万円軽減の目安。
最新情報確認のお願い
本記事の制度・支給額は2025年4月時点の情報です。見直しが行われる場合があります。最新情報は必ず公式サイトをご確認ください。
参考文献
・こども家庭庁「児童扶養手当について」:https://www.cfa.go.jp/policies/hitori-oya/fuyou-teate/
・文部科学省「高等教育の修学支援新制度」:https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/
・日本学生支援機構「給付奨学金(返済不要)」:https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/kyufu/
・金融庁「保険の基本」:https://www.fsa.go.jp/ordinary/insurance/
・文部科学省「子供の学習費調査」:https://www.mext.go.jp/content/20231222-mxt_chousa01-000031968_01.pdf
・日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査」:https://www.jfc.go.jp/n/findings/education_cost.html
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。