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NISAで米国株投資を始める際の注意点!為替リスクと分散戦略

新NISAのスタートで、非課税で米国株に投資できるチャンスが広がりました。GAFAをはじめとする成長企業がひしめく米国市場は、高いリターンが期待できる一方で、日本株とは異なる特有のリスクと注意点が存在します。特に為替リスクは、米国株投資において避けて通れない重要な要素です。
この記事では、NISAの成長投資枠を活用した米国株投資に焦点を当て、初心者が知っておくべき注意点を解説します。為替リスクの具体的な管理方法や、米国内での業種分散の重要性を深掘りし、あなたの米国株投資をより安心して、そして効率的に進めるための戦略を提案します。
なぜNISAで米国株投資が人気なの?

NISAの成長投資枠で米国株投資が人気を集めるのには、主に以下の理由があります。
1.高い成長性: 米国には、IT、ヘルスケア、消費財など、世界経済を牽引する革新的な企業が多数存在します。過去の実績では、日本株と比較して高い成長率を記録している傾向があり、高いリターンが期待できます。
2.多様な企業群: 世界中から集まる巨大企業から、まだ成長途上のベンチャー企業まで、幅広い選択肢があります。
3.非課税の恩恵: NISA口座で米国株に投資すれば、株を売却して得た利益(キャピタルゲイン)や、配当金(インカムゲイン)が非課税になります。通常かかる税金(約20%)がゼロになるため、効率的に資産を増やせます。
NISAで米国株投資を始める際の「注意点」

魅力的な米国株投資ですが、日本株にはない特有の注意点があります。
為替リスクを理解する
米国株投資は、日本円を米ドルに換えて株を購入するため、為替レートの変動が投資成果に大きな影響を与えます。これが「為替リスク」です。
・円高リスク: 株を購入した時よりも円高が進んだ場合、保有している米国株のドル建ての価値が変わらなくても、円に換算した評価額が下がり、元本割れや利益の減少につながる可能性があります。
例: 1ドル150円の時に100ドルの株を購入(15,000円)。株価は変わらず100ドルのまま、1ドル130円になった時に売却すると、13,000円にしかならず、2,000円の損失となります。
・円安メリット: 逆に、株を購入した時よりも円安が進めば、円に換算した評価額が上がり、為替差益を得られます。
為替リスクは、株価の変動とは別に発生するリスクであり、米国株投資の大きな注意点です。
二重課税に注意する(配当金の場合)
NISA口座で米国株の配当金を受け取る場合、注意が必要です。
・原則として米国で10%課税される: 米国株の配当金は、まず米国の税制に基づいて10%の現地源泉税が徴収されます。
・NISA口座内は非課税: その後、残りの配当金が日本の証券口座に入金されますが、NISA口座内であれば日本の税金(約20%)はかかりません。
つまり、米国株の配当金については、NISA口座であっても米国の10%の税金は避けられないという点を知っておきましょう。この米国で課税された10%は、確定申告で「外国税額控除」を申請することで取り戻せる場合がありますが、NISA口座では確定申告が原則不要なため、この控除を利用しない選択をする投資家も多いです。
情報収集と言語の壁
米国企業に関する情報は、日本語に翻訳されていないものも多く、最新情報をタイムリーに入手するには、英語での情報収集が必要になる場合があります。企業の決算資料やニュースリリースなども、英語が基本です。
為替リスクを抑える「管理方法」と「分散戦略」

為替リスクは米国株投資の避けられない側面ですが、その影響を管理し、リスクを抑える方法はいくつかあります。
時間の分散(積立投資)で為替リスクを平準化
為替リスクを管理する最も基本的な方法は、「積立投資」です。
- ・ルコスト平均法の活用: 毎月、決まった金額(円)で米ドルを購入し、米国株に投資することで、円高の時には多くのドルを、円安の時には少ないドルを購入することになります。これにより、平均的な購入為替レートを平準化し、為替リスクを分散する効果が期待できます。相場の変動に一喜一憂せず、自動で継続できるため、初心者にも特におすすめです。
ドルコスト平均法については、以下の記事も参考にしてください。
ドルコスト平均法とは?時間分散で賢く資産形成!
円建ての投資信託・ETFを活用する
直接米ドルに両替して個別株を買うのではなく、円建てで米国株に投資できる投資信託やETFを活用する方法もあります。
・投資信託: NISAの「つみたて投資枠」で選べる「S&P500」や「全世界株式」連動型の投資信託は、ほとんどが円建てで投資できます。ファンド内で米ドルでの運用が行われますが、投資家は円建てで売買するため、直接的な為替管理の手間がありません。
・為替ヘッジ型の商品: 一部の投資信託やETFには「為替ヘッジあり」の商品があります。これは、為替変動による影響を抑えることを目的としたもので、円安・円高の影響を受けにくくする効果があります。ただし、ヘッジコストがかかるため、その分リターンが目減りする可能性がある点には注意が必要です。
ポートフォリオ全体のバランスでリスクを管理
為替リスクは、ポートフォリオ全体で考えるべきです。
・日本株や円資産とのバランス: 米国株に集中投資するのではなく、ポートフォリオ全体で日本株や円建ての資産(預貯金、国内債券など)とのバランスを取りましょう。円建て資産が十分にあれば、米ドル資産が円安で価値を減らしても、全体の資産を守りやすくなります。
・国際分散投資: 米国株だけでなく、日本、欧州、新興国など、世界中の株式に分散投資することで、特定国のリスクだけでなく、為替リスクも間接的に分散できます。NISAの「つみたて投資枠」で「全世界株式」に投資するインデックスファンドを選ぶのが、手軽な国際分散投資の第一歩です。
米国内での「業種分散」の重要性を深掘り

米国株投資において、特定の企業だけでなく、米国内での「業種分散」も非常に重要です。
・リスクの集中を防ぐ: 例えば、IT株ばかりに集中すると、IT業界全体が不振になった際に大きな損失を被るリスクが高まります。異なる業種(例: IT、ヘルスケア、消費財、金融、エネルギーなど)に分散して投資することで、特定の業界の動向に左右されるリスクを軽減できます。
・経済全体の成長を取り込む: 米国の経済は様々な業種で成り立っています。幅広い業種に分散することで、特定のセクターの浮き沈みに惑わされず、米国経済全体の長期的な成長の恩恵を享受しやすくなります。
・「S&P500」インデックスファンドの活用: 米国内での業種分散を手軽に行うなら、「S&P500」に連動する投資信託やETFがおすすめです。S&P500は、米国の主要500社で構成されており、多様な業種が含まれているため、これ1本で優れた業種分散効果が得られます。NISAの「つみたて投資枠」でも購入可能です。
・個別株での分散: 「成長投資枠」で個別株に投資する場合でも、例えば「IT企業の〇社」「ヘルスケア企業の〇社」といったように、計画的に異なる業種の企業を選ぶことで、バランスの取れたポートフォリオを構築しましょう。
まとめ:NISAで米国株投資を賢く、そして安心して
NISAの成長投資枠を活用した米国株投資は、高い成長性や多様性から魅力的な選択肢です。しかし、為替リスクや二重課税(配当金)といった日本株にはない特有の注意点を理解しておくことが不可欠です。
為替リスクを抑えるためには、積立投資で時間の分散を図り、円建ての投資信託やETFを活用し、ポートフォリオ全体でバランスを取ることが重要です。また、米国内での業種分散を意識することで、リスクをさらに軽減し、より安定した運用を目指せます。
これらの注意点と対策を理解し、賢くNISAで米国株投資を始めることで、あなたの資産形成は新たなステージへと進むでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。