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NISAで利益が大きく増えた時の売却判断と出口戦略を徹底解説

NISAで投資した商品に大きな利益が出た時、「今売るべきか、もっと待つべきか」と悩む投資家は多いのではないでしょうか。新NISAでは非課税保有期間が無期限化され、売却後も翌年に非課税枠が復活する仕組みに改正されたことで、売却判断の選択肢が広がりました。
しかし、せっかくの利益を最大化するためには、適切なタイミングでの売却判断が重要です。短期的な利益に飛びついて早々に売却してしまえば、長期的な資産成長の機会を逸してしまいます。一方で、欲張りすぎて売り時を逃せば、必要な時に資金が確保できないリスクもあります。
本記事では、CFP資格を持つファイナンシャルプランナーが、NISAで利益が出た時の具体的な売却タイミングと出口戦略を解説します。ライフイベントに合わせた売却計画、目標金額到達時の対処法、新NISAの非課税枠復活を活用した再投資戦略、そして旧NISAの非課税期間満了への対処法まで、実践的な判断基準を詳しく紹介していきます。
NISAで利益が出た時の基本的な考え方

NISAで保有している資産に大きな利益が出た時、売却すべきか継続保有すべきか迷う投資家は少なくありません。新NISAでは非課税保有期間が無期限化され、売却した翌年には非課税枠が復活する仕組みに改正されました。これにより、従来よりも売却判断の自由度が高まっています。
利益が出た時の判断において最も重要なのは、投資の目的と目標金額を明確にすることです。老後資金の準備なのか、住宅購入資金なのか、教育資金なのか、それぞれの目的によって最適な売却タイミングは異なります。
新NISAの最大の特徴は、売却しても翌年に非課税枠が復活する点にあります。売却額ではなく取得価額(簿価)ベースで枠が復活するため、利益が出ている状態での売却でも、非課税投資の機会を失うことはありません。
利益確定を検討すべき具体的なタイミング

ライフイベントに合わせた売却
住宅購入や子供の大学進学など、10年以上先のライフイベントが訪れた時が、最も自然な売却タイミングです。NISAはそもそも将来使うお金のために活用する制度ですから、必要な時に必要な分だけ売却することに問題はありません。
ただし、お金が必要になる数年前から価格動向を確認する頻度を増やし、利益が出ているタイミングで段階的に売却することも検討に値します。必要な時期に相場が下落している可能性もあるため、余裕を持った売却計画が重要です。
目標金額に到達した時の対処法
当初設定した目標金額に到達した場合、全額売却ではなく半分売却する戦略も有効です。例えば、100万円の投資が200万円になった場合、100万円分を売却して元本を回収し、残りの100万円で運用を継続する方法があります。
この方法により、元本割れのリスクを完全に回避しつつ、残った資金で更なる成長機会を狙えます。心理的な負担も軽減され、長期投資を継続しやすくなる効果があります。
資産配分のリバランス時期
ポートフォリオの特定資産が想定以上に値上がりし、資産配分のバランスが崩れた場合も売却を検討すべきタイミングです。例えば、株式の比率が当初の60%から80%に上昇した場合、一部を売却して債券や他の資産に配分し直すことでリスク管理が可能になります。
新NISAにおける売却後の再投資戦略

非課税枠の復活メカニズム
新NISAで売却した場合、翌年に売却した商品の取得価額分の非課税枠が復活します。例えば、100万円で購入した商品を150万円で売却した場合、復活する枠は100万円です。売却益の50万円は非課税で受け取れますが、この50万円分は新たな非課税枠としては利用できません。
年間投資上限額は、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円の合計360万円という制限は変わりません。そのため、枠が復活しても年間の投資可能額を超えて投資することはできない点に注意が必要です。
特定口座からの乗り換え戦略
特定口座で大きな含み益を抱えている場合、年末に売却して税金を支払い、年始に新NISA口座で買い直す戦略も検討に値します。今後も含み益の増加が見込まれる優良銘柄であれば、早めに新NISAに移行することで、将来の利益に対する非課税メリットを最大化できます。
特に高配当銘柄の場合、配当金も非課税となるため、新NISAへの乗り換えによる節税効果は大きくなります。ただし、売却時の税金約20%を支払っても、将来的にそれを上回るメリットが得られるかを慎重に判断する必要があります。
旧NISAの非課税期間満了時の対処法

一般NISAの5年満了時の選択肢
2020年に一般NISAで購入した商品は、2024年末に非課税期間が終了します。新NISAへのロールオーバーはできないため、非課税期間内に売却するか、課税口座に移管するかの二択となります。
利益が出ている場合は、非課税期間終了前の売却が最も手堅い選択です。ただし、課税口座に移管した時点の時価が新たな取得価額となるため、その後の値上がり分だけに課税される仕組みを活用して、継続保有する選択肢もあります。
つみたてNISAの20年満了への備え
つみたてNISAは2018年開始のため、最も早い商品でも非課税期間終了は2037年末です。非課税期間が終了する2~3年前から価格動向を注視し、利益が出ているタイミングで段階的に売却することで、終了間際の急落リスクを回避できます。
出典:金融庁「2023年までのNISA」
売却判断で避けるべき行動パターン
短期的な値動きでの売却は避ける
NISAは長期的な資産形成を目的とした制度です。10%や20%程度の利益で早々に売却してしまうと、複利効果による長期的な資産成長の機会を逸してしまいます。特に新NISAでは非課税保有期間が無期限となったため、焦って売却する必要性は低下しています。
投資信託の基準価額は日々変動しますが、長期的には世界経済の成長に連動して上昇する傾向があります。一時的な利益に目を奪われず、10年、20年という長期視点で保有を続けることが重要です。
感情的な判断を避ける仕組み作り
利益が出ると「もっと上がるかもしれない」という欲望と、「今売らないと下がるかもしれない」という恐怖の間で揺れ動きます。こうした感情的な判断を避けるため、事前に売却ルールを決めておくことが大切です。
例えば、「目標金額の120%に到達したら半分売却」「ライフイベントの3年前から段階的に売却開始」など、明確な基準を設定しておくことで、冷静な投資判断が可能になります。
出典:日本証券業協会「2024年以降の新しいNISAについて」
まとめ:長期視点での出口戦略が成功の鍵
NISAで大きな利益が出た時の対処法は、投資目的や個人の状況によって異なります。重要なのは、短期的な値動きに一喜一憂せず、当初の投資目的に沿った判断を行うことです。
新NISAでは売却後も翌年に非課税枠が復活するため、必要な時に必要な分だけ売却することが可能になりました。ライフイベントや目標金額への到達、資産配分の調整など、合理的な理由がある時に計画的に売却することで、NISAの非課税メリットを最大限活用できるでしょう。
最も避けるべきは、わずかな利益で慌てて売却し、長期的な資産形成の機会を失うことです。10年、20年という長期視点を持ち、じっくりと資産を育てていく姿勢が、NISA投資の成功につながります。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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