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NISAで元本割れを防ぐには?リスクを抑える分散投資の極意

NISAは利益が非課税になるお得な制度ですが、残念ながら元本割れのリスクはゼロではありません。大切な資産が減ってしまうのは誰にとっても避けたいことですよね。
この記事では、NISA運用における元本割れのリスクを明確にした上で、その最も効果的な対策である「分散投資」について、その重要性と具体的な方法を深く掘り下げて解説します。あなたのNISA運用を、より安心して、そして着実に進めるための「分散投資の極意」を提案します。
なぜNISAでも元本割れが起こるの?

NISAは税制優遇制度であり、投資そのもののリスクを変えるものではありません。預貯金とは異なり、投資した金融商品の価格は日々変動するため、購入時よりも評価額が下がり、元本を割り込む可能性があります。
元本割れが起こる主な要因は、以下の通りです。
・市場全体の変動: 景気、金利、世界情勢などによって株式市場全体が下落すると、保有している商品の評価額も下がります。
・個別銘柄の業績悪化: 特定の個別株に投資した場合、その企業の業績不振や不祥事により、株価が大きく下落することがあります。
・為替変動: 外国株や外国の投資信託に投資する場合、円高が進むと、円に換算した評価額が下がる「為替リスク」が発生します。
このようなリスクがある中で、大切な資産を元本割れから守る、あるいはその影響を最小限に抑えるカギとなるのが「分散投資」なのです。
元本割れを防ぐ「分散投資」とは?その重要性

分散投資とは、「卵は一つのカゴに盛るな」という投資の格言が示す通り、投資対象を一つに絞らず、複数に分けて投資することです。これにより、特定のリスクに偏ることを防ぎ、ポートフォリオ全体(資産の組み合わせ)の安定性を高めることができます。
分散投資の2つの絶大な効果
1.リスクの軽減: もし一つの投資対象が大きく下落しても、他の投資対象が安定していれば、ポートフォリオ全体の損失を抑えることができます。
2.リターンの安定化: 異なる値動きをする資産を組み合わせることで、市場全体が不安定な時期でも、ポートフォリオ全体のリターンを比較的安定させやすくなります。
NISAの非課税メリットを活かすには、まず元本割れのリスクを適切に管理し、長期的な資産成長の土台を築くことが不可欠です。
「分散投資」の極意!3つの軸で徹底的にリスクを抑える

分散投資は、単に多くの銘柄を買えばいいというわけではありません。以下の3つの軸でバランスよく分散させることが、元本割れリスクを効果的に抑える「極意」です。
資産クラスの分散:異なる値動きを組み合わせる
投資する資産の種類を複数に分けることです。
・株式: 高いリターンが期待できる一方で、価格変動リスクも大きいです。
・債券: 株式に比べて価格変動が穏やかで、安定性が高い傾向があります。金利の変動に影響を受けます。
・不動産(REIT): 不動産に投資する投資信託で、家賃収入のような安定的な分配金が期待できます。株式と似た値動きをすることもあります。
組み合わせのポイント: 例えば、株式と債券のように、異なる経済局面で異なる値動きをする資産を組み合わせることで、一方の資産が不調な時に他方がカバーする効果が期待できます。NISAの「つみたて投資枠」で選べる「バランス型投資信託」は、これらを自動で組み合わせてくれる商品も多く、初心者でも手軽に資産クラスの分散が可能です。
地域の分散:世界の成長を幅広く取り込む
投資する国や地域を複数に分けることです。
・国内(日本)株式・債券: 日本経済の動向に左右されます。
・先進国(米国、欧州など)株式・債券: グローバル経済の主要な成長を取り込みます。
・新興国(中国、インドなど)株式・債券: 高い成長が期待される一方で、政治的・経済的リスクも伴います。
組み合わせのポイント: 特定の国や地域に経済的な問題が発生しても、他の地域の成長が補ってくれるよう、世界の広い範囲に分散投資するのが理想です。NISAの「つみたて投資枠」で人気の「全世界株式インデックスファンド」は、これ1本で世界の多くの国・地域に分散投資できるため、地域の分散を極める上で非常に有効な手段です。
時間の分散(積立投資):高値掴みを避ける賢い方法
投資するタイミングを複数に分けることです。
・積立投資: 毎月決まった日に、決まった金額を自動で投資する「自動積立」を活用しましょう。
・ドルコスト平均法: 価格が高い時には少なく、価格が安い時には多く買い付けることになるため、平均購入単価を平準化し、高値掴みのリスクを抑えることができます。
ドルコスト平均法については、以下の記事も参考になります。
ドルコスト平均法とは?時間分散で賢く資産形成!
組み合わせのポイント: NISAは非課税期間が無期限なので、長期にわたる積立投資を継続することが、この時間の分散効果を最大限に引き出す鍵となります。市場の短期的な変動に一喜一憂せず、着実に投資を続けることが大切です。
NISAで元本割れを防ぐための具体的な対策

分散投資の極意を実践する上で、さらに意識すべき具体的な対策をまとめました。
1.生活防衛資金の確保: 投資を始める前に、必ず生活費の半年~1年分程度の「生活防衛資金」を、すぐに引き出せる預貯金として確保しておきましょう。これにより、急な出費でNISA口座の資産を損した状態で売却せざるを得ない、という状況を防げます。
2.無理のない金額で始める: NISAの年間投資枠(最大360万円)を無理に使い切ろうとせず、あなたの家計に負担をかけない範囲で、継続できる金額を設定しましょう。無理な投資は、精神的な負担を増やし、感情的な売買につながりやすくなります。
3.リスク許容度に応じた商品選び: あなたの「リスク許容度」(どれくらいの損失なら許容できるか)を正確に把握し、それに見合った商品を選びましょう。リスク許容度が低い場合は、より安定した資産クラス(債券など)の割合を増やすことを検討してください。
4.定期的なポートフォリオの見直し(リバランス): 一度設定したポートフォリオも、時間の経過とともに資産の比率が崩れることがあります。年に1回程度は、自身の資産配分が当初の目標と合っているかを確認し、必要に応じて「リバランス」(崩れた比率を元に戻す作業)を行いましょう。これにより、リスクを適切に保ち、効率的な運用を続けられます。
まとめ:NISAの「分散投資」で元本割れリスクと賢く付き合おう
NISAは非課税という大きなメリットを持つ制度ですが、投資である以上、元本割れのリスクは存在します。しかし、このリスクを過度に恐れる必要はありません。
「資産クラスの分散」「地域の分散」「時間の分散(積立投資)」という3つの軸で徹底的に分散投資を行うことが、元本割れリスクを大幅に抑え、あなたのNISA資産を着実に増やしていくための「極意」です。
生活防衛資金の確保や無理のない金額設定といった基本的な対策と合わせて、賢く分散投資を実践することで、安心してNISAでの資産形成を始め、あなたの未来を豊かなものにしていきましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。