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iDeCoは結婚したら見直すべき?夫婦の掛金設定と老後計画

結婚は、人生において最も大きなライフイベントの一つです。二人の家計が一つになり、働き方や将来の計画も大きく変わることがあります。そんな時、「iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金設定や老後計画も、見直すべき?」と考える方もいるかもしれません。
この記事では、結婚後のiDeCo活用術に焦点を当てます。結婚による所得の変化がiDeCoの掛金上限にどう影響するかを解説し、夫婦でiDeCoに加入する世帯全体のメリットを掘り下げます。さらに、共通の老後資金目標設定と掛金の分担まで、夫婦でiDeCoを賢く活用し、安心できる未来を築くための具体的な戦略を提案します。
結婚による所得の変化とiDeCo掛金上限への影響

結婚によって、夫婦の働き方や所得の状況が変わると、iDeCoの掛金上限額も変わる可能性があります。
夫婦の働き方・所得の変化
・共働き世帯が続く場合: 夫婦それぞれが会社員(第2号被保険者)として働き続ける場合、iDeCoの掛金上限は基本的に変わりません。ただし、片方が企業年金のない会社員(月2.3万円上限)で、もう片方が企業型DCやDBのある会社員(月2万円上限)といった違いがあるため、各自の上限を確認しましょう。
・片方が専業主婦(夫)になる場合: 配偶者(第2号被保険者)に扶養される専業主婦(夫)は「第3号被保険者」となり、iDeCoの掛金上限は月額2.3万円(年間27.6万円)です。
・扶養範囲内で働く(パート勤務など)場合: 国民年金と厚生年金に加入しない範囲で働く場合、第3号被保険者としてiDeCoに月額2.3万円まで拠出可能です。厚生年金に加入する(第2号被保険者になる)場合は、所得に応じて掛金上限が変わります。
所得の変化とiDeCo掛金の見直し
結婚後の家計状況に合わせて、iDeCoの掛金設定を見直しましょう。
・世帯収入が増えた場合: 夫婦の収入を合算して余裕資金が増えれば、それぞれがiDeCoの掛金上限まで拠出することを検討しましょう。iDeCoの掛金は所得控除になるため、所得が多い方が多く拠出するほど、世帯全体の節税効果は大きくなります。
・片方の収入が減った(またはなくなった)場合: 育児休業で収入が一時的に減ったり、専業主婦(夫)になったりする場合は、iDeCoの掛金を一時的に減額したり、停止したりすることも検討できます。
・ポイント: iDeCoの掛金変更は年に1回まで可能です。無理なく継続できる金額に柔軟に調整しましょう。ただし、掛金を停止しても口座管理手数料は継続してかかります。
夫婦でiDeCoに加入する「世帯メリット」

夫婦それぞれがiDeCoに加入することで、単身で利用するよりもはるかに大きなメリットが世帯全体にもたらされます。
世帯全体の「非課税枠」と「所得控除」を最大化
・所得控除の2倍化: 夫婦それぞれに所得がある場合、それぞれがiDeCoの掛金を拠出すれば、その掛金は個々の所得から全額控除されます。これにより、夫婦それぞれの所得税と住民税が安くなり、世帯全体の節税効果が最大化されます。
例: 夫が月2.3万円、妻が月2.3万円拠出すると、世帯全体で年間55.2万円の所得控除枠を確保できます。
運用益非課税枠の拡大: 夫婦それぞれがiDeCo口座を持つことで、運用益が非課税になる「非課税枠」が2人分になります。これにより、世帯全体でより多くの老後資金を非課税で増やすことができます。
資産運用のリスク分散と柔軟性の向上
・運用方針の分散: 夫婦それぞれが別の運用商品を選ぶことで、資産運用のリスクを分散できます。例えば、夫はリスクをやや高めに、妻は安定性を重視するなど、個々のリスク許容度に合わせてポートフォリオを組むことが可能です。
・受取タイミングの分散: 夫婦それぞれのiDeCoの受取開始時期や受取方法(一時金/年金)をずらすことができます。これにより、退職所得控除や公的年金等控除といった税制優遇を効率的に活用し、老後の税負担を最適化できます。例えば、夫が定年退職で退職金を受け取った後、数年してから妻のiDeCoを一時金で受け取ることで、夫の退職金とは別の控除枠を利用するといった戦略が可能です。
共通の老後資金目標設定と掛金の分担

夫婦でiDeCoを活用する上で、共通の老後資金目標を設定し、それに向けた掛金の分担を話し合うことが非常に重要です。
共通の老後資金目標を設定する
・夫婦で「ゆとりある老後」をイメージ: まずは、老後に夫婦でどのような生活を送りたいか、毎月いくら必要になるのかを具体的に話し合いましょう。
・公的年金の見込み額を確認: 夫婦それぞれの「ねんきん定期便」を確認し、将来受け取れる公的年金(国民年金・厚生年金)の見込み額を把握します。
・不足額を明確に: 目標とする老後生活費から公的年金を差し引き、iDeCoやNISA、貯蓄などで準備すべき「不足額」を明確にしましょう。
夫婦の掛金分担を最適化する
共通の目標に対し、夫婦それぞれのiDeCo掛金上限と所得バランスを考慮して、最適な掛金の分担を決めましょう。
・所得が高い方を優先: 夫婦ともに所得がある場合、所得税率が高い方(所得が多い方)がiDeCoに拠出する掛金を多くすることで、世帯全体の所得控除メリットを最大化できます。
・iDeCoの上限額まで活用: 夫婦それぞれのiDeCo掛金上限額(会社員なら月2.3万円または2万円、自営業なら月6.8万円、専業主婦なら月2.3万円)を把握し、可能な範囲で上限まで拠出することを目指しましょう。
・NISAとの併用: iDeCoの掛金上限まで拠出してもまだ余裕資金がある場合や、老後資金以外の教育資金・住宅資金も準備したい場合は、夫婦それぞれのNISA(年間360万円の非課税枠)も積極的に活用しましょう。NISAは資金の柔軟性が高いため、iDeCoと役割を分担できます。
定期的な見直しと情報共有
・家計の共有: 夫婦で定期的に家計の状況を共有し、iDeCoの掛金が無理なく続けられているか、見直す必要がないかを話し合いましょう。
・運用状況の共有: iDeCoの運用状況(評価額、損益など)も共有し、共通の目標達成に向けて協力する意識を高めましょう。
まとめ:夫婦でiDeCoを活用し、世帯全体の未来を豊かに
結婚は、iDeCoでの老後資金準備を夫婦で本格的に始める絶好の機会です。夫婦それぞれがiDeCoに加入し、そのメリットを最大限に活かすことで、世帯全体の節税効果と資産形成効果を大きく高めることができます。
・夫婦それぞれのiDeCo掛金上限を把握し、所得が高い方が掛金を多くすることで、所得控除による節税メリットを最大化しましょう。
・共通の老後資金目標を設定し、iDeCoとNISAを賢く使い分けながら、夫婦で協力して掛金を分担・拠出しましょう。
・定期的な見直しと情報共有を行い、夫婦のライフプランに合わせた最適な資産形成を目指しましょう。
今日から夫婦でiDeCoとNISAの活用について話し合い、世帯全体の未来を豊かにするための資産形成を始めてみませんか。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。