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iDeCoの運用実績はどこで確認する?評価損益の見方と改善策

iDeCo(個人型確定拠出年金)で老後資金を準備している方にとって、自分の運用実績がどうなっているのかは、やはり気になるところですよね。特に、市場が不安定な時や、初めて資産運用をする方だと、「含み損」が出ているのを見ると不安になってしまうかもしれません。
この記事では、iDeCoの運用実績をどこで確認できるのか、そして「評価損益」の仕組み(含み益、含み損)をわかりやすく解説します。さらに、もし評価損が出ている場合にどう対処すべきか(スイッチングの検討など)まで、あなたのiDeCo運用を冷静に、そして前向きに進めるためのヒントを提案します。
iDeCoの運用実績は「運用管理機関のマイページ」で確認

あなたのiDeCoの運用実績は、iDeCo口座を開設している「運用管理機関」(証券会社や銀行)のウェブサイトや専用アプリのマイページで確認できます。
口座開設時に送られてきたIDとパスワードを使ってログインすると、以下のような情報が確認できます。
・現在の評価額: あなたのiDeCo資産が今、いくらの価値になっているか。
・掛金累計額: これまでに積み立てた掛金の合計額。
・評価損益: 掛金累計額に対して、現在の評価額がプラスなのかマイナスなのか。
・運用商品の内訳: どの商品をどれくらいの割合で保有しているか。
・個別商品の損益: 各運用商品ごとの損益状況。
また、年に1回程度、国民年金基金連合会や運用管理機関から「運用報告書」などの書面が送られてくる場合もあります。これには、過去1年間の運用実績や資産構成などが記載されています。
「評価損益」の仕組み:含み益と含み損を正しく理解しよう

運用実績を確認する上で、特に「評価損益」は重要な項目です。これは、あなたの資産が「今、どれくらい増えているか(または減っているか)」を示します。
含み益(評価益)とは
・状態: 現在の評価額が、これまでの掛金累計額を上回っている状態です。
・意味: 運用がうまくいっており、現時点で売却すれば利益が出る状態です。
含み損(評価損)とは
・状態: 現在の評価額が、これまでの掛金累計額を下回っている状態です。
・意味: 現時点で売却すれば損失が出る状態です。
重要ポイント: 含み益も含み損も、あくまで「評価上」の損益です。実際に商品を売却して現金化しない限り、利益も損失も確定はしません。特にiDeCoは原則60歳まで引き出せない長期運用なので、一時的な含み損は珍しいことではありません。
もし評価損が出ている場合の対処法と改善策

評価損が出ているのを見ると、不安になるのは自然なことです。しかし、iDeCoは長期運用が前提の制度なので、焦って行動するのではなく、冷静に対処することが重要です。
まずは慌てない!市場の「一時的な下落」と捉える
・ドルコスト平均法の恩恵: iDeCoの積立投資は、市場が下落し、運用商品の価格が安くなった時こそ、同じ掛金でより多くの口数(株数)を購入できる「買い場」です。評価損が出ている時期に積立を継続することで、平均購入単価を下げ、市場回復時のリターンを大きくする効果が期待できます。
・歴史を信じる: 過去の市場の歴史を振り返ると、一時的な暴落の後には、時間をかけて回復し、さらに成長してきたことが多くあります。評価損が出ている時期は、長期投資の「通過点」だと考えましょう。
運用商品を見直す「スイッチング」を検討する
もし評価損が長期間続いている場合や、選んだ商品に不安を感じる場合は、運用商品の見直し(スイッチング)を検討することもできます。
スイッチングとは: 現在保有している運用商品を売却し、その資金で別の運用商品を買い付けることです。
・例: 運用成績が振るわない株式型投資信託から、より安定した運用が期待できる他のインデックスファンドや、あるいは元本確保型商品へ切り替える。
検討のタイミング:
・運用成績が継続して市場平均を大きく下回っている場合: (特にアクティブファンドの場合)
・信託報酬など手数料が高い場合: より低コストのファンドが登場している場合。
・ご自身のリスク許容度が変化した場合: 老後が近づき、リスクを抑えたい場合など。
注意点: 短期的な値動きに一喜一憂して頻繁にスイッチングを行うのは避けましょう。手数料が発生する場合(信託財産留保額がかかる投資信託をスイッチングする場合)や、タイミングを誤るとかえって損失を拡大させるリスクもあります。
ポートフォリオ全体の「リスク許容度」を再確認する
評価損が出たことで不安を感じる場合、そもそもあなたのポートフォリオが、ご自身のリスク許容度と合っていない可能性があります。
・リスク許容度の再診断: 「このくらいの含み損なら耐えられる」というラインを改めて確認しましょう。
・資産配分の調整: もしリスク許容度を超えていると感じるなら、ポートフォリオ全体で、株式などのリスク資産の比率を減らし、債券や元本確保型商品の比率を増やす「リバランス」を検討しましょう。iDeCoの場合、スイッチングによって資産配分を調整できます。
掛金設定や拠出継続の判断
・掛金は継続が基本: 評価損が出ている時期でも、掛金の拠出は継続しましょう。これが「安値で仕込む」チャンスです。
・生活防衛資金の確認: iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、急な出費に備える「生活防衛資金」が不足していないか確認しましょう。もし不足している場合は、iDeCoの掛金を一時的に減額・停止することも検討できます。
まとめ:iDeCoの運用実績は「長期視点」と「冷静な対応」が鍵
iDeCoの運用実績を確認し、評価損益を見ることは、資産管理において重要です。含み損が出ていると不安になりますが、iDeCoは長期運用が前提であり、一時的な評価損は「買い場」である可能性もあります。
・運用管理機関のマイページで定期的に実績を確認しましょう。
・含み益も含み損も「評価上」のものと理解し、焦らないことが大切です。
・もし評価損が出ても、冷静に市場の状況や自身のポートフォリオを見直し、必要に応じてスイッチングなどの対策を検討しましょう。
これらのポイントを押さえ、iDeCoを冷静に、そして着実に運用し続けることが、老後資金形成を成功させるための鍵となります。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。