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iDeCoの受け取り開始年齢引き上げは?老後資金確保の最新情報

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、原則60歳から資産の受け取りが可能になる、老後資金準備のための制度です。しかし、人生100年時代といわれる現代において、公的年金の受給開始年齢の引き上げや、働き方の多様化が進む中、iDeCoの「受け取り開始年齢」についても、その見直しが議論されています。
この記事では、iDeCoの受け取り開始年齢に関する法改正の可能性や議論について解説します。そして、長寿化社会における年金制度とiDeCoの役割、老後資金計画に与える影響まで、あなたのiDeCo運用と老後資金確保に役立つ最新情報とヒントを提案します。
iDeCoの受け取り開始年齢引き上げは?法改正の可能性

iDeCoの資産は、現在、原則60歳から75歳までの間で、自分で決めた時期に受け取りを開始できます(受給要件を満たした場合)。この受け取り開始年齢について、以下のような議論や法改正が行われています。
受け取り開始時期の柔軟化(現行制度)
・最長75歳まで繰り下げ可能:
2022年5月の制度改正で、iDeCoの受給開始時期の上限が70歳から75歳に引き上げられました。これにより、公的年金受給開始年齢(原則65歳)とiDeCoの受給開始時期をずらすなど、より柔軟な老後資金計画が可能になりました。
今後、受け取り開始年齢が「引き上げ」られる議論は?
・「最低年齢」の引き上げは議論なし:
iDeCoの資産は、最も早く受け取れる年齢(最短60歳)が「引き上げられる」という議論は、現在確認されていません。iDeCoはあくまで「自分で老後資金を作る」私的年金制度であり、資産形成の自由度が重視されているため、原則として60歳以降というルールが今後も維持される可能性が高いです。
・受給開始年齢「上限」の延長:
2025年度の税制改正大綱で、iDeCoの掛金拠出可能年齢が70歳未満まで拡大されることが決定しました。これにより、より長くiDeCoを活用し老後資金を準備できるようになります。これに伴い、受け取り開始時期の上限もさらに見直される可能性は考えられますが、現時点では「75歳まで」が上限です。
なぜこのような議論がされるのか?
人生100年時代と言われる中、老後期間が長くなる一方で、公的年金の財源には制約があります。これにより、以下の課題が生まれています。
・公的年金受給開始年齢の引き上げ: 公的年金制度の持続可能性を保つため、受給開始年齢をさらに引き上げるべきではないか、という議論があります。
・「資産寿命」を延ばす必要性: 80代、90代まで続く可能性のある老後生活を支えるには、貯蓄や年金資産をいかに長持ちさせるかが重要になります。
iDeCoの受給開始年齢に関する議論は、このような社会全体の大きな流れと深く関係しています。
長寿化社会における年金制度とiDeCoの役割

公的年金制度とiDeCoは、長寿化社会におけるあなたの老後を支える上で、異なる、しかし重要な役割を担います。
公的年金制度の役割
・「ベース」となる生活費の確保:
公的年金(国民年金・厚生年金)は、老後の生活を支える最も基本的な収入源となります。ただし、年金だけで生活費を十分にまかなうことは難しい場合が多いです。
・受給開始年齢の引き上げと働き方の変化:
公的年金の受給開始年齢が引き上げられる可能性を考えると、60歳〜65歳の期間に収入が途切れないよう、働き方を継続したり、別の収入源を確保したりすることが重要になります。
iDeCoの役割
iDeCoは、公的年金だけでは不足する老後資金を補い、さらに年金生活を豊かにするための「3階建て」の年金構造における3階部分として重要な役割を担います。
・年金収入の「上乗せ」:
公的年金の不足分を補うための、税制優遇が手厚い私的年金として活用できます。
・受給開始時期の「調整弁」:
公的年金の受給開始年齢が仮に68歳や70歳に引き上げられたとしても、iDeCoは60歳から受け取ることが可能です。これにより、公的年金が始まるまでの期間をiDeCoでまかなうなど、老後生活の「空白期間」の収入源として活用できます。
・「資産寿命」の延長:
iDeCoの資産をいつから受け取り始めるか、そして年金形式か一時金形式かを選ぶことで、老後資金全体の資産寿命をコントロールできます。受け取りを遅らせて運用を継続すれば、非課税で資産を増やす期間が延び、結果として資産寿命も延びます。
まとめ:iDeCoの受け取り開始年齢は「戦略的」に選ぶ
iDeCoの受け取り開始年齢は、原則60歳から最長75歳まで、あなたのライフプランや税制状況に合わせて柔軟に選択できる重要な要素です。
・公的年金受給開始年齢とiDeCoの受け取り開始時期をずらすことで、税制優遇を最大限に活用し、老後の税負担を最適化しましょう。
・60歳以降もiDeCoの運用を継続することで、非課税運用益をさらに長く享受し、資産寿命を延ばすことが可能です。
・2025年度税制改正大綱で決定された、iDeCoの掛金拠出可能年齢の70歳未満への拡大も、より長く老後資金を準備できる追い風となります。
iDeCoは、単に積み立てるだけでなく、「いつから、どう受け取るか」という出口戦略まで見据えることで、長寿化社会におけるあなたの老後資金を賢く管理し、豊かなセカンドライフを築くための鍵となるでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。