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iDeCoの「裁定請求」とは?受け取り手続きの最終ステップ

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金を準備するための制度ですが、60歳になったからといって、自動的に資産が支払われるわけではありません。iDeCoで積み立てた資産を受け取るためには、加入者自身が「裁定請求(さいていせいきゅう)」という手続きを行う必要があります。これは、iDeCoの老後資金を受け取るための、いわば「最終ステップ」です。
この記事では、iDeCoの受け取り開始に必要な「裁定請求」の仕組みを解説します。請求に必要な書類と手続きの流れ、そして裁定請求のタイミングが受け取りにどう影響するのかまで。あなたのiDeCo資産をスムーズに、そして確実に受け取るためのヒントを提案します。
60歳以降のiDeCo受け取り開始に必要な手続き

iDeCoの資産は、原則として60歳以上で、かつ加入期間が10年以上であることなどの受給要件を満たした場合に、受け取ることが可能になります。この受給要件を満たした後に、実際に資産を受け取るために行う手続きが「裁定請求」です。
裁定請求とは?
・仕組み: 裁定請求とは、「iDeCoの老齢給付金を受け取る権利を行使します」という意思表示を、運営管理機関(金融機関)を通じて行う手続きです。この請求をしない限り、iDeCoの資産は60歳以降もiDeCo口座内で運用され続けます。
・手続きの窓口: iDeCoの裁定請求手続きは、iDeCo口座を開設している金融機関を通じて行います。
裁定請求のタイミング
・最短60歳から: 加入期間が10年以上であれば、60歳になった月から裁定請求が可能です。
・最長75歳まで繰り下げ可能: 60歳になった時点で受給要件を満たしていても、すぐに受け取らずに、運用を継続しながら受給開始時期を最長75歳まで遅らせることができます。これを「繰り下げ」と呼びます。
請求に必要な書類と手続きの流れ

裁定請求は、あなたのiDeCo資産を受け取るための重要な手続きです。
裁定請求に必要な主な書類
裁定請求に必要な書類は、ご自身の状況(受け取り方法、加入者区分など)によって異なりますが、主に以下の書類が必要となります。
1.老齢給付金裁定請求書:
裁定請求を行うためのメインの書類です。
2.本人確認書類:
運転免許証、マイナンバーカードなど。
3.基礎年金番号がわかる書類:
年金手帳、基礎年金番号通知書など。
4.受け取り口座の確認書類:
預金通帳など、給付金を受け取る口座情報がわかるもの。
5.加入期間を証明する書類:
iDeCoの加入者記録に関する書類など。
裁定請求の手続きの流れ
1.運営管理機関に連絡:
まずはiDeCo口座を開設している金融機関のウェブサイトやコールセンターで、裁定請求をしたい旨を連絡します。
2.必要書類の請求:
金融機関から「老齢給付金裁定請求書」など、手続きに必要な書類が送付されてきます。
4.書類の記入と提出:
書類に必要事項を記入し、本人確認書類などの必要書類を添えて返送します。
5.国民年金基金連合会での審査:
提出された書類は、国民年金基金連合会で審査されます。
6.給付金の支払い:
審査が通ると、約1〜2ヶ月後に指定の金融機関口座へ給付金が支払われます。
裁定請求のタイミングと受け取りへの影響

裁定請求をいつ行うかというタイミングの選択は、老後資金の税金や資産寿命に大きな影響を与えます。
税金への影響
iDeCoの受け取り方には「一時金」と「年金」があり、それぞれに退職所得控除や公的年金等控除が適用されます。
退職金との合算:
・iDeCoの一時金と会社からの退職金を同じ年に受け取ると、控除枠を分け合ってしまい、税金がかかる可能性が高まります。
・戦略: 裁定請求のタイミングをずらすことで、退職所得控除の枠を最大限に活用し、税金を軽減できる可能性があります。特に、退職金とiDeCoの一時金を受け取る時期を、一定期間(現行5年、2026年1月からは10年)空けることを検討しましょう。
資産寿命への影響
・運用継続による資産増加: 60歳で受給要件を満たしても、すぐに裁定請求をせず運用を継続すれば、非課税運用益をさらに長く享受し、資産を増やすことができます。これにより、老後資金全体が長持ちし、「資産寿命」を延ばすことにつながります。
・市場の状況と受給のタイミング: 市場が不安定な時期に無理に裁定請求をせず、相場が回復してから受け取りを開始するなど、より有利なタイミングを選ぶことができます。
まとめ:iDeCoの裁定請求は「計画的な出口戦略」の第一歩
iDeCoの裁定請求は、自動的に行われるものではなく、あなた自身が手続きを行う必要があります。
・裁定請求は、iDeCoの老後資金を受け取るための「最終ステップ」です。
・最短60歳から、最長75歳まで、受給開始年齢を自分で選択できます。
・裁定請求のタイミングは、退職金や公的年金とのバランス、そして市場の状況を考慮し、税金と資産寿命に最も有利になるよう、戦略的に決定することが重要です。
これらのポイントを押さえ、iDeCoの裁定請求を、あなたの豊かな老後生活に向けた計画的な出口戦略の第一歩としましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。