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iDeCoの「死亡一時金」は誰が受け取る?受取人の指定と税金

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金を準備するための制度ですが、万が一、加入者が亡くなった場合にも、積み立てた資産が無駄になることはありません。その資産は「死亡一時金」として遺族が受け取ることができます。しかし、この死亡一時金は、誰が受け取れるのか、そして税金がどうなるのか、そのルールを正しく理解しておくことが重要です。
この記事では、加入者が死亡した場合のiDeCo資産の取り扱いを解説します。死亡一時金の受取人の指定方法と、相続税、所得税など、どの税金がかかるかを詳しく掘り下げます。iDeCoを安心して活用し、大切な資産を遺族に確実に引き継ぐためのヒントを提案します。
加入者が死亡した場合のiDeCo資産の取り扱い

iDeCoの運用中に加入者が亡くなった場合、それまでに積み立てた資産は「死亡一時金」として、遺族が受け取ることができます。
死亡一時金とは?
・仕組み: 亡くなった時点でのiDeCoの資産額が、遺族に支払われる一時金です。
・運用継続: 死亡診断書が提出されるなどして加入者の死亡が確認されると、iDeCoの運用は停止し、資産は現金化されます。
・受け取りまでの期間: 死亡一時金として遺族が受け取るまでには、数ヶ月程度の時間がかかります。
遺族年金とは異なる制度
・死亡一時金は、公的年金制度の「遺族年金」とは異なる、iDeCo独自の給付です。
・遺族年金とiDeCoの死亡一時金は両方受け取ることが可能であり、それぞれが独立した制度です。
死亡一時金の受取人の指定方法

iDeCoの死亡一時金は、加入者が事前に指定した「死亡一時金受取人」が受け取ります。この受取人の指定が非常に重要です。
受取人の指定方法と優先順位
・手続き: iDeCoの口座開設時や、加入後に「死亡一時金受取人指定(変更)届」という書類を提出することで指定できます。
指定できる範囲と優先順位: 死亡一時金は、以下の順位で受け取れる人が決まっています。
1.指定受取人(加入者が生前に指定した人が最優先)
2.配偶者(内縁関係含む)
3.死亡者の収入により生計を維持していた子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹(この順)
4.上記以外で死亡者の収入により生計を維持していた親族
5.生計を維持していない子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹(この順)
・遺産分割協議が不要: 死亡一時金は、遺言書や遺産分割協議の対象とはならない「固有の財産」とみなされます。これにより、遺族間の争いを防ぐことにもつながります。
相続放棄をしても受け取ることができる
・死亡一時金は、法律上「みなし相続財産」として扱われますが、受取人の固有の財産です。
・死亡から5年以内に受け取る場合は、相続放棄をしても、死亡一時金を受け取ることが可能です。これは、他の相続財産を放棄する場合でも、死亡一時金は独立して受け取れるという非常に重要なポイントです。
死亡一時金にかかる税金:死亡からの経過期間が重要

iDeCoの死亡一時金にかかる税金は、加入者が亡くなった時点から受け取るまでの期間によって決まります。
死亡から3年以内に受け取る場合(相続税)
・ケース:加入者が亡くなってから3年以内に死亡一時金を受け取る場合、受取人が誰であっても、死亡一時金は「みなし相続財産」として扱われ、相続税の対象となります。
・税制優遇:生命保険金の相続税非課税枠が適用されます。「500万円 × 法定相続人の数」の金額まで非課税となり、その枠を超えた部分に相続税がかかります。
・具体例:法定相続人が3人(配偶者と子2人)の場合、非課税枠は1,500万円(500万円 × 3人)です。死亡一時金が1,500万円以下であれば、相続税はかかりません。
死亡から3年を超えて5年以内に受け取る場合(所得税)
・ケース:加入者が亡くなってから3年を超えて5年以内に、死亡一時金を受け取る場合、死亡一時金は「一時所得」として扱われ、所得税と住民税の対象となります。
・税負担:相続税の非課税枠が適用されないため、税負担が大きくなる可能性があります。
死亡から5年超の場合の税務扱い
・ケース:死亡から5年を超えて受け取った場合、死亡一時金は「相続財産」として扱われ、遺産分割協議の対象となります。
・税負担:この場合、税務上は依然として受取人の「一時所得」として扱われますが、死亡退職金等の非課税枠は使えません。
まとめ:iDeCoの受取人指定で、大切な資産を確実に引き継ぐ
iDeCoは、万が一の場合にも、積み立てた資産を遺族に「死亡一時金」として引き継ぐことができます。
・死亡一時金は自動的に支給されるものではなく、遺族による「裁定請求」が必要です。
・受取人を「法定の範囲」で指定しておくことが、遺産分割のトラブルを防ぎ、遺族がスムーズに資産を受け取るための鍵です。内縁の配偶者も受取人として指定可能です。
・死亡から5年以内に請求しないと、資産は相続財産として扱われる点にも注意が必要です。
・死亡からの経過期間によってかかる税金が変わるため、遺族がいつ受け取るべきかについても、事前に伝えておくことが重要です。
この機会に、ご自身のiDeCoの受取人指定を見直し、大切な資産を遺族に確実に引き継ぐための準備を進めていきましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。