iDeCo
iDeCoの「手数料」はどれくらい?見落としがちな隠れコストも解説

「毎月いくら引かれるの?手数料って、どこを見て比較すればいいの?」
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、強力な税制メリットで老後資金を効率的に増やすための制度です。しかし、そのメリットを最大限に活かすためには、運用期間中に発生する「手数料」をできるだけ抑えることが不可欠です。手数料は、あなたの運用成果から確実に差し引かれるため、見過ごすことはできません。
この記事では、iDeCoで発生する手数料の全体像を解説します。加入時手数料や毎月かかる手数料、そして見落としがちな「隠れコスト」まで。それぞれの費用の詳細と合計額を明確にし、長期運用における手数料の影響を再確認します。iDeCoの金融機関選びで失敗しないための、賢いコストの見極め方を提案します。
iDeCoの手数料:3つの種類と内訳

iDeCoでかかる手数料は、大きく分けて以下の3種類があります。
加入・移換時手数料(初回のみ)
・費用: iDeCoに新規で加入する際や、企業型DCから資産を移換する際に一度だけ発生する手数料です。
・金額: 国民年金基金連合会に2,829円を支払います。
・特徴: iDeCoの資格取得に関わる手数料で、これはどの金融機関を選んでも一律で発生します。
口座管理手数料(毎月発生)
iDeCoの口座を維持・管理するために、毎月かかる手数料です。この手数料は、金融機関によって差があり、比較検討が最も重要なポイントとなります。
国民年金基金連合会手数料:
・費用: iDeCo制度全体を運営するために必要な費用。
・金額: 月額105円。
事務委託先金融機関手数料:
・費用: iDeCoの事務を委託している信託銀行に支払う手数料。
・金額: ほぼ統一されており、多くの金融機関で月額66円です。
運営管理機関手数料:
・費用: iDeCo口座を開設している金融機関(証券会社、銀行など)に支払う手数料。
・金額: 金融機関によって異なり、月額無料のところから、数百円かかる金融機関まで様々です。
運用商品の手数料(日々発生)
これは、運用商品の「信託報酬」など、運用資産から日々差し引かれる手数料です。
信託報酬:
・費用: 投資信託の運用管理費用。
・金額: 運用商品(ファンド)ごとに異なり、年率0.1%〜2.0%など様々です。
手数料の合計額と「見落としがちな隠れコスト」

iDeCoの手数料は、これらの費用を合算して考える必要があります。
毎月かかる手数料の合計
毎月かかる手数料は、「運営管理機関手数料」+「国民年金基金連合会手数料(105円)」+「事務委託先金融機関手数料(66円)」の合計となります。
運営管理機関手数料が無料の金融機関:
・合計手数料: 月額171円(105円+66円)。これが最低手数料です。
運営管理機関手数料が有料(月200円)の金融機関:
・合計手数料: 月額371円(105円+66円+200円)
見落としがちな「隠れコスト」
・運用商品の「信託報酬」:
信託報酬は、運用資産額に対して年率でかかるため、資産額が増えるほど金額も増えていきます。これが、手数料の中でも最も運用成果に影響を与える「隠れコスト」です。例えば、年率1.0%のファンドと0.1%のファンドでは、長期運用で大きな差が生まれます。
・資産からの自動引き落とし:
毎月かかる手数料は、原則としてあなたの掛金から自動的に差し引かれます。これにより、実際に運用される金額が少なくなり、運用効率がわずかに低下します。
・スイッチング・移換時の手数料:
運用商品を変更する際に、信託財産留保額がかかる投資信託を「スイッチング」したときや、金融機関を乗り換える「移換」の際にも、手数料が発生する場合があります。これも、必要に応じてかかるコストとして覚えておきましょう。
スイッチングについては以下の記事を参考にしてください。
iDeCoのスイッチングとは?運用商品の見直しで資産を増やす方法
長期運用における手数料の影響を再確認

iDeCoは、原則60歳まで引き出せない長期運用が前提です。そのため、毎月かかる口座管理手数料のわずかな差が、最終的な資産額に非常に大きな影響を与えます。
具体例で見る!手数料が最終資産額に与える影響
以下のシミュレーションでは、毎月2万円を30年間積立、年率5%で運用できた場合を想定しています。
運営管理手数料が無料の金融機関で運用(運営管理機関手数料0円):
・毎月の運用額は19,829円(20,000円 - 171円)。
・最終資産額 約1,657万円
運営管理手数料が月額200円の金融機関で運用:
・毎月の運用額は19,629円(20,000円 - 371円)。
・最終資産額 約1,640万円
運営管理手数料が月額300円の金融機関で運用:
・毎月の運用額は19,529円(20,000円 - 471円)。
・最終資産額 約1,632万円
カシオ 積立計算(複利毎課税)で計算
上記のシミュレーション(信託報酬を考慮しない口座管理手数料のみの比較)からもわかるように、月額200円や300円の運営管理機関手数料の差が、30年間運用すると最終的な資産額に数十万円もの差を生む可能性があります。 税制メリットを享受していても、手数料が運用効率を間接的に低下させてしまうのは非常にもったいないことです。
この影響を考慮すると、口座管理手数料が無料の金融機関を選ぶことは、iDeCoの運用を成功させるための非常に重要なポイントであると言えます。
まとめ:iDeCoの金融機関選びは「手数料の低さ」を最重視!
iDeCoの手数料は、運用成果に直結する重要なコストです。
・最優先は「口座管理手数料が無料」の金融機関を選ぶことです。
・無料の金融機関は、運用商品の信託報酬も低い傾向があるため、トータルでの運用コストを大きく抑えられます。
・手数料が有料の金融機関は対面サポートなどのメリットがある場合もありますが、長期運用におけるコスト負担は大きいです。
iDeDeの金融機関を選ぶ際は、口座管理手数料だけでなく、運用商品の信託報酬も含めた「トータルコスト」を比較し、ご自身の運用スタイルやニーズに合った、できるだけ低コストな金融機関を選ぶことが、あなたの老後資金を効率的に増やすための賢い選択となるでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。