iDeCo
iDeCoと公的年金:老後の生活設計で知るべき年金の基礎知識

老後の生活設計を考える上で、公的年金制度は最も基本的な収入源となります。しかし、その仕組みは複雑で、将来どれくらいの年金がもらえるのか、それだけで生活できるのか、不安に感じる方も少なくありません。iDeCo(個人型確定拠出年金)は、この公的年金だけでは不足する部分を補い、安心できる老後を築くための強力な味方です。
この記事では、老後の生活設計で欠かせない公的年金の基礎知識を解説します。国民年金と厚生年金の仕組み、それぞれの受給額の目安を明確にし、公的年金だけでは不足する部分をiDeCoで補う重要性を具体的に説明します。さらに、老後資金計画全体におけるiDeCoの役割まで、あなたの将来の安心を築くためのヒントを提案します。
公的年金とは?老後の生活を支える2階建ての仕組み

日本の公的年金制度は、国民全員が加入する「国民年金」と、会社員や公務員が加入する「厚生年金」という、2階建ての仕組みになっています。
国民年金(1階部分):すべての国民が対象
仕組み: 20歳以上60歳未満のすべての日本国民が加入する年金です。保険料を納めることで、老後に「老齢基礎年金」を受け取れます。
対象者: 自営業者、フリーランス、学生、無職の方(第1号被保険者)、会社員・公務員(第2号被保険者)、専業主婦・夫(第3号被保険者)など、全員が対象です。
受給額の目安:
・20歳から60歳までの40年間、国民年金保険料を全額納付した場合、満額で月額約6.9万円(2025年4月)の老齢基礎年金を受け取れます。
・夫婦2人が共に満額受給できたとしても、月額約13.6万円となり、これだけで生活費をまかなうのは難しいと感じる方がほとんどです。
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
厚生年金(2階部分):会社員・公務員が対象
仕組み: 国民年金に上乗せして、会社員や公務員が加入する年金です。保険料は給与や賞与に比例し、会社と折半で負担します。
対象者: 会社員、公務員(第2号被保険者)が対象です。
受給額の目安:
国民年金(1階部分)に加えて、現役時代の収入や厚生年金への加入期間に応じて年金額が決まります。
・例えば、平均的な収入で40年間厚生年金に加入した場合、老齢基礎年金と合わせて、夫婦で月額約22万円〜25万円程度が目安となることが多いです(個々のケースで大きく変動します)。
・公務員: 2015年10月以降、共済年金は厚生年金に統合されています。そのため、現在の公務員の方も厚生年金に加入しており、老後の年金は国民年金と厚生年金から構成されます。
ねんきん定期便で受給額を確認しよう
ご自身が将来どれくらいの公的年金を受け取れるかの目安は、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」で確認できます。これには、これまでの加入期間や保険料納付額に応じた年金見込み額が記載されていますので、必ず確認しておきましょう。
公的年金だけでは不足する部分をiDeCoで補う重要性

公的年金は老後の生活を支える大切な基盤ですが、多くの場合、それだけで「ゆとりある老後」を送るには不足が生じると言われています。この不足する部分を補うために、iDeCo(個人型確定拠出年金)が非常に重要な役割を果たします。
老後資金の「ギャップ」を埋める
総務省の家計調査から見る現実: 総務省の家計調査によると、夫婦二人世帯の平均的な生活費は月25万円程度、ゆとりある老後を送るためには月38万円程度が必要とも言われています。一方、公的年金の受給額は夫婦で平均22〜25万円程度です。
月数万円〜十数万円の不足: このことから、公的年金だけでは毎月数万円〜十数万円の不足が生じ、このギャップを埋めるための自助努力が不可欠であることがわかります。
総務省統計局 家 計 調 査 報 告 【家計収支編】2024年(令和6年)平均結果の概要
生命保険文化センター 老後の生活費はいくらくらい必要と考える?
iDeCoが不足を補う最適な理由
iDeCoは、この公的年金の不足部分を補うための、最も税制優遇が手厚い私的年金制度です。
・掛金が全額所得控除: 拠出した掛金が所得税・住民税の計算から全額控除されるため、現役時代の税金を減らしながら老後資金を準備できます。例えば、年収500万円の会社員が月2万円(年間24万円)拠出すれば、年間約4.8万円の節税になります。
・運用益が非課税: 運用中に得た利益に税金がかからないため、複利効果を最大限に活かして、効率的に資産を増やせます。
・受け取り時も税制優遇: 老後に受け取る際も、退職所得控除や公的年金等控除が適用され、税負担を抑えられます。
公的年金で得られない「現役時代の節税」と「運用益の非課税成長」をiDeCoで実現し、将来の不足を補うことができるのです。
老後資金計画全体におけるiDeCoの役割

老後の生活設計では、公的年金、iDeCo、そしてNISAなどの他の私的年金・資産形成制度をバランスよく組み合わせることが重要です。
「3階建て」の年金構造を意識する
老後資金の構造は、年金制度にiDeCoを加えて「3階建て」で考えると分かりやすいです。
・1階部分: 国民年金(すべての人)
・2階部分: 厚生年金(会社員・公務員)
・3階部分: 企業年金(企業型DC、DBなど)とiDeCo(個人型確定拠出年金)
公的年金(1階・2階)を土台とし、その上にiDeCoで自分自身で積み立てる年金(3階の一部)を築くことで、より強固な老後資金基盤を構築できます。
老後資金計画におけるiDeCoの位置づけ
・老後資金の「コア(核)」: iDeCoは原則60歳まで引き出せない資金拘束があるため、確実に老後資金として積み上げる部分として位置づけましょう。この資金拘束が、途中で使ってしまう誘惑を防ぎ、確実な資産形成を促します。
・NISAとの連携: iDeCoの掛金上限額(月額1.2万円〜6.8万円)では老後資金の目標に届かない場合や、老後資金以外にも資金の柔軟性を持たせたい場合は、NISAと併用しましょう。NISAはいつでも引き出し可能で、生涯1,800万円の非課税枠があるため、iDeCoを補完する形で柔軟な資産形成が可能です。
iDeCoで現役時代の節税メリットを最大限に活かし老後資金の土台を固め、NISAで柔軟な資産を増やしていく、という戦略が有効です。
・具体的な目標設定: 「公的年金とiDeCoで月額〇万円を目指す」「〇歳までにiDeCoで〇〇万円を準備する」など、具体的な目標を設定することで、モチベーションを維持しやすくなります。
まとめ:公的年金をiDeCoで補い、安心の老後を築こう
公的年金は老後の大切な収入源ですが、それだけで安心できるとは限りません。iDeCoは、公的年金だけでは不足する部分を補い、税制優遇を最大限に活用しながら老後資金を準備するための非常に有効なツールです。
・公的年金(国民年金・厚生年金)の見込み額を把握し、不足する金額を認識しましょう。
・iDeCoは、掛金控除、運用益非課税、受け取り時控除という3段階の税制優遇で、この不足分を効率的に補えます。
・NISAなど他の制度とも連携させ、全体としてバランスの取れた老後資金計画を立てることで、安心して豊かなセカンドライフを迎えることができるでしょう。
今日からあなたの公的年金を見直し、iDeCoを活用した老後資金計画を始めてみませんか。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。