FP資格取得のためのポイント
FP資格講座:FPとして知るべき「強制適用事業所」と「被保険者」の要件

社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、顧客のライフプランニングを支える上で欠かせない知識です。FPとして、会社の社会保険加入義務である「強制適用事業所」の条件に加え、その事業所で働く従業員が「被保険者」となるための要件を正しく理解することは必須といえるでしょう。
ここでは、FP試験対策と実務の両方に役立つ知識を、分かりやすく解説します。
会社の形態と規模で変わる、3つの強制適用条件
社会保険に会社が加入しなければならないかどうかは、主に以下の3つの条件で決まります。
・1. 法人なら規模に関係なく加入が義務
株式会社や合同会社、NPO法人など、法人として登記されている事業所は、原則として従業員の人数に関わらず、すべて社会保険への加入が義務付けられています。「従業員が社長一人だけ」という場合でも、このルールは適用されます。
・2. 個人事業所なら従業員5人以上が目安
法人ではない個人事業主の場合、従業員が「常時5人以上」いると強制適用の対象になります。ただし、すべての個人事業所が対象になるわけではありません。
・3. 一部の個人事業所は適用除外
上記2の「常時5人以上の個人事業所」であっても、以下の事業に該当する場合は、例外的に強制適用の対象外となります。
・第一次産業(農業、漁業、林業など)
・理美容業や飲食店、旅館など一部のサービス業
これらの事業を個人で営んでいる場合は、従業員が何人いても社会保険への加入は任意となります。ただし、法人化すればこのルールは適用されません。
被保険者となるための個人要件を徹底解説
強制適用事業所で働いていても、すべての人が自動的に被保険者になるわけではありません。労働時間・労働日数と適用除外の条件によって判定されます。
①4分の3基準(全事業所共通)
雇用形態に関わらず、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、同一事業所の通常の労働者(フルタイム)の4分の3以上である場合は被保険者となります。
・例: フルタイム労働者が週40時間・月20日勤務の企業では、週30時間・月15日以上で被保険者
・対象者: 正社員、契約社員、パート、アルバイト(雇用形態は問わない)
②特例ルール(従業員51人以上の事業所のみ)
働き方の多様化に伴い、パートやアルバイトといった短時間労働者も社会保険に加入するケースが増えています。以下の4つの条件をすべて満たす方は、社会保険への加入が義務付けられています。
・1週間の所定労働時間が20時間以上であること
・月額賃金が8.8万円以上であること
・2ヶ月を超える雇用が見込まれること
・勤務先の従業員数が51人以上であること
なお、今後はさらなる社会保険適用拡大も検討されており、将来的に企業規模要件や賃金要件の撤廃も検討されています。
知っておくべき年齢制限と適用除外
社会保険の被保険者には、以下の通り年齢制限や適用除外の条件があります。
・年齢制限: 厚生年金保険は70歳まで、健康保険は75歳までの方が対象となります。
・適用除外: 昼間学生は被保険者の対象から除外されます。また、短期雇用者や季節的業務従事者などで、雇用期間が2ヶ月以内であることが明確な場合は、適用除外となります。
まとめ:なぜこの知識が重要なのか
社会保険の知識は、顧客の給与明細を読み解き、将来の年金や医療保障をシミュレーションする上で欠かせない土台です。この記事で解説した強制適用事業所の条件と被保険者の要件は、その中でも最も基本的なルールです。
この知識を身につけ、顧客のライフプランをサポートできる頼れるFPを目指しましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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