FP資格取得のためのポイント
FP資格講座:退職所得控除の計算方法を解説

ファイナンシャル・プランナー(FP)の学習において、退職所得は重要なテーマです。退職金には、税負担を大幅に軽減する退職所得控除という制度が設けられています。ここでは、退職所得控除の仕組みと、FP試験でも問われる手取り額の計算方法を解説します。
退職所得控除とは?
退職所得控除とは、退職金から一定額を控除できる制度です。この控除額は、勤続年数によって計算され、給与所得などとは分離して税額が計算されます。これにより、退職所得にかかる税負担が大きく軽減されます。
退職所得控除を受けるには、原則として「退職所得の受給に関する申告書」または「退職所得申告書」を会社に提出する必要があります。
退職所得控除額の計算方法
退職所得控除額は、勤続年数に応じて以下の計算式で求められます。
・勤続年数20年以下の場合:
40万円 × 勤続年数(最低80万円)
・勤続年数20年超の場合:
800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年)
勤続年数に1年未満の端数がある場合は、1年に切り上げます。
退職所得の手取り額を計算する手順
退職所得の手取り額は、以下の3つのステップで計算します。
1. 退職所得控除額の計算
上記の計算式を使って、控除額を算出します。
2. 課税退職所得金額の計算
退職金から退職所得控除額を差し引いた後、その金額の2分の1が課税対象となります。
3. 手取り額の計算
課税退職所得金額に所得税・住民税の税率を乗じて税額を計算し、退職金総額から税額を引くことで手取り額がわかります。
計算例
以下の条件で、退職金の手取り額を計算してみましょう。なお、計算の際は、復興特別所得税と住民税の均等割および、調整控除については考慮しないものとします。
・退職金総額: 2,500万円
・勤続年数: 38年5ヶ月
ステップ1:退職所得控除額の計算
勤続年数が38年5ヶ月のため、39年に切り上げます。勤続年数が20年を超えるため、以下の計算式を適用します。
・800万円 + 70万円 × (39年 − 20年)
・800万円 + 70万円 × 19年
・800万円 + 1,330万円 = 2,130万円
ステップ2:課税退職所得金額の計算
・(2,500万円 − 2,130万円) × 2分の1
・370万円 × 2分の1 = 185万円
ステップ3:手取り額の計算
課税退職所得金額185万円にかかる所得税率(5%)と住民税率(10%)を計算します。
・所得税額:185万円 × 5% = 92,500円
・住民税額:185万円 × 10% = 185,000円
・手取り額:2,500万円 − (92,500円 + 185,000円) = 2,472万2,500円
まとめ
退職所得は、退職所得控除という大きな控除が適用されるため、税負担が他の所得よりも大幅に軽減されます。FPとして、お客様の退職金の手取り額を正確に計算し、セカンドライフの資金計画に役立てられるように、この制度を理解しておきましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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