FP資格取得のためのポイント
FP資格講座:不動産の譲渡所得を徹底解説!特例や計算方法を学ぶ

ファイナンシャル・プランナー(FP)の学習において、不動産の売却は重要なテーマです。土地や建物を売った際に発生する譲渡所得は、他の所得とは異なる独自の税制ルールが適用されるため、その計算方法を正確に理解しておく必要があります。
ここでは、土地の譲渡所得に特化した計算方法と、税負担を軽減する特例について解説します。
不動産の譲渡所得は「申告分離課税」
所得税の計算方法には、給与所得などと合算して税額を計算する「総合課税」と、他の所得と分離して単独で税額を計算する「申告分離課税」があります。
不動産の譲渡所得は、原則として申告分離課税が適用されます。これにより、給与所得などが高額であっても、不動産売却による所得税率が影響を受けることはありません。
短期譲渡と長期譲渡で税率が違う!所有期間の判定
不動産の譲渡所得は、売却した資産の所有期間によって税率が大きく異なります。所有期間は、「譲渡した年の1月1日時点」で判定します。
・短期譲渡所得(所有期間5年以下):
所得税30%、住民税9%の税率が適用されます。
・長期譲渡所得(所有期間5年超):
所得税15%、住民税5%の税率が適用されます。
このように、長期譲渡所得の方が税率が大幅に低くなります。土地や建物の売却を検討する際は、所有期間が5年を超えるタイミングを待つことで、税負担を大きく軽減できる可能性があります。
10年超所有軽減税率の特例
居住用財産(マイホーム)の所有期間が10年を超える場合、長期譲渡所得よりもさらに税率が低くなる「10年超所有軽減税率の特例」があります。この特例も、所有期間は売却した年の1月1日を基準に判定します。
この特例は、3,000万円特別控除とも併用できるため、譲渡益が3,000万円を超える場合に特に有効です。税率は以下の通りになります。
・課税譲渡所得金額のうち6,000万円以下の部分:
所得税10%、住民税4%
・課税譲渡所得金額のうち6,000万円超の部分:
所得税15%、住民税5%
なお、復興特別所得税の税率に関しては、この特例を利用した場合でも、所得税に対して2.1%が発生します。
譲渡所得の計算方法と税額の算出
譲渡所得金額は、以下の計算式で算出します。
・譲渡所得金額 = 収入金額 − (取得費 + 譲渡費用)
この譲渡所得金額をもとに、税額を計算します。
・所得税額 = 譲渡所得金額 × 税率
・住民税額 = 譲渡所得金額 × 税率
不動産譲渡における注意点
・取得費が不明な場合:代々引き継いだ土地などで取得費が不明な場合、譲渡価額の5%を概算取得費として計算します。
・譲渡所得の特別控除:マイホームの売却など、特定の要件を満たす場合にのみ、譲渡所得から3,000万円などを控除する特例制度が適用されます。ただし、この特別控除は**不動産の譲渡所得に適用される特例**であり、総合課税の譲渡所得に適用される50万円の控除とは別物です。
不動産の譲渡損失に関する特例
原則として、土地や建物の売却で損失が生じても、他の所得と相殺する「損益通算」や、翌年以降に繰り越す「繰越控除」はできません。
しかし、マイホーム(居住用財産)を譲渡した際に、以下の要件を満たす場合は、例外的に損益通算や繰越控除が認められる場合があります。これらの特例は、令和7年12月31日までの時限立法であるため、利用を検討する際は期限に注意が必要です。
・新住宅に買い替えた場合
マイホームを買い換えるために譲渡損失が生じた場合、所定の要件を満たせば、その損失を他の所得と損益通算・繰越控除できます。
・譲渡した旧住宅に住宅ローンが残っていた場合
マイホームを売却した時点で、住宅ローンが残っていた場合に譲渡損失が生じた場合も、所定の要件を満たせば損益通算・繰越控除が認められます。
まとめ
不動産の譲渡所得は、所有期間や特例の適用によって税額が大きく変わります。FPとして、お客様の税負担を軽減するための適切なアドバイスができるよう、これらのルールを正確に理解しておくことが重要です。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
金子賢司へのライティング・監修依頼はこちらから。ポートフォリオもご確認ください。