資産運用
長期投資とは?複利効果・リスク低減の仕組みと注意点をわかりやすく解説

長期投資とは、金融商品を数年から数十年にわたって保有し続ける投資手法で、金融庁のNISAガイドブックによると、国内外の株式・債券に分散投資した場合、保有期間5年では100万円が74万〜176万円と元本割れのリスクがある一方、保有期間20年では186万〜331万円と元本割れが確認されていません(1989年以降の実績データに基づくシミュレーション)。また、年金積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、2001年度から2024年度までの約24年間で累積収益額が約155兆円、年率約4%の運用収益を達成しています。この記事では、長期投資の基本的な仕組みから複利効果、リスク低減のメカニズム、実践する際の注意点まで解説します。
長期投資の基本的な仕組みと短期投資との違い

長期投資とは、一般的に10年以上の期間を前提として金融商品を保有し続ける投資手法を指します。ここでは短期投資との違いと、長期投資が推奨される背景を確認しましょう。
長期投資と短期投資の根本的な違い
短期投資は、数日から数ヶ月の間に売買を繰り返し、値動きの差額(キャピタルゲイン)を狙う手法です。価格が安いときに買い、高いときに売るという判断が求められるため、市場の動向を常に監視する必要があります。
一方、長期投資は企業や経済の成長にともなう資産価値の上昇と、配当・分配金の蓄積によって収益を得る手法です。日々の値動きに一喜一憂するのではなく、長い時間軸のなかで資産を育てていく考え方に基づいています。
政府広報オンラインでも、投資には元本割れのリスクがあるものの、「長期・積立・分散投資を行うことでリスクを減らす効果が期待できる」と説明されています。
出典:政府広報オンライン「『NISA』って何?わかりやすく解説」
長期投資が推奨される背景
長期投資が広く推奨される理由は、主に3つあります。1つ目は、保有期間が長くなるほどリターンが安定する傾向がある点です。2つ目は、複利効果によって運用益が指数関数的に増加する可能性がある点で、3つ目は、売買の頻度を抑えることで取引コストを低減できる点が挙げられます。
2024年から始まった新しいNISA制度では非課税保有期間が無期限化されました。金融庁は「非課税保有期間を気にすることなく、さらに長期投資を行いやすくなった」としており、制度面からも長期保有を後押しする環境が整った状態です。
複利効果:長期投資の最大のメリット

複利効果は長期投資のリターンを押し上げる最も重要な仕組みで、運用期間が長くなるほど「利息が利息を生む」効果が加速します。
複利と単利の違い
単利は元本に対してのみ利息がつく計算方法です。100万円を年利5%で運用した場合、毎年5万円ずつ増えるため、20年後には200万円(元本100万円+利息100万円)になります。
一方、複利は元本と過去の利息の合計額に対して利息がつく計算方法で、同じ条件では20年後に約265万円になります。単利との差額は約65万円で、この差は運用期間が長くなるほど拡大していく仕組みです。
「72の法則」で複利効果を実感する
複利効果をわかりやすく把握するための計算式に「72の法則」があります。72÷年利(%)=資産が2倍になるまでのおおよその年数という簡易計算式です。
・年利1%の場合:72÷1=約72年
・年利3%の場合:72÷3=約24年
・年利5%の場合:72÷5=約14.4年
この法則からわかるように、わずかな利回りの差が長期間では想像以上の結果の違いを生みます。投資信託の信託報酬(運用コスト)が0.5%違うだけでも、20年、30年の運用では数十万円の差になり得るため、長期投資ではコストの低い商品を選ぶことが運用成果に直結します。
保有期間が長いほどリスクが安定する理由

金融庁が公表しているシミュレーションデータは、長期保有によるリスク低減効果を具体的に示しています。ここでは保有期間とリターンの関係を確認しましょう。
金融庁のシミュレーション:5年 vs 20年
金融庁のNISAガイドブックでは、1989年以降のデータに基づき、国内外の株式・債券に分散投資した場合の収益率分布を公表しています。
・保有期間5年:100万円が74万〜176万円の範囲で変動(元本割れのケースあり)
・保有期間20年:100万円が186万〜331万円の範囲で推移(元本割れなし、年率2〜8%の収益)
保有期間が5年の場合は年率マイナス8%からプラス14%まで幅広い結果が出ているのに対し、20年では年率2〜8%に収束しています。保有期間を長く取ることで、短期的な市場変動が平均化され、リターンのばらつき(リスク)が小さくなる傾向がこのデータから確認できるでしょう。
GPIFの約24年間の運用実績が示すもの
日本の年金積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、国内外の株式・債券に各25%ずつ配分する基本ポートフォリオで長期分散投資を実践しています。
GPIFの公表データによると、2001年度の市場運用開始以降、2024年度までの名目の運用利回りは年平均で4.20%、同期間の賃金上昇率の平均は0.18%でした。累積収益額は約155兆円です。
この間にはリーマンショック(2008年度、約▲30%)やコロナショック(2020年度Q1)のような急落局面もありました。しかし、四半期単位では損失が出ている時期があっても、長期的にはそれらを乗り越えて累積でプラスの収益を確保してきた実績があります。これは長期・分散投資の有効性を実績で示す代表的な事例といえるでしょう。
ドルコスト平均法:積立×長期投資の組み合わせ

長期投資と積立投資を組み合わせることで、購入タイミングのリスクを分散する「ドルコスト平均法」の効果も得られます。
ドルコスト平均法の仕組み
ドルコスト平均法とは、商品の値動きにかかわらず、毎月一定額を継続的に購入する方法です。政府広報オンラインでは「定期・定額で投資を行うことで、時期による値動きに応じて、価格が高い時期には少なく、価格が低い時期には多く投資を行う」手法と説明されています。
たとえば、毎月3万円ずつ投資信託を購入する場合、基準価額が1万円のときは3口、5,000円に下がったときは6口を購入できます。価格が下がった局面では購入口数が増えるため、平均購入単価を引き下げる効果が期待できるのが特徴です。
積立投資の長期的な効果
金融庁のNISA活用事例では、月3万円を40年間つみたて投資枠で積立投資した場合のシミュレーションが紹介されています。投資元本は1,440万円ですが、運用収益によって1,800万円の非課税保有限度額の範囲内でも着実な資産形成が期待できることが示されています。
積立投資は「いつ始めるか」というタイミングの問題を解消する効果があるため、投資経験が浅い方にとっても取り組みやすい手法です。新NISAのつみたて投資枠(年間120万円)を活用すれば、運用益が非課税となるため、複利効果を最大限に活かせます。
長期投資で注意すべきリスクと限界

長期投資にはメリットが多い一方で、万能ではありません。過信を避けるために知っておくべき注意点を整理します。
長期保有すれば必ず利益が出るわけではない
金融庁のシミュレーションはあくまで過去の実績データに基づくものであり、将来の投資成果を予想・保証するものではありません。特定の国や資産クラスに偏った投資をしていた場合、長期保有しても元本を回復できないケースは過去にも存在しています。
日本の株式市場を例に挙げると、日経平均株価は1989年12月の最高値(38,915円)から長期間にわたって低迷し、この水準を回復したのは2024年でした。つまり、日本株式だけに集中投資していた場合、約34年間にわたって元本割れの状態が続いていた計算になります。長期投資の効果を高めるためには、Day 58で解説した分散投資と組み合わせることが不可欠です。
途中で売却が必要になるリスク
長期投資の前提は「長期間保有し続けること」ですが、生活環境の変化により予定より早く資金が必要になるケースは十分に考えられます。失業や病気、離婚、家族の介護など、想定外の出費が発生した場合、値下がりした局面で売却を余儀なくされると損失が確定してしまいます。
このリスクを回避するために重要なのが、投資に回す前に生活防衛資金を確保しておくことです。一般的には生活費の6ヶ月〜1年分が目安とされていますが、自営業やフリーランスの方は公的保障の範囲が会社員よりも限定的なため、より多めに確保しておくと安心でしょう。
インフレリスクと投資の必要性
「リスクが怖いから預貯金だけにする」という判断は、実はインフレリスクに対して無防備な状態を意味します。物価が年2%上昇する環境では、預金金利がそれを下回る限り、実質的な購買力は年々低下していきます。
GPIFの運用目標が「賃金上昇率+1.9%」と設定されているのは、年金積立金の実質的な価値を維持するためです。個人の資産形成においても同様に、インフレ率を上回る運用利回りを確保することが、長期的な生活水準の維持につながります。
長期投資を続けるための実践的なポイント

長期投資のメリットを理解しても、実際に10年、20年と続けることは簡単ではありません。ここでは途中で挫折しないための実践的なポイントを紹介します。
「見ない」「触らない」が基本戦略
長期投資において最も避けるべきは、市場が急落した際にパニック売りをしてしまうことです。GPIFも四半期単位では損失が出ている時期がありますが、リバランス(資産配分の調整)を行いながら保有を継続することで長期的なプラスを維持しています。
日常的に投資口座の残高を頻繁にチェックすると、値下がり局面で不安が増幅されやすくなります。積立設定を済ませたら、「月に1回程度の確認」にとどめ、日々の値動きに振り回されない姿勢が長期投資の成功につながるでしょう。
ライフプランに合わせた投資期間の設定
長期投資を始める際は、「何年後に、いくら必要か」という目標を明確にしておくことが重要です。教育費なら子どもの入学時期、老後資金なら退職時期というように、資金が必要になるタイミングから逆算して投資期間を設定しましょう。
必要な時期が近づいてきたら、徐々にリスクの低い資産(預貯金や債券)に移していく「出口戦略」の計画も忘れてはなりません。せっかく長期間かけて育てた資産を、必要なタイミングの直前に急落で大きく減らしてしまうリスクを避けるためです。
公的保障を把握してから投資額を決める
投資に回せる金額を正しく判断するためには、まず公的保障の内容を確認することが出発点です。会社員であれば、傷病手当金(給与の約3分の2、最長18ヶ月)や高額療養費制度(自己負担の上限額)があるため、医療費のために過度に現金を積み上げておく必要性は低くなります。
一方、自営業やフリーランスの方は傷病手当金の対象外であり、遺族年金も遺族基礎年金のみと会社員に比べて限定的です。こうした公的保障の違いを把握したうえで、生活防衛資金と投資に回す資金の配分を決めることで、無理なく長期投資を継続できる家計の土台が整います。
まとめ:長期投資は「時間を味方につける」資産形成の王道
長期投資は、複利効果によるリターンの拡大と、保有期間の延長によるリスクの安定化という2つのメリットを活かした資産形成の手法です。金融庁のシミュレーションでは保有期間20年で元本割れが確認されておらず、GPIFの約24年間の運用実績も年率約4%のプラスを維持しています。
ただし、長期投資は万能ではなく、特定の資産に偏った投資では長期保有しても損失が続くケースがあること、途中で資金が必要になるリスクがあることも忘れてはなりません。生活防衛資金を確保し、公的保障の内容を把握したうえで、分散投資と組み合わせて実践することが、長期投資の効果を最大限に引き出す条件です。
新NISAの非課税保有期間が無期限化された今こそ、「時間を味方につける」長期投資を検討してみてはいかがでしょうか。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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