生命保険
貯蓄型生命保険を解約する前に考えるべきこと:損しないための判断基準

「保険料の支払いが厳しくなってきたけど、解約すると損するって本当?」
貯蓄型生命保険は、万が一の保障と貯蓄を兼ね備えた便利な保険です。しかし、保険料の負担が重くなったり、より効率的な資産形成を求めて見直しを検討する際、「解約」という選択肢が頭に浮かぶかもしれません。安易に解約してしまうと、これまで積み立てたお金が戻ってこず、大きな損失を被るリスクがあります。
この記事では、貯蓄型生命保険を解約する前に考えるべきことを解説します。解約返戻金の仕組みと元本割れリスク、解約以外の選択肢(払済保険、延長保険、契約者貸付など)、そして解約時の税金や他の金融商品との比較まで。後悔しないための判断基準を提案します。
解約返戻金の仕組みと元本割れリスク

貯蓄型生命保険(終身保険、養老保険など)の大きな特徴は、解約した際に「解約返戻金」が支払われることです。
解約返戻金とは?
・仕組み: 支払った保険料の一部が、将来の保険金支払いのために積み立てられていくものです。
・特徴: 解約返戻金は、支払った保険料の総額に比例して増えていきますが、契約からの経過年数や保険料の払込期間によって、その金額は大きく変動します。
ちなみに、保険業界では(CV(しーぶい))と呼んだりします。キャッシュバリューの頭文字を取ったものです。
元本割れのリスクに注意
解約返戻金が、これまで支払った保険料の総額を下回ってしまう状態を「元本割れ」と呼びます。
・元本割れが起こる時期:契約から間もない時期に解約すると、保険会社が受け取った保険料から、経費や保障に必要な費用を差し引くため、解約返戻金が払込保険料総額を大きく下回るのが一般的です。
・払込期間中の解約:払込期間が完了する前に解約した場合も、元本割れする可能性が非常に高いです。
後悔しないためのポイント:
貯蓄型生命保険を解約する際は、まず保険会社に解約返戻金の金額を問い合わせ、払込保険料総額と比較しましょう。元本割れしている場合は、安易な解約は避けるべきです。
解約以外の選択肢:契約を維持しながら負担を軽減

保険料の支払いが厳しくなったり、他の資産形成を優先したい場合でも、解約以外の選択肢があります。
払済保険(保障期間はそのまま、保障額を減額)
・仕組み:これまでの解約返戻金を元手に、保険料の払い込みを中止し、保障額を減らす代わりに保障期間を維持する制度です。
活用法:
・保険料負担がゼロに: 以降の保険料の支払いが不要になります。
・保障は継続: 保障額は減りますが、保障期間は維持されます。
デメリット:保障額が減額されるため、万が一の備えが不足する可能性があります。
延長保険(保障額はそのまま、保障期間を短縮)
・仕組み:これまでの解約返戻金をもとに、保障額は変えずに、保障期間を短くする制度です。
活用法:
・保険料負担がゼロに: 以降の保険料の支払いが不要になります。
・保障額は維持: 元の保障額は維持されるため、一定期間は手厚い備えができます。
デメリット:保障期間が短くなるため、保障が必要な時期に保障がなくなるリスクがあります。
契約者貸付(解約せずに資金調達)
・仕組み:貯蓄性のある保険の解約返戻金の範囲内で、お金を借りることができる制度です。
活用法:
・老後の急な出費や、一時的な資金不足の際に活用できます。
・保険契約を解約せずに済むため、保障を維持したまま資金調達ができます。
注意点:借り入れた金額には、一般的に年2%~6%程度の金利がかかります。
解約時の税金、他の金融商品との比較

解約する際は、税金や他の金融商品との比較も重要です。
解約時の税金
・一時所得:解約返戻金が、支払った保険料の総額を上回った場合、その差益は「一時所得」として所得税・住民税の課税対象となります。
計算方法:
・(解約返戻金 − 払込保険料総額 − 50万円(特別控除)) × 1/2
・この計算式で課税対象額が算出されます。
例外的なケース:保険期間が5年以下の一時払養老保険等で、解約返戻金が払込保険料を上回る場合、その差益は「源泉分離課税(20.315%)」の対象となることがあります。
他の金融商品との比較
iDeCoやNISA:
・貯蓄型生命保険は、iDeCoやNISAといった非課税制度に比べて、運用効率が低い場合があります。
・iDeCoやNISAは、元本割れリスクがある一方で、市場の成長とともに大きなリターンが期待できます。
・貯蓄を重視し、運用効率を求めるのであれば、iDeCoやNISAといった非課税制度も検討しましょう。
まとめ:解約は最後の手段、「損しない」選択を
貯蓄型生命保険の解約は、後悔しないためにも、最後の手段として考えるべきです。
・解約返戻金の金額を必ず確認し、元本割れしていないかチェックしましょう。
・払済保険、延長保険、契約者貸付など、解約以外の選択肢を検討し、保険料の負担を軽減しながら契約を維持しましょう。
・解約返戻金が利益を出していた場合、税金がかかることにも注意が必要です。
この記事を参考に、あなたのライフプランに合わせた最適な選択をし、「損しない」保険戦略を立てましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。