資産運用
投資の始め方を初心者向けに解説|口座開設からNISA活用まで5つのステップ

投資を始めるには、証券会社や銀行でNISA口座を開設し、投資信託などの金融商品を購入する手順が基本です。金融庁の調査によると、2025年12月末時点でNISA口座数は約2,826万口座に達し、累計買付額は約71兆円にのぼっています。2024年に制度が拡充された新NISAでは、非課税保有期間が無期限化され、年間投資枠が最大360万円に拡大されたことで、幅広い世代が資産形成に取り組みやすい環境が整いました。ただし、投資を始める前には家計の状態を整え、生活防衛資金の確保と公的保障の把握を済ませておくことが前提条件です。この記事では、投資を始める前の準備から口座開設、商品選び、運用開始後の注意点まで、5つのステップで解説します。
投資を始める前に確認すべき3つの前提条件

投資は「余裕資金」で行うのが原則であり、家計の土台が整っていない段階で始めると、生活に必要な資金まで市場リスクにさらしてしまう危険があります。ここでは、投資を始める前に確認しておきたい3つのポイントを見ていきましょう。
生活防衛資金を確保しているか
生活防衛資金とは、失業や病気などで収入が途絶えた場合に備えるお金のことです。一般的には生活費の3〜6か月分が目安とされており、会社員であれば3か月分、自営業者であれば6か月〜1年分を預貯金で確保しておくのが望ましいでしょう。
生活防衛資金が不十分な状態で投資を始めると、急な出費が必要になったときに投資商品を値下がりしたタイミングで売却せざるを得なくなり、損失が確定してしまうリスクがあります。投資はあくまで「当面使う予定のないお金」で行う点を徹底してください。
公的保障の内容を把握しているか
会社員や公務員であれば、公的医療保険の高額療養費制度(年収約370万〜約770万円の場合、月額の自己負担上限は80,100円+α)や、傷病手当金(給与の約3分の2を最長18か月支給)といった制度があります。これらの公的保障を把握することで、民間保険に過剰に加入して家計を圧迫していないかの見直しができ、結果として投資に回せる余裕資金が生まれるケースも少なくありません。
投資の原資は「節約して捻出する」だけでなく、「不要な支出を見直すことで確保する」という発想も重要です。
高金利の借入がないか
カードローンやリボ払いの残高がある場合、その金利は年15%前後に達することもあります。投資で期待できるリターンが年3〜5%程度であることを考えると、高金利の借入を返済することが、事実上もっとも確実で効率的な「投資」といえるでしょう。住宅ローンのように低金利で長期にわたる借入は別として、消費者ローン系の高金利借入がある場合は、完済を優先するのが合理的な判断になります。
証券口座とNISA口座の開設手順

投資を始めるには、まず証券会社や銀行で口座を開設する必要があります。金融庁によると、NISA口座は日本国内に住む18歳以上の方であれば開設が可能で、1人につき1口座のみ開設できます。
金融機関の選び方
口座を開設する金融機関は、証券会社と銀行の大きく2つに分かれます。証券会社は投資信託の取扱本数が多く、株式投資も可能という特徴がある一方、銀行は投資信託のみの取扱いが中心となるケースが多い傾向にあります。
金融機関を選ぶ際に確認しておきたいポイントは主に以下のとおりです。
・つみたて投資枠の対象商品(投資信託)の品揃え
・売買手数料や口座管理料の有無
・積立の設定頻度(毎月・毎週・毎日など)
・サポート体制(電話相談、店舗相談の有無)
・ポイント還元やクレジットカード決済の対応状況
NISA口座は1人1口座しか開設できないため、複数の金融機関を比較してから決定するのが望ましいでしょう。なお、金融機関の変更は年単位で可能ですが、変更したい年に一度でもNISA枠で買い付けを行っていると、その年の変更はできない点に注意が必要です。
口座開設に必要な書類と手続きの流れ
口座開設には、マイナンバー確認書類と本人確認書類の2点が必要です。多くの証券会社ではオンラインで手続きが完結し、最短2営業日程度で口座が開設されます。
手続きの基本的な流れは、金融機関の公式サイトから口座開設を申し込み、本人確認書類をアップロードまたは郵送し、税務署の審査を経てNISA口座が開設される、という3段階になります。税務署での審査は、他の金融機関でNISA口座を開設していないかを確認するために行われるものです。
NISAの基本的な仕組みと2つの投資枠

2024年1月に拡充された新しいNISA制度は、投資で得た利益が非課税になる制度で、通常は約20%かかる税金が免除される仕組みです。ここでは制度の基本構造を確認しましょう。
つみたて投資枠と成長投資枠の違い
新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2種類があり、金融庁によると両方の併用が可能です。
・つみたて投資枠:年間120万円まで。対象は金融庁の基準を満たした投資信託に限定。長期の積立・分散投資に適した商品設計
・成長投資枠:年間240万円まで。対象は上場株式や投資信託など幅広い商品。ただし整理・監理銘柄、信託期間20年未満の投資信託、毎月分配型の投資信託等は除外
両枠を合わせた年間投資枠は最大360万円で、生涯を通じた非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円が上限)となっています。商品を売却した場合は、翌年以降に簿価(取得金額)の分だけ非課税投資枠が復活し、再利用が可能です。
非課税のメリットを具体的に考える
通常の課税口座で投資信託を運用し、100万円の利益が出た場合、約20万円の税金がかかります。一方、NISA口座であればこの100万円がまるごと手元に残る計算です。長期にわたって複利効果が働くほど、非課税のメリットは積み上がっていくことになります。
たとえば毎月3万円をつみたて投資枠で20年間積み立て、年利4%で運用できた場合、投資元本720万円に対して運用益は約380万円になる試算です。課税口座であれば約76万円の税金がかかるところ、NISAなら約380万円の運用益がそのまま受け取れることになります。
初心者が投資を始める際の商品選びの考え方

NISA口座を開設したら、次は「何に投資するか」を決めるステップに入ります。投資が初めての場合は、つみたて投資枠を活用した投資信託の積立から始めるのが合理的な選択肢の一つといえるでしょう。
つみたて投資枠の対象商品の特徴
つみたて投資枠で購入できるのは、金融庁が定めた基準を満たす投資信託に限定されています。具体的には、販売手数料がゼロ(ノーロード)であること、信託報酬(運用管理費用)が一定水準以下であること、毎月分配型でないことなどが条件となっています。
つまり、つみたて投資枠の対象商品は制度設計の段階で「長期・積立・分散投資に適さない商品」があらかじめ除外されている仕組みです。投資初心者にとっては、商品選びのハードルが下がる利点があります。
インデックス型とアクティブ型の違い
投資信託には、日経平均株価やS&P500などの指数に連動することを目指す「インデックス型」と、運用担当者の判断で指数を上回る成績を目指す「アクティブ型」があります。
インデックス型は信託報酬が低い傾向にあり、年0.1%台の商品も存在します。アクティブ型は信託報酬が年1%前後になるケースが多く、長期運用では手数料の差がリターンに影響を及ぼすことがあるでしょう。金融庁のNISA効果検証によると、つみたて投資枠の買付額のうち約88%がインデックス型の投資信託に集中しており、多くの利用者がインデックス型を選択している実態が見て取れます。
国内と海外の分散をどう考えるか
投資対象の地域についても検討が必要です。日本国内だけに投資するよりも、先進国や新興国を含むグローバルに分散された投資信託を選ぶことで、特定の国や地域の景気変動リスクを軽減できます。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、国内債券・国内株式・外国債券・外国株式の4資産に各25%ずつ分散する基本ポートフォリオを採用し、2001年度から2024年度までの累積収益額は約164兆円、年率約4%の運用成績を残しています。個人の投資においても、複数の資産クラスと地域に分散することがリスク管理の基本となるでしょう。
投資を始めた後に心がけたい3つのポイント

口座を開設して投資を始めた後も、適切な運用を続けるために意識しておきたい点があります。
短期的な値動きに振り回されない
投資を始めると、毎日の値動きが気になるものですが、短期的な価格変動は長期投資においては通過点にすぎません。金融庁のNISAガイドブックによると、国内外の株式・債券に分散投資した場合、保有期間5年ではリターンにばらつきがある一方、保有期間20年では元本割れが確認されていないとのことです(1989年以降のシミュレーション)。
相場が下落した局面でも積立を続けることで、平均取得単価を下げる効果(ドルコスト平均法)が期待できるため、一時的な下落を理由に積立をやめてしまうのはもったいない判断になりかねません。
定期的な見直しと情報収集を続ける
投資は「始めたら終わり」ではなく、ライフステージの変化に応じた見直しが欠かせません。結婚や住宅購入、退職などのイベントがあれば、投資に回せる金額やリスク許容度も変化するものです。年に1回程度は資産配分を確認し、当初の方針と大きくかけ離れていないかチェックしましょう。
また、NISA制度自体も税制改正によって内容が変わることがあります。金融庁のNISA特設ウェブサイトなど公的機関の情報を定期的に確認しておくことが望ましいでしょう。
「すぐに始めるべき」とは限らない場合もある
投資は早く始めるほど複利効果を長く享受できるとされていますが、先に述べたとおり、生活防衛資金の確保や高金利借入の返済が済んでいない場合は、投資を急ぐよりも家計の土台を整えることを優先すべきです。
また、投資に対する基本的な知識がないまま始めると、値動きに一喜一憂して早期に売却してしまったり、理解していない商品を購入してしまうリスクもあります。金融庁のNISA特設サイトやJ-FLEC(金融経済教育推進機構)のコンテンツなどを活用し、最低限の知識を身につけてから投資を始めても遅くはありません。
投資詐欺への注意喚起

投資への関心が高まるなかで、投資詐欺の被害も増加傾向です。金融庁は、「金融商品取引業者」として登録されていない業者による投資勧誘への注意を呼びかけており、無登録業者からの「確実に儲かる」「元本保証」といった勧誘は詐欺の可能性が高いとしています。
正規の金融商品取引業者であるかどうかは、金融庁の「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で確認できます。「必ず値上がりする」「リスクゼロで年利10%」といった話は、投資の原則に反する勧誘であり、関わらないことが重要です。
出典:金融庁「NISAを知る」
出典:金融庁「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」
まとめ
投資を始めるには、生活防衛資金の確保と公的保障の把握という準備を整えた上で、証券会社や銀行でNISA口座を開設し、つみたて投資枠を活用して投資信託を積み立てるのが基本的な流れです。新NISAでは非課税保有期間が無期限化され、年間投資枠も最大360万円に拡大されたことで、少額からでも長期的な資産形成に取り組みやすい制度設計となっています。投資には元本割れのリスクがある一方、長期・積立・分散の3原則を守ることでリスクを抑えながらリターンを積み上げていくことが可能です。まずは家計の土台を固めるところから、無理のない金額でスタートしてみてください。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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