ブログ
年金と失業保険、賢くもらうには?年齢別の併給ルールと退職時期のコツ

経済的な基盤をしっかりと築くためにも、それぞれの制度を理解し、最大限に活用したいと考えるのは自然なことです。
実は、年金と失業保険は、条件次第で同時受給が可能です。しかし、そのルールは年齢や手当の種類によって異なり、知らずに進めると受給額に差が出てしまう可能性もあります。
この記事では、年金と失業保険を効果的に併用するための具体的な方法を詳しく解説します。あなたの状況に合わせた最適な選択ができるよう、ぜひ最後までお読みください。
そもそも、年金と失業保険ってどんな制度?

まずは、それぞれの制度の基本的な目的と対象について確認しておきましょう。
失業保険(雇用保険の基本手当)
再就職を支援するための制度です。働く意思と能力がありながら、職に就けていない方に対して生活をサポートするために支給されます。
原則として、離職日以前2年間のうち、雇用保険の被保険者期間が12カ月以上ある方が対象となります。主に65歳未満の方が受給対象です。
年金
高齢期の生活を支えるための社会保障制度で、主に老齢基礎年金と老齢厚生年金があります。原則として65歳から支給が開始されます。
これまでの加入期間や納付状況によって、受け取れる金額が決定されます。
年齢別に解説!年金と失業保険の同時受給ルール

ここが最も重要なポイントです。あなたの年齢によって、年金と失業保険を同時に受け取れるかどうかの条件が大きく異なります。
65歳以上で退職する場合
「65歳を過ぎて退職したけど、失業給付はもらえるの?」という疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。
65歳以上で退職した場合は、失業保険の「基本手当」の代わりに「高年齢求職者給付金」が支給されます。そして、この高年齢求職者給付金は、老齢年金と併給が可能です。
高年齢求職者給付金は、雇用保険の加入期間に応じて、基本手当の日額の30日分または50日分が一括で支給される点が特徴です。
65歳未満の基本手当と比較すると日数は少ないものの、受給年齢の上限や回数の制限がないため、再就職を繰り返しても条件を満たせば受け取ることができます。
60歳~64歳で退職する場合
「60歳で定年退職したけど、年金ももらいながら失業給付も受け取りたい」と考える方も多いでしょう。
この年齢層は、年金と失業保険の調整が最も複雑になるため、注意が必要です。
- 「特別支給の老齢厚生年金」と失業保険(基本手当) 残念ながら、この2つは併給できません。ハローワークで求職の申し込みを行い、失業保険を受給している期間は、特別支給の老齢厚生年金が全額支給停止となります。
- 「繰り上げ老齢厚生年金」と失業保険(基本手当) こちらも併給できません。ただし、老齢年金を繰り上げ受給している場合でも、「老齢基礎年金」は失業保険と併給が可能です。年金の一部は受け取れることになります。
- 「高年齢雇用継続給付」と老齢厚生年金 この2つは併給が可能です。高年齢雇用継続給付は、60歳から64歳で賃金が60歳到達時の75%未満になった場合に支給される手当です。ただし、年金の一部(最高で賃金の6%相当額)が支給停止される点に留意が必要です。
60歳未満で退職する場合
60歳未満の場合、老齢年金の受給資格がないため、年金と失業保険の同時受給はできません。失業保険の受給に専念し、次の仕事探しに集中しましょう。
賢く満額受給を目指す!「退職時期」が重要

年金と失業保険、双方をできるだけ多く受け取るためには、退職するタイミングが非常に重要になります。
効果的な方法の一つとして、65歳になる直前(誕生日の前々日まで)に退職し、失業保険の基本手当の受給手続きを65歳前に開始するという選択肢があります。
この方法を選択することで、以下の利点が考えられます。
- 65歳未満で退職したとみなされるため、失業保険の基本手当を最大150日分(自己都合退職の場合)受給できる可能性があります。
- 65歳以降は老齢年金も受け取れるようになります。
- 基本手当の受給が終了すれば、特別支給の老齢厚生年金の受給が再開される可能性があります。
ただし、この選択には以下の点に注意が必要です。
- 65歳前の退職は、勤続年数に応じた退職金の金額に影響が出る可能性があります。
- 失業保険の受給には、ハローワークでの求職活動や失業認定を定期的に受ける義務があります。
これらの点を十分に考慮し、ご自身の状況に合わせた最適な退職時期を検討することが重要です。
その他の年金・手当との併給について

老齢年金や失業保険以外にも、特定の条件を満たせば受け取れる可能性がある手当があります。
- 失業保険と障害年金は同時に受給可能 病気や怪我により生活に支障がある場合に支給される障害年金は、失業保険と併給できます。障害基礎年金(国民年金加入者が対象)と障害厚生年金(厚生年金加入者が対象)があり、それぞれ支給額や対象となる等級が異なります。
- 失業保険と遺族年金は同時に受給可能 被保険者が亡くなった場合に遺族が受け取れる遺族年金も、失業保険と併給できます(2006年(平成18年)度から65歳以上が対象)。遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。
これらの手当を受給する際は、ハローワークや年金事務所に申告義務がある場合がありますので、必ず事前に確認しましょう。
よくある疑問を解消!Q&A

Q1. 失業保険をもらうと年金が減るって本当ですか?
A. 併給できない期間は、一時的に年金の支給が停止されることがあります。しかし、年金額そのものが減額されるわけではありませんのでご安心ください。基本手当の受給が終了すれば、年金の支給が再開されます。
Q2. 年金と失業保険、どちらを優先すべきですか?
A. これは、個々の状況によって異なります。現在の給与額、勤務形態、生年月日、退職時の年齢など、様々な要素で最適な選択は変わります。一般的には、失業保険の基本手当の方が日額が高くなるケースが多いですが、長期的な視点では年金受給も重要です。ご自身の具体的な状況をシミュレーションして比較検討することをおすすめします。
Q3. 失業保険は何歳までもらえますか?
A. 失業保険の基本手当は65歳未満の方が対象です。65歳以降に退職した場合は、「高年齢求職者給付金」という一時金に切り替わります。
まとめ
年金と失業保険の同時受給は、一見複雑に見えるかもしれませんが、年齢や手当の種類に応じたルールを理解することで、より有利に活用することが可能です。
- 65歳以上であれば「高年齢求職者給付金」と老齢年金は併給可能です。
- 60歳~64歳の方は特に注意が必要です。「特別支給の老齢厚生年金」や「繰り上げ老齢厚生年金」と失業保険は基本的に併給できませんが、「高年齢雇用継続給付」とは併給できる場合もあります(年金の一部停止あり)。
- 満額に近い受給を目指すなら、65歳になる直前の退職が有効な選択肢となり得ます。
- 障害年金や遺族年金は、失業保険と併給可能です。
複雑な制度内容や手続きに不安を感じる場合は、ハローワークや年金事務所など、公的機関の相談窓口を利用することが推奨されます。個別の状況に応じた具体的なアドバイスを受けることで、安心して退職後の生活設計を進められるでしょう。
ご自身の状況に合わせて最適な選択をし、これからの人生を経済的に安定させていきましょう。