公的年金制度
夫婦で考える老後資金:共同目標と役割分担のヒント

老後資金の準備は夫婦にとって共通の課題ですが、総務省の調査によると65歳以上の夫婦世帯では月額約3.4万円の収支不足が生じており、計画的な準備が欠かせません。本記事では、公的データに基づいて夫婦で取り組む老後資金計画の具体的な方法を解説します。
夫婦二人三脚で挑む老後資金計画の重要性

老後の生活費は、夫婦の働き方や生活スタイルによって大きく異なります。総務省統計局が公表した「家計調査2024年」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の月額消費支出は平均256,521円となっています。
同世帯の実収入は月額252,818円で、このうち社会保障給付(主に年金)が225,182円と実収入の約89%を占めています。実収入から税金・社会保険料などの非消費支出(30,356円)を差し引いた可処分所得は222,462円となり、消費支出との差額は約34,059円の不足が生じています。
出典:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年平均結果の概要」
こうした現状を踏まえると、夫婦で協力して老後資金を準備することの重要性がわかります。お互いの価値観を共有し、具体的な目標額を設定して計画的に貯蓄することが、安心できる老後生活への第一歩となるでしょう。
夫婦で共有すべき「理想の老後像」とは

老後資金の準備を始める前に、まず夫婦で「どのような老後を送りたいか」という理想像を共有することが大切です。
お互いの価値観と生活スタイルの確認
老後の生活費は、生活スタイルによって大きく変わります。旅行や趣味を楽しみたい場合と、静かに自宅で過ごす場合では、必要な資金額も異なってきます。夫婦それぞれが大切にしたい価値観について、具体的に話し合いましょう。
・旅行や趣味にどの程度費用をかけたいか
・住み替えや住宅リフォームの希望はあるか
・子どもや孫への経済的サポートをどう考えるか
・地域活動やボランティアへの参加を希望するか
介護や医療に関する考え方の共有
年齢を重ねるにつれて、医療費や介護費用の負担が増える可能性があります。万が一、介護が必要になった場合にどのような選択肢を希望するか、事前に話し合っておくことで、必要な資金の見積もりもより正確になります。
在宅介護を希望する場合と、介護施設への入居を検討する場合では、必要な費用が大きく異なります。こうした将来の可能性についても、夫婦で率直に意見を交換しておくとよいでしょう。
夫婦での「老後資金共同目標額」の算出方法

世帯全体の収入・支出の把握
老後資金の目標額を設定するには、まず現在の家計状況を正確に把握することが必要です。月々の収入と支出を詳細に記録し、退職後にどの項目がどのように変化するかを予測しましょう。
一般的に、老後は現役時代と比べて交通費や被服費、交際費などが減少する傾向にあります。一方で、医療費や趣味・娯楽費は増加する可能性があります。こうした変化を考慮して、老後の月額支出を見積もることが重要です。
公的年金見込み額の合算
夫婦で受け取れる公的年金の見込み額を確認することは、老後資金計画の基礎となります。年金額は加入している年金制度や加入期間、現役時代の収入によって異なります。
ねんきん定期便やねんきんネットを活用して、夫婦それぞれの年金見込み額を確認しましょう。日本年金機構のウェブサイトでは、将来の年金額を試算するツールも提供されています。
夫婦の働き方のパターンによって、受給できる年金額には大きな差が生じます。例えば、夫婦ともに会社員として厚生年金に加入していた場合と、夫が会社員で妻が専業主婦だった場合では、世帯全体の年金受給額が異なります。自身の状況に応じた見込み額を確認することが大切です。
不足額の明確化
老後の月額支出見込み額から公的年金の見込み額を差し引くことで、毎月の不足額が算出できます。この不足額に、老後の生活期間(例えば30年間)を乗じれば、準備すべき老後資金の総額がわかります。
先ほど紹介した総務省の調査では、平均的な夫婦世帯で月額約3.4万円の不足が生じています。仮に老後30年間(65歳から95歳まで)でこの不足額が続くと仮定すると、約1,226万円の資金準備が必要という計算になります。
ただし、これはあくまで平均的な数値であり、実際に必要な金額は各家庭の生活スタイルや価値観によって異なります。夫婦で話し合った「理想の老後像」に基づいて、自分たちに必要な金額を算出することが重要です。
役割分担のヒント:得意分野を活かして効率的に貯める

家計管理担当と資産運用担当
老後資金の準備を効率的に進めるには、夫婦それぞれの得意分野を活かした役割分担が有効です。例えば、日々の家計管理が得意な方が支出の見直しや貯蓄計画を担当し、投資や金融商品に詳しい方が資産運用を担当するといった分担方法があります。
ただし、どちらか一方だけが全ての管理を担うのではなく、定期的に情報を共有し、夫婦で状況を確認し合うことが大切です。お互いが現状を把握していることで、万が一の際にも対応がスムーズになります。
iDeCo・新NISAなどの非課税枠の賢い使い分け
老後資金の準備には、税制優遇が受けられる制度を活用することが効果的です。2024年1月から始まった新NISAとiDeCo(個人型確定拠出年金)は、夫婦それぞれが利用できる非課税制度として注目されています。
新NISAは、つみたて投資枠(年間120万円)と成長投資枠(年間240万円)を併用でき、非課税保有限度額は1,800万円(そのうち成長投資枠は1,200万円まで)となっています。非課税保有期間が無期限化されたため、長期的な資産形成に適しています。
出典:金融庁「NISAを知る」
一方、iDeCoは公的年金に上乗せできる私的年金制度で、掛金が全額所得控除の対象となるため、現役時代の税負担を軽減できるメリットがあります。2024年12月の制度改正により、企業年金等に加入している方の掛金上限額が月額2万円に引き上げられました。
夫婦それぞれがこれらの制度を活用することで、世帯全体での非課税メリットを最大化できます。例えば、夫婦ともに新NISAとiDeCoを併用すれば、より大きな金額を非課税で運用することが可能になります。
扶養内の働き方と年金への影響
配偶者が扶養内で働く場合、社会保険の加入状況によって将来の年金額に影響が出ることがあります。扶養内で働く場合でも、一定の要件を満たせば厚生年金に加入でき、将来の年金額を増やすことができます。
老後資金を効率的に準備するには、こうした働き方と年金の関係も理解しておくことが重要です。扶養の範囲内で働くか、厚生年金に加入して働くかは、家庭の状況や将来の希望に応じて検討しましょう。
定期的な「夫婦会議」のすすめ:計画の見直しと情報共有

老後資金計画は、一度立てたら終わりではありません。ライフステージの変化や経済状況の変動に応じて、定期的に見直すことが大切です。
半年に一度、あるいは年に一度など、定期的に「夫婦会議」の時間を設けることをおすすめします。会議では以下のような項目を確認しましょう。
・現在の貯蓄残高と目標額との差
・資産運用の状況と運用成績
・家計の収支状況と改善点
・ライフプランの変更(住宅購入、子どもの進学など)
・公的年金の見込み額の変更
こうした定期的な確認を通じて、計画が順調に進んでいるかをチェックし、必要に応じて修正することができます。また、夫婦で情報を共有することで、お互いの理解と協力も深まります。
計画の見直しの際には、金融機関が提供するシミュレーションツールや、ファイナンシャルプランナーへの相談も活用するとよいでしょう。専門家の視点を取り入れることで、より現実的で実現可能な計画を立てることができます。
まとめ:夫婦の絆を深める老後資金計画
老後資金の準備は、夫婦で協力して取り組むべき重要な課題です。公的データによると、平均的な夫婦世帯では月額約3.4万円の収支不足が生じており、計画的な資金準備が欠かせません。
まずは夫婦で「理想の老後像」を共有し、具体的な目標額を設定することから始めましょう。世帯全体の収支を把握し、公的年金の見込み額を確認した上で、不足額を明確にすることが重要です。
役割分担では、それぞれの得意分野を活かし、新NISAやiDeCoなどの非課税制度を夫婦で活用することで、効率的な資産形成が可能になります。そして、定期的な「夫婦会議」で計画の進捗を確認し、必要に応じて見直しを行いましょう。
老後資金計画は、単なる数字の管理ではありません。夫婦で将来について語り合い、共通の目標に向かって協力する過程そのものが、二人の絆を深める機会となります。今日から、パートナーと一緒に老後資金について話し合ってみてはいかがでしょうか。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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