自動車保険
動物との接触事故|車両保険は使える?補償の範囲と注意点

走行中に動物が飛び出してきて車と接触する事故は少なくありません。その際に気になるのが「車両保険で補償されるのか」という点です。本記事では一般型と限定型(エコノミー型)の補償範囲の違いや、免責金額・等級ダウンといった注意点を整理し、さらに飼い主がいる場合の法的責任や行政統計による発生状況も解説します。
動物との接触事故で車両保険は使える?

動物との接触事故は、多くの場合で車両保険の補償対象になります。ただし、契約している車両保険の種類や事故の状況によって扱いが異なります。
一般型と限定型(エコノミー型)の補償範囲
一般型は幅広い偶然の事故を対象としており、動物との接触も原則補償されます。
一方、限定型(エコノミー型)は補償範囲が限定されており、典型的には「火災・盗難・自然災害・飛来物・落下物」などに限られます。動物との接触が「飛来物」と判断されれば対象となることもありますが、動物を避けて単独で衝突した場合などは補償外となる可能性があります。
補償されないケースと注意点

動物との接触事故でも、次のような場合は補償が受けられない、あるいは注意が必要です。
免責金額による自己負担
修理費が免責金額以下の場合、保険金は支払われません。軽い損傷では自己負担となることがあります。
等級ダウンによる保険料の増加
車両保険を使うと翌年以降の等級が下がり、保険料が上がります。小規模な修理では、自己負担の方が長期的に有利なケースもあります。
限定型で補償外となるケース
動物を避けて縁石やガードレールにぶつかった場合など、事故の形態によっては限定型(エコノミー型)で補償されないことがあります。
動物との接触事故で保険を使うべきかの判断基準

保険を使うか自己負担にするか迷ったときは、次の点を目安に判断するとよいでしょう。
・修理費と免責金額の比較:修理費が免責を超え、さらに将来の保険料増加を含めても保険利用が合理的かどうか。
・損害の規模:ライト・センサー・ラジエータなど高額部品に及ぶかどうか。
・契約内容:一般型か限定型(エコノミー型)か。
・動物の所有者:飼い主が特定できる場合は、民法第718条に基づき賠償請求できる可能性がある。野生動物の場合は請求先がないのが一般的。
・全損か分損か:修理費が時価評価額を超える場合は全損扱いとなり、保険を使う方が合理的。
事故時の対応フロー(現場〜請求まで)

事故後の対応を正しく行うことで、スムーズな保険手続きや賠償請求につながります。
・安全確保:二次事故防止のため車を安全に停め、ハザードや停止表示板を使用する。
・警察への通報:物損・人身を問わず通報し、事故証明を取得する。
・証拠の記録:損傷箇所や現場状況を写真に残し、ドラレコ映像も保存。
・保険会社への連絡:速やかに連絡し、必要書類を整える。
・自治体への依頼:道路上の動物処理は自治体や道路管理者が担当。
動物との接触事故の発生状況(最新データ)

行政機関の統計からは、動物との接触事故が特定の時期や時間帯に集中していることがわかります。
北海道警察によると、2024年(令和6年)のエゾシカ関係交通事故は5,460件で、統計開始以来最多を更新。月別では10月が最多(23.1%)、次いで11月が多いと報告されています。
また北海道庁のまとめでは、事故の約4割が10〜11月に発生し、時間帯は16時〜24時に8割以上が集中しています。薄暮や夜間の走行には特に注意が必要です。
飼い主がいる場合の賠償責任と法的根拠

飼い主がいる動物との接触事故では、法的に責任を問える可能性があります。
民法第718条では「動物の占有者(飼い主など)は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う」と定められています。管理を任されている人も同様に責任を負う場合があります。事故状況によっては過失割合が調整されるため、実際に請求する場合は専門家に相談すると安心です。
まとめ|動物との接触事故では車両保険が鍵
動物との接触事故は一般型ならほとんどが補償対象ですが、限定型(エコノミー型)では事故の形態次第で対象外になることもあります。免責金額や等級ダウンの影響を踏まえた上で、修理費用や時価評価額との比較を行い、保険を使うか慎重に判断しましょう。飼い主がいる場合は民法第718条を根拠に賠償請求できる可能性がある点も覚えておくと安心です。
出典(行政機関の一次情報)
・北海道警察「エゾシカが関係する交通事故の発生状況(令和6年中)」
・北海道「エゾシカとの交通事故防止について」
・e-Gov法令検索「民法(第718条:動物の占有者等の責任)」
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。