個人年金保険
個人年金保険とは?老後資金を準備するための基礎知識

個人年金保険のしくみと必要性

個人年金保険は、保険会社と契約して一定期間保険料を支払い、あらかじめ決めた年齢から年金として受け取る制度です。期間は「一定年数」または「一生涯」から選べます。公的年金は生活の基礎部分を支えますが、それだけでは不足しがちです。その不足分を補い、老後にゆとりを持たせるための方法として個人年金保険は活用されています。
公的年金との違い

公的年金は国が運営し、加入は義務で原則として一生涯支給されます。個人年金保険は保険会社が運営し、加入は任意。支給期間や金額は契約によって決まります。つまり、公的年金が生活の土台、個人年金保険は上乗せの役割を果たします。
種類ごとの特徴

・確定年金:決めた期間は必ず支給。亡くなっても残りの期間は家族が受取可能。
・有期年金:生きている間だけ支給。保険料は割安だが、早く亡くなると受取総額は少なくなる。
・終身年金:一生涯支給され、長生きしても安心。ただし保険料は高め。
老後資金の必要額シミュレーション(例)

1.夫婦世帯
生活費26万円 − 年金22万円 = 不足4万円
4万円 × 12か月 × 20年 = 約960万円
2.独身世帯
生活費18万円 − 年金12万円 = 不足6万円
6万円 × 12か月 × 25年 = 約1,800万円
3.夫婦で早期退職(60歳退職)
60〜65歳の無年金期間:約1,560万円
65歳以降の不足分:約960万円
合計:約2,520万円
※これらはあくまで目安であり、物価変動や医療費、ライフスタイルによって大きく変動します。
パターン別の選び方

不足が比較的少ない夫婦世帯は15〜20年の確定年金が向いています。独身世帯は長寿リスクに備えて終身年金やインフレ対応型を選ぶと安心です。早期退職を予定している場合は、無年金期間を一時金で確保し、65歳以降は年金形式で受け取る組み合わせが有効です。
契約前に確認しておきたいこと(基礎控除改正と制度変更リスクも含む)

まず「返戻率」を確認しましょう。途中解約では100%を下回ることが多く、元本割れの可能性がありますが、満期まで続ければ100%を超えることもあります。ただし、インフレが進むと実質的な価値は下がる点には注意が必要です。
税金については、個人年金保険の受取は「雑所得」に分類され、公的年金等控除は使えません。年金受取額から必要経費を差し引いた額が所得となり、基礎控除などを超えると課税されます。
2025年からは基礎控除が48万円から58万円に引き上げられる予定で、この改正により少額の受取なら課税を免れるケースが増えます。例えば、年間80万円受取で必要経費控除後の所得が64万円の場合、2024年までは課税対象ですが、2025年以降は課税対象外となります。
もっとも、この基礎控除額は今後も物価や制度の見直しによって変わる可能性があります。長期契約の場合、税制改正や制度変更によって受取額の実質価値や税負担が変わるリスクを考慮しておくことが重要です。
また、保険料の支払期間は退職前に終える設計が望ましいでしょう。退職後も払い続ける設定は家計負担が重くなるため注意が必要です。
FPからのワンポイントアドバイス
個人年金保険は、老後資金の「不足分」を補う手段のひとつです。すべてを保険で準備するのではなく、つみたてNISAやiDeCoと組み合わせれば、インフレ対策や税制メリットを活かしやすくなります。制度や税制は今後も変わるため、加入後も定期的な見直しを行い、ライフプランに合わせて最適化することが安心につながります。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。