税金(一般的な内容)
個人事業主の経費にできるもの・できないものとは?判断基準・家事按分・減価償却をわかりやすく解説

個人事業主やフリーランスの税金は「収入−必要経費=所得」で計算されるため、必要経費を正しく計上することが節税の基本となります。国税庁のタックスアンサーNo.2210によると、必要経費に算入できるのは「総収入金額を得るために直接要した費用」と「販売費、一般管理費その他業務上の費用」の2種類に限られています。一方で、所得税や住民税は経費にならず、罰金・科料も経費にできません。自宅兼事務所の家賃や光熱費のように、プライベートと事業の両方にかかわる費用は「家事按分」によって事業使用分のみを経費にできますが、合理的な根拠が必要です。この記事では、経費にできるもの・できないものの具体例から、家事按分の考え方、減価償却の基本ルールまで解説します。
必要経費の基本ルール:経費として認められる2つの条件

個人事業主が確定申告で経費として計上できる「必要経費」には、国税庁が定める明確な基準があります。ここでは必要経費の定義と、計上する際の基本的なルールを確認しましょう。
必要経費に算入できる2つの費用
国税庁No.2210によると、事業所得・不動産所得・雑所得の計算上、必要経費に算入できるのは以下の2種類です。
・総収入金額に対応する売上原価その他、総収入金額を得るために直接要した費用の額(仕入代金、外注費、材料費など)
・その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額(人件費、家賃、通信費、広告宣伝費、減価償却費など)
つまり、「事業の収入を得るために必要な支出であること」が経費の大前提であり、プライベートの支出は原則として経費にはなりません。
経費の計上時期は「債務の確定」が基準
必要経費は「その年に支払った金額」ではなく、「その年に債務が確定した金額」が基準となります。国税庁No.2210では、債務が確定しているとは以下の3つの要件をすべて満たす場合としています。
・その年の12月31日までに債務が成立していること
・その年の12月31日までに具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること
・その年の12月31日までに金額が合理的に算定できること
たとえば、12月に外注先に仕事を依頼して作業が完了した場合、支払いが翌年1月になったとしても、12月分の必要経費として計上できます。逆に、翌年分の家賃を12月に前払いしても、原則としてその年の経費にはなりません。
経費にできるものの主な具体例

個人事業主が必要経費として計上できる費目は多岐にわたりますが、いずれも「事業との関連性」が求められます。ここでは代表的な経費項目を整理します。
事業に直接かかる費用
事業活動に直接必要な支出は、もっとも明確に経費として認められるカテゴリーです。
・仕入原価・外注費:商品の仕入代金、業務委託先への支払い
・旅費交通費:取引先訪問の交通費、出張の宿泊費、業務で使用した有料道路代
・通信費:事業用の携帯電話代、インターネット回線費用、郵便代
・消耗品費:文房具、用紙、取得価額10万円未満のパソコン・備品
・広告宣伝費:ホームページ制作費(更新前提の一般的なサイト)、チラシ印刷代、名刺作成費
・接待交際費:取引先との飲食代、贈答品代(業務上の必要性があるもの)
・研修費・書籍代:業務に必要なセミナー受講料、専門書の購入費
事業運営にかかる費用
直接的な営業活動以外でも、事業運営に必要な費用は経費になります。
・地代家賃:事務所・店舗の賃料、駐車場代(自宅兼事務所の場合は家事按分が必要)
・水道光熱費:事務所の電気代、ガス代、水道代(自宅兼用の場合は事業使用割合で按分)
・損害保険料:事業用資産の火災保険、自動車保険の事業使用分
・租税公課:個人事業税(全額経費)、固定資産税(事業用部分のみ)、印紙税、自動車税(事業用車両分)
・支払手数料:税理士報酬、弁護士報酬、銀行の振込手数料
・業務用資産の借入金利息:事業用の設備購入のために借り入れた資金の利息
国税庁No.2210では、「業務のための借入金の利息は必要経費になる」と明記されています。ただし、不動産所得で赤字が出た場合、土地取得のための借入金利息に相当する損失額は他の所得と損益通算できない点に注意が必要です。
経費にできないものの主な具体例

事業に関連するように見えても、税法上は経費として認められないものがあります。特に間違えやすい項目を確認しましょう。
税金の種類によって経費になるもの・ならないものが異なる
税金はすべて経費になるわけではありません。所得税と住民税は必要経費にならないと国税庁No.2210で明記されています。これは所得税や住民税が「所得に対して課される税金」であり、事業活動に必要な費用ではないためです。
一方、個人事業税は全額が必要経費になります。固定資産税については、事業用の部分に限って経費に算入できます。自宅兼事務所の場合、固定資産税も家事按分の対象となります。
・経費になる税金:個人事業税、固定資産税(事業用部分)、自動車税(事業用車両)、印紙税、登録免許税
・経費にならない税金:所得税、住民税、相続税、贈与税
生計を一にする親族への支払い
個人事業の場合、生計を一にする配偶者やその他の親族に支払う地代家賃・給与は原則として必要経費にならないとされています。受け取った側もその金額を所得として認識しません。これは所得税法第56条により、同一生計の家族間の取引を必要経費と認めると、家族内で所得を分散させて税負担を軽減できてしまうためです。
ただし例外として、Day 51で解説した青色事業専従者給与(届出書の提出が必要)であれば、支払った全額を必要経費にできます。白色申告の場合は事業専従者控除(配偶者86万円、その他50万円)が適用されます。
その他の経費にならないもの
国税庁No.2210では、以下の支出も経費として認められないと例示されています。
・罰金・科料・過料:交通違反の反則金、各種法令違反に対する罰金など
・公務員に対する賄賂:政策上、必要経費として認めることで不正行為を助長することを防ぐため
・家事費:事業主個人の食費、被服費(業務上特殊な制服等を除く)、医療費、娯楽費、生命保険料(所得控除の対象であり経費ではない)
・国民健康保険料・国民年金保険料:必要経費ではなく「社会保険料控除」として所得控除の対象
家事按分の考え方と合理的な算出方法

自宅兼事務所で事業を行っている場合、家賃や光熱費は事業とプライベートの両方にかかわる「家事関連費」に該当し、事業使用分を合理的に区分する「家事按分」が必要になります。
家事関連費の経費算入が認められる条件
国税庁No.2210によると、家事関連費のうち必要経費になるのは「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額」に限られます。
所得税基本通達45-2では、事業使用割合が50%を超えるかどうかが判定基準の一つとされていますが、50%以下であっても必要な部分を明らかに区分できる場合は経費に算入して差し支えないとされています。つまり、事業使用割合が20%や30%であっても、合理的な根拠に基づいて区分できれば経費計上は可能です。
代表的な家事按分の基準
税務調査で説明を求められた際に合理的と認められるためには、客観的な基準を使うことが重要です。
・家賃・固定資産税:自宅の総床面積に占める事業専用スペースの面積割合で按分するのが一般的です。たとえば総面積80㎡のうち事業用スペースが20㎡であれば、按分比率は25%になります。
・電気代・インターネット回線費用:事業の使用時間や使用日数に基づいて按分するのが合理的です。1日8時間事業で使用し、プライベートの使用が4時間であれば、8÷12=約67%が按分比率の目安になります。
・自動車関連費用:ガソリン代、駐車場代、自動車保険料などは、走行距離や使用日数で按分します。業務用の走行距離を記録するドライブレコーダーや運転日報を活用すると、客観的な根拠を残しやすくなります。
家事按分の根拠となる記録は、日常的に残しておくことが重要です。税務調査では按分比率の合理性が問われるため、「なんとなく半分」といった曖昧な計算では否認されるリスクがあります。
減価償却の基本ルール:10万円・20万円・30万円の3つの基準

パソコンや車両など、事業に使う高額な資産は購入年に全額を経費にできるとは限りません。国税庁No.2100によると、取得価額に応じて経費化の方法が異なります。
取得価額10万円未満は全額経費
使用可能期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満のものは、購入した年に全額を必要経費にできます。文房具や少額の備品はこのルールで処理するのが一般的です。
10万円以上20万円未満は「一括償却資産」として3年均等償却が可能
取得価額が10万円以上20万円未満の資産については、3年間で均等に償却する「一括償却資産」の方法を選ぶことができます。この方法は月割り計算が不要なため、年の途中で購入しても取得価額の3分の1をその年の経費にできる点がメリットです。
青色申告者は30万円未満の「少額減価償却資産の特例」を活用できる
青色申告を行っている個人事業主は、取得価額が10万円以上30万円未満の資産について、購入した年に全額を必要経費にできる「少額減価償却資産の特例」を利用できます。年間の合計取得価額300万円が上限となっていますが、パソコンやプリンターなどの事業用機器の購入時に活用することで、早期に経費化して節税効果を得られます。
なお、この特例は令和8年3月31日までに取得した資産が対象です。また、30万円以上の資産は法定耐用年数に基づいて減価償却する必要があり、パソコンであれば4年、自動車(普通車)であれば6年が法定耐用年数の目安になります。
経費計上で注意すべきポイント

経費の判断は一律に決められるものではなく、個別の状況や業種によって異なります。ここでは実務上よくある注意点を整理します。
「経費になるかどうか」は業種・状況によって変わる
同じ支出でも、業種や目的によって経費になるかどうかの判断が異なるケースがあります。
たとえば飲食代について考えてみましょう。事業主個人の昼食代はプライベートの支出(家事費)であり、経費にはなりません。しかし、取引先との打ち合わせを兼ねた食事代であれば接待交際費として経費になります。フードライターや料理研究家が取材・研究目的で飲食した場合は、取材費・研究費として経費計上が認められる余地があります。
衣服代も同様です。通常の私服は経費になりませんが、作業着や特定の制服など、業務でのみ使用することが明らかな衣服は経費として認められます。「経費になる・ならない」を品目名だけで一律に判断するのではなく、「この支出は事業の収入を得るために必要か」という視点で個別に検討する姿勢が欠かせません。
領収書・帳簿の保存は必須
経費を計上するためには、その支出を証明する領収書やレシートの保存が欠かせません。2024年1月からは電子帳簿保存法の電子取引データ保存が義務化されており、メールやWeb上で受け取った請求書・領収書は電子データのまま保存する必要があります。
青色申告の場合、帳簿の保存期間は法定帳簿が7年、その他の書類は5年です。領収書の裏面や備考欄に「○○社との打ち合わせ」「△△案件の取材」など、事業との関連性を示すメモを残しておくと、税務調査の際にスムーズに説明できます。
国民健康保険料や国民年金保険料は「経費」ではなく「所得控除」
個人事業主が負担する国民健康保険料や国民年金保険料は、必要経費ではなく「社会保険料控除」として所得控除の対象です。経費として帳簿に計上するのではなく、確定申告書の所得控除欄に記載して控除を受ける形になります。この違いを混同すると、帳簿上の経費が過大になり、税務調査で指摘される可能性があるため注意しましょう。
まとめ:経費の判断は「事業との関連性」が基本
経費にできるかどうかの判断は、「事業の収入を得るために直接必要な支出であるか」が基本です。国税庁No.2210で示されている通り、売上原価や販売費・一般管理費は必要経費になりますが、所得税・住民税・罰金・家事費は経費になりません。
自宅兼事務所の費用は家事按分によって事業使用分を経費にでき、高額な資産は取得価額に応じた減価償却のルールに従う必要があります。青色申告者は30万円未満の少額減価償却資産の特例を活用でき、白色申告と比べて早期に経費化できる点もメリットです。
経費の判断に迷う場合は、「支出の目的」「事業との関連性」「客観的な記録の有無」の3点を基準に検討し、不明な点は税務署の電話相談窓口や税理士に相談することをおすすめします。
出典:国税庁「No.2210 必要経費の知識」
出典:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」
出典:国税庁「No.1350 事業所得の課税のしくみ」
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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