火災保険
住宅火災の件数と原因別傾向【電気機器火災の増加と最新統計から学ぶ対策】

住宅火災は長期的には減っているものの、全国で今なお年間1万件規模。しかも大規模な火災は冬季に偏在し、高齢者の被害が目立ちます。
本稿は、総務省消防庁の速報値(概数)と確定値をきちんと分けて参照しつつ、原因別のトレンドや焼損の実態、住宅用火災警報器の普及状況を一続きの物語として編み直し、最後に火災保険と日々の対策のアドバイスをさせていただきます。
住宅火災の年間発生件数と長期的な推移

消防庁が公表した令和6年(1〜12月)概数では、総出火件数は37,036件、うち建物火災20,908件。建物火災の約半分を住宅火災が占めています。数字は速報段階であり、後日確定値が公表されます。
消防庁「令和6年(1~12月)における火災の概要(概数)」
では長い時間軸で見るとどうでしょう。
確定値ベースでは、総出火件数は平成25年(2013年)48,095件から令和5年(2023年)38,672件へ減少。予防啓発や住宅設備の進歩の成果が、緩やかな右肩下がりとして現れています。
令和6年版 消防白書(資料編)
地域を切り取ると、その差がさらに鮮明です。東京消防庁管内では、平成で最も多かった9年(1997年)の7,026件に対して、30年(2018年)は3,973件と、住宅火災が約43%減。都市部でも確かな改善が積み重なってきました。東京消防庁「第2章 住宅火災の実態」
焼損の実態:全損・半損・一部損という“火災の程度”を読む

件数でだけでは、火災の被害の大きさまでは見えません。
全国統計では全損・半損・一部損の割合が公開されていないため、火災の損害の程度(大きさ)については、地域データから拾ってみました。
東京都の直近データでは、全体の中で全焼・半焼が縮小し、部分焼やぼやが拡大。直近例では全焼2.3%・半焼2.1%・部分焼14.4%・ぼや81.2%という構成です(東京都の値であり全国平均ではありません)。
火災が発生しても、初期段階でくい止められた火災が増えていると考えられます。東京消防庁「第1章 火災の概要」
原因別トレンド:生活の変化が映す“電気機器火災”

令和6年(概数)の主因は、例年通りたばこ・たき火・こんろが並びます。
しかし、その列に割って入るように、電気機器火災がランキングに入ってきている点は要注目です。
前年度の2,205件から2,548件へ――これは前年比15.6%増。高齢世帯の増加・機器の長期使用といった要因が、火災統計にも反映され始めています。
消防庁「令和6年(1~12月)火災の概要(概数)」
また、火災が発生すれば、人的被害が生じる可能性があることも忘れてはいけません。
令和4年版 消防白書によると、死者(放火自殺者等除く)の約46%が「逃げ遅れ」となっています。年齢別にみると、放火自殺者と除く火災による死者数の74.2%が65歳以上の高齢者ということを考えると、高齢者が逃げ遅れて死亡する可能性が高いと考えられます。
同白書は、高齢者は、とりわけ避難支援・見守り・住環境を工夫する必要性が高いことを示しているといえるでしょう。令和4年版 消防白書
さらに、季節性についても知っておくと、より対策も立てやすいでしょう。
東京都では、焼損面積の大きい火災の約半数が12月〜3月に集中。寒さによる火気の使用増加が、背景にあると考えられます。
東京消防庁「第1章 火災の概要」
火災発生原因の傾向を押さえて有効な対策を

火災発生リスクを抑える有効な対策の1つが住宅用火災警報器の設置です。
消防庁の調査では設置率81.6%(平成30年時点)まで普及しましたが、電池切れ・故障による不作動は少なくありません。
寝室・階段など要所への適正設置と、定期的な作動確認――それだけで、夜間の「気づきの遅れ」を大きく減らせます。
消防庁「住宅用火災警報器の設置率等」
火災保険による備えも忘れずに
それだけ対策を施しても、ついうっかりや、類焼(もらい火)などで火災が発生する可能性があり、リスクをゼロにすることはできません。万が一のときに備えて、火災保険に加入しておきましょう。
すでに加入している方は、補償が有効になっているか、補償内容が自身の想定したものになっているかを確認しておくことが大切です。保険証券や見積書などに、担当者の連絡先があるため、自身で判断がつかないときは、連絡をしてアドバイスを受けるのもおすすめです。
まとめ:数字を暮らしへ――火災保険と“いま”できること
統計をただ読むだけでは数字の羅列にすぎませんが、読み解き方しだいで日々の行動が変わります。全国は減少傾向、それでも住宅火災は毎年確実に起き、電気機器火災が増加傾向にあります。
しかし、東京都の構成比が示すように、初期段階で止められる火災は着実に増えています。だからこそ、住宅用火災警報器の点検・更新、冬季の暖房まわりの点検、管理、逃げ遅れがないよう、避難導線の確認を、今日から習慣にしておきましょう。
出典:
・総務省消防庁「令和6年(1~12月)における火災の概要(概数)」
・令和6年版 消防白書(資料編)
・令和4年版 消防白書(死者の経過別内訳)
・東京消防庁「第2章 住宅火災の実態」
・東京消防庁「第1章 火災の概要」
・消防庁「住宅用火災警報器の設置率等」
※各統計の数値は、定期的に更新されますので、詳しくは最新の統計をご確認ください。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。