ライティングについて
他者記事の「監修・校閲フロー」:品質を劇的に向上させる修正プロセス

金融・保険分野のWebメディアにおいて、記事の正確性は読者からの信頼を左右する生命線といえます。誤字脱字のチェックだけでなく、法改正への対応や約款の誤読修正など、専門家による監修・校閲がなければ気づけない誤りは数多く存在するものです。本記事では、CFP(ファイナンシャル・プランナー)として17年以上の実務経験を持つ筆者が実践している、金融記事の品質を劇的に向上させる監修・校閲フローを公開します。
金融記事における監修・校閲の重要性

Googleの検索品質評価ガイドラインでは、金融・医療・法律などの分野を「YMYL(Your Money or Your Life)」と位置づけ、より高い品質基準を求めています。この分野の記事は、読者の経済的意思決定や生活に直接影響を与えるため、専門家による執筆または監修が事実上必須となっています。
誤情報がもたらすリスク
金融記事における誤情報は、読者に経済的損失をもたらす可能性があります。例えば、年金の受給開始年齢や保険の給付条件に誤りがあれば、読者が誤った判断を下す原因となりかねません。一度インターネット上で拡散された誤情報は訂正が困難であり、メディアの信頼性を損なうリスクも伴います。
SEO・AIO対策としての監修
専門家による監修は、検索エンジン最適化(SEO)やAI検索最適化(AIO)においても重要な役割を果たしています。Googleは2017年からファクトチェック機能をリリースしており、コンテンツの正確性を重視する姿勢を明確にしてきました。専門家の監修を受けた記事は、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の観点から高く評価される傾向にあります。
監修・校閲の具体的なフロー

効果的な監修・校閲を実施するためには、体系的なフローを確立することが欠かせません。以下では、筆者が実践している5段階の監修プロセスについて解説します。
第1段階:構成・情報源の確認
まず記事全体の構成を確認し、情報の出典が適切かどうかを検証します。金融記事においては、一次情報として公的機関のデータを使用することが原則となります。具体的には以下の情報源を優先的に参照します。
・金融庁の公式サイトおよび監督指針
・厚生労働省の統計データ・制度解説
・日本年金機構の公式情報
・生命保険協会・日本損害保険協会のガイドライン
・国税庁の税制情報
二次情報や民間サイトの情報のみを根拠としている箇所があれば、公的機関の一次情報に置き換えるよう指摘を行います。
第2段階:数値データの精査
金額、割合、日付などの数値データは特に慎重な確認が必要です。年金額や保険料、税率などは毎年改定されることがあり、執筆時点では正確でも公開時には古い情報となっている可能性も存在します。数値の確認においては、以下の点に注意を払います。
・参照している統計データの調査年度
・制度改正による数値の変更有無
・計算式の正確性
・四捨五入や端数処理の整合性
第3段階:制度・法令の正確性確認
金融・保険に関する制度は頻繁に改正されるため、記事に記載されている制度内容が最新の法令に基づいているかを確認することが重要となります。この段階での確認事項は後述の「法改正への対応」で詳しく解説します。
第4段階:表現の適正性チェック
金融商品に関する記事では、表現方法にも注意が必要です。金融商品取引法や保険業法では、誇大広告や断定的判断の提供が禁止されています。「必ず儲かる」「絶対に損しない」といった表現はもちろん、リスク説明が不十分な記載も問題となり得ます。
第5段階:最終確認と修正提案
すべてのチェックを終えた後、修正が必要な箇所をリストアップし、具体的な修正案とともに提示します。単に「誤り」と指摘するだけでなく、正確な情報と出典を添えることで、執筆者が速やかに修正できる環境を整えます。
法改正への対応

金融・保険分野では法改正が頻繁に行われており、監修者には最新の法令動向を把握する能力が求められます。ここでは、直近の主要な法改正について解説しながら、監修時にどのような点に注意すべきかを説明します。
2025年保険業法改正のポイント
2025年5月30日に成立した改正保険業法は、2021年から2023年にかけて発生した損害保険業界の不祥事を受けて制定されました。この改正では、特定大規模乗合損害保険代理店に対する体制整備義務の創設や、保険会社等から保険契約者等への過度な便宜供与の禁止などが盛り込まれています。
監修においては、改正前の規定に基づいて書かれた記事がないかを確認し、必要に応じて最新の法令に沿った内容へ修正を求めることが重要です。公布日である2025年6月6日から1年以内に施行されるため、2026年以降の記事では改正後の内容を反映する必要があります。
監督指針改正への注意
法律本体の改正だけでなく、金融庁の監督指針改正にも注意が必要です。監督指針は法的拘束力こそありませんが、金融庁による検査や行政処分の判断基準となるため、実務上は法令と同等の重要性を持ちます。特に比較推奨販売に関する説明義務や、保険代理店に対する監査体制については、2025年以降大きく変更される予定です。
年金・税制の制度改正
年金制度や税制も毎年のように改正が行われる分野といえます。例えば、新NISA制度の導入(2024年)や、iDeCoの拠出限度額変更など、読者の資産形成に直接関わる制度変更は特に正確な情報提供が求められます。監修時には、記事中の制度解説が最新の情報に基づいているかを必ず確認します。
約款の誤読修正

保険記事において特に注意が必要なのが、約款内容の正確な解釈です。約款は法律用語で書かれていることが多く、一般のライターが誤読してしまうケースが少なくありません。
よくある約款の誤読パターン
監修業務で頻繁に遭遇する誤読パターンには、以下のようなものがあります。
・免責事由の見落とし:保険金が支払われる条件だけを記載し、支払われない条件(免責事由)への言及がない
・待機期間の未記載:がん保険の90日間免責期間など、契約後すぐには保障が開始されない商品の特性が説明されていない
・給付条件の誤解:入院給付金の支払い日数制限や、手術給付金の対象となる手術の範囲を正確に理解していない
・解約返戻金の説明不足:特に外貨建て保険において、為替リスクや市場価格調整の影響が十分に説明されていない
生命保険協会ガイドラインに基づく確認
生命保険協会は「生命保険商品に関する適正表示ガイドライン」を公表しており、募集用資料の表示ルールを定めています。監修においては、このガイドラインに沿った適切な表示がなされているかを確認することが求められます。
具体的には、保障内容のメリットを表示する場合には、保険金が支払われない期間や年齢制限などの条件も明記されているか、一部分だけを強調して読者に誤解を与える表現になっていないかといった点をチェックします。
出典:生命保険協会「生命保険商品に関する適正表示ガイドライン」
損害保険の募集文書確認
損害保険についても、日本損害保険協会が「募集文書等の表示に係るガイドライン」を策定しています。同一の保険種目では、すべての募集文書で同一の用語・表現を使用することや、8ポイント以上の活字を使用することなど、具体的な表示基準が定められています。
出典:日本損害保険協会「募集文書等の表示に係るガイドライン」
品質を向上させる修正プロセス

監修・校閲の成果を最大化するためには、修正プロセス自体を効率的に設計することが重要となります。以下では、品質向上に直結する具体的な修正プロセスを紹介します。
チェックリストの活用
監修の質を安定させるためには、チェックリストの活用が効果的です。生命保険協会の「生命保険商品の募集用の資料等の審査等の体制に関するガイドライン」では、審査基準として以下のようなチェック項目が例示されています。
・保険料や解約返戻金等の数値に誤りはないか
・約款、契約概要、注意喚起情報等との記載内容の整合性がとれているか
・商品特性・販売形態・表示媒体に応じた適切な表示となっているか
・不適切な記載はないか(社会保障制度の否定や差別につながる記載等)
・法令、社内規程等によって禁止される記載はないか(誹謗・中傷、誇大広告等)
出典:生命保険協会「生命保険商品の募集用の資料等の審査等の体制に関するガイドライン」
修正指示の明確化
監修者として修正を依頼する際には、以下の要素を明確に伝えることで、手戻りを防ぎ効率的な修正作業を実現できます。
・該当箇所:修正が必要な箇所を具体的に特定
・問題点:なぜ修正が必要なのかの理由
・修正案:具体的な修正後の文言
・根拠:修正の根拠となる公的情報源のURL
クロスチェック体制の構築
一人の監修者による確認だけでなく、複数の視点でのクロスチェック体制を構築することで、見落としを防ぐことができます。特に数値データについては、異なる情報源を用いて同じ情報を確認するクロスチェックが有効です。
継続的な品質改善
監修・校閲は一度きりの作業ではなく、継続的な改善が必要なプロセスといえます。過去に見つかった誤りのパターンを蓄積し、今後の監修に活かすことで、品質管理の精度を高めていくことが可能となります。また、法改正や制度変更があった場合には、過去の記事も含めて情報の更新が必要かどうかを検討する姿勢も重要です。
まとめ
金融・保険分野の記事監修は、単なる誤字脱字のチェックにとどまりません。法改正への対応、約款の正確な解釈、公的機関の一次情報に基づく数値確認など、専門的な知識と実務経験が求められる業務です。
特に2025年の保険業法改正をはじめ、金融分野では規制環境が大きく変化しています。こうした変化に対応し、読者に正確な情報を届けるためには、CFPなどの資格を持つ専門家による監修体制の構築が不可欠といえるでしょう。
記事の品質向上は、メディアの信頼性向上につながるだけでなく、SEO・AIO対策としても有効です。専門家による監修を通じて、読者に価値ある情報を提供できる体制づくりを検討してみてはいかがでしょうか。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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