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インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは?仕組み・登録方法・経過措置をわかりやすく解説【2026年改正対応】

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、2023年10月1日に開始された消費税の仕入税額控除に関する制度で、国税庁によると税務署長の登録を受けた「適格請求書発行事業者」が交付するインボイス(適格請求書)の保存が、仕入税額控除の要件となっています。複数税率への対応を目的に導入された制度ですが、免税事業者がインボイスを発行するには課税事業者への転換が必要となるため、消費税の申告・納税という新たな負担が生じます。令和8年度税制改正大綱(令和7年12月閣議決定)では、関連法案の成立を前提に、小規模事業者向けの「2割特例」終了後に個人事業者限定で納税額を売上税額の3割とする経過措置の創設や、免税事業者からの仕入れに係る控除割合の段階的縮小と期限延長が盛り込まれています。この記事では、インボイス制度の基本的な仕組みから登録方法、経過措置の最新スケジュール、実務上の判断ポイントまで解説します。
インボイス制度の基本的な仕組み

インボイス制度は、売手が買手に正確な適用税率や消費税額を伝えるための仕組みであり、仕入税額控除の計算根拠を明確にすることが目的です。ここでは制度の基本構造を確認しましょう。
インボイス制度とは何か
インボイス制度の正式名称は「適格請求書等保存方式」で、課税事業者が消費税の仕入税額控除を受けるために、適格請求書発行事業者が交付する適格請求書(インボイス)の保存を要件とする制度です。
消費税の納付税額は「売上げ時に受け取った消費税額」から「仕入れ等の際に支払った消費税額」を差し引いて計算しますが、この差し引く計算が「仕入税額控除」と呼ばれるものです。インボイス制度の導入により、仕入税額控除を行うためにはインボイスの保存が必要になりました。
2019年10月の消費税率引上げにともなって標準税率10%と軽減税率8%の複数税率が導入されたことで、取引ごとの正確な税率や消費税額を書類上で確認できる仕組みが求められるようになったことが、制度導入の背景にあります。
適格請求書(インボイス)の記載事項
インボイスとして認められるためには、国税庁が定める以下の事項を記載する必要があります。
・適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
・取引年月日
・取引内容(軽減税率の対象品目である旨を含む)
・税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率
・税率ごとに区分した消費税額等
・書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
従来の区分記載請求書に「登録番号」「適用税率」「税率ごとに区分した消費税額等」の3項目が追加された形になっています。請求書に限らず、領収書や納品書など書類の名称を問わず、所定の事項が記載されていればインボイスとして認められる点もポイントです。
なお、小売業や飲食店業、タクシー業など不特定多数の方を相手にする事業では、記載事項の一部を省略した「適格簡易請求書(簡易インボイス)」を交付することも認められています。
出典:国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」
適格請求書発行事業者の登録方法

インボイスを交付できるのは、税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者に限られます。ここでは登録の手続きと注意点を確認しましょう。
登録申請の手続き
適格請求書発行事業者として登録を受けるには、納税地の所轄税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出する必要があります。提出方法はe-Tax(電子申請)と郵送の2つがあり、登録申請に手数料はかかりません。
審査を経て登録されると、税務署から登録番号等を記載した「登録通知」が送付されます。登録番号は法人番号を有する事業者の場合は「T+法人番号(13桁)」、それ以外の事業者の場合は「T+13桁の数字」で構成されており、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで情報が公表されます。
免税事業者が登録する場合の注意点
適格請求書発行事業者の登録を受けられるのは消費税の課税事業者に限られます。そのため、基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下の免税事業者がインボイスを発行するためには、課税事業者への転換が必要になります。
ただし、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日を含む課税期間中は、免税事業者でも登録申請書を提出することで、登録を受けた日から適格請求書発行事業者となることができる経過措置が設けられています。この経過措置を利用する場合、「消費税課税事業者選択届出書」の提出は不要です。
登録後は基準期間の課税売上高にかかわらず消費税の納税義務が生じるため、登録するかどうかは取引先との関係や事業規模を踏まえて慎重に判断することが重要でしょう。
インボイス制度が売手・買手に与える影響

インボイス制度は、売手(インボイスを発行する側)と買手(インボイスを受け取る側)の双方に影響を及ぼします。それぞれの立場から具体的な影響を整理しましょう。
売手側:適格請求書の交付義務と保存義務
適格請求書発行事業者には、取引の相手方(課税事業者に限る)の求めに応じて適格請求書を交付する義務と、交付した適格請求書の写しを保存する義務が課されています。
適格請求書発行事業者以外の者が、適格請求書と誤解されるおそれのある書類を交付することは法律で禁止されており、違反した場合には罰則が設けられている点にも注意が必要です。
買手側:仕入税額控除の要件変更
買手である課税事業者にとっての影響は、適格請求書発行事業者以外の者からの仕入れでは、原則として仕入税額控除ができなくなる点にあります。
免税事業者や未登録の課税事業者からの仕入れについては経過措置が設けられていますが(後述)、経過措置の終了後は控除が一切できなくなるため、取引先の登録状況の確認が重要になっています。
消費税の計算方法:本則課税・簡易課税・2割特例

適格請求書発行事業者として消費税を申告する際には、本則課税、簡易課税、2割特例の3つの計算方法があります。事業規模や取引内容に応じた選択が求められるため、それぞれの特徴を押さえておきましょう。
本則課税(原則課税)
本則課税は、実際の課税売上げに係る消費税額から、実際の課税仕入れ等に係る消費税額を差し引いて納付税額を計算する方法です。すべての課税事業者が選択できますが、取引ごとにインボイスを保存し、正確な消費税額を集計する必要があるため、事務負担が大きくなる傾向にあります。
仕入れが多い業種(卸売業、製造業など)では本則課税が有利になるケースが多い一方、仕入れが少ないサービス業やフリーランスでは納税額が大きくなりやすい点に留意が必要です。
簡易課税制度
簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択できる計算方法で、実際の仕入税額ではなく、課税売上高に業種ごとの「みなし仕入率」を掛けて仕入税額を計算します。
みなし仕入率は、第1種事業(卸売業)90%から第6種事業(不動産業)40%まで6段階に区分されています。簡易課税を選択すると取引ごとのインボイス保存が不要になるため事務負担が軽減されますが、適用を受けるには原則として適用を受けようとする課税期間の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が求められます。
2割特例(小規模事業者の負担軽減措置)
2割特例は、インボイス制度を機に免税事業者から適格請求書発行事業者(課税事業者)となった方を対象とした経過措置で、納付税額を売上げに係る消費税額の2割とすることができる制度です。
国税庁によると、適用期間は令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間となっており、個人事業者の場合は令和8年分の確定申告が最後の適用となります。事前届出は不要で、確定申告書に適用を受ける旨を付記するだけで利用でき、一般課税・簡易課税のいずれを選択している場合でも適用できます。
ただし、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える課税期間など、インボイス発行事業者の登録と関係なく課税事業者となる場合は適用対象外となります。
出典:国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」
免税事業者からの仕入れに係る経過措置

インボイス制度では、適格請求書発行事業者以外(免税事業者等)からの課税仕入れについて、段階的に仕入税額控除の割合を引き下げる経過措置が設けられています。令和8年度税制改正大綱で内容の見直しが盛り込まれたため(関連法案の成立が前提)、最新のスケジュールを確認しておきましょう。
改正前の経過措置スケジュール
当初の制度設計では、免税事業者等からの課税仕入れに係る仕入税額控除の経過措置は以下のとおりでした。
・令和5年10月1日〜令和8年9月30日:仕入税額相当額の80%を控除可能
・令和8年10月1日〜令和11年9月30日:仕入税額相当額の50%を控除可能
・令和11年10月1日以降:経過措置終了(控除不可)
令和8年度税制改正による見直し内容
令和8年度税制改正大綱(令和7年12月26日閣議決定)では、経過措置の最終的な適用期限を2年延長し、控除割合の引下げペースを緩和する方向となっています。関連法案が成立した場合のスケジュールは以下のとおりです。
・令和8年10月〜令和10年9月:仕入税額相当額の70%を控除可能
・令和10年10月〜令和12年9月:仕入税額相当額の50%を控除可能
・令和12年10月〜令和13年9月末:仕入税額相当額の30%を控除可能
・令和13年10月以降:経過措置終了(控除不可)
また、濫用防止の観点から、1免税事業者あたりの年間適用上限額が現行の10億円から1億円に引き下げられる見込みです。
令和8年度税制改正:2割特例終了後の「3割特例」の創設

令和8年度税制改正大綱では、2割特例の終了にともなう急激な税負担増を緩和するため、個人事業者を対象とした新たな経過措置が盛り込まれています(関連法案の成立が前提)。
3割特例の概要と対象者
2割特例が令和8年9月30日の属する課税期間で終了した後、個人事業者に限り、納付税額を売上税額の3割とすることができる経過措置が2年間にわたって設けられる見込みです。対象期間は令和9年分および令和10年分の各課税期間となっています。
この措置は、これまで2割特例の対象となっていた個人事業者も含めて適用できる方向で、インボイス制度を機に課税転換した個人事業者の負担を段階的に引き上げていく狙いがあります。
一方、法人は3割特例の対象外とされているため、法人の場合は2割特例の終了後、本則課税または簡易課税のいずれかで消費税を計算する必要があるでしょう。
2割特例終了後の実務対応
2割特例から簡易課税制度への移行を検討する場合、個人事業者は令和8年(2026年)12月31日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄税務署に提出する必要があります。
この届出を行わないまま2割特例が終了すると、自動的に本則課税が適用されるため、事務負担が増加する可能性があるでしょう。なお、2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間中に届出書を提出すれば、その課税期間から簡易課税制度を適用できる特例も設けられています。
その他の支援措置と実務上の注意点

インボイス制度には、小規模事業者の事務負担を軽減するためのいくつかの支援措置が設けられています。制度を正しく運用するために、主な措置と注意点を整理しましょう。
少額特例(税込1万円未満のインボイス保存不要)
基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間の課税売上高が5,000万円以下)の事業者は、税込1万円未満の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくても帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます。この少額特例は令和11年9月30日までの経過措置です。
日常的な少額の経費精算において事務負担を軽減できる措置ですが、あくまで「インボイスの保存」に関する特例であり、仕入税額控除の金額計算自体が免除されるわけではない点に注意しましょう。
端数処理のルール
インボイス制度では、消費税額の端数処理は「1つのインボイスにつき、税率ごとに1回」と定められています。品目ごとに端数処理を行うことはできなくなったため、請求書の作成システムや計算方法の見直しが必要になるケースもあります。
登録の取消し(取りやめ)も可能
一度登録した適格請求書発行事業者の登録は、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める届出書」を提出することで取りやめることも可能です。取消届出書を提出した翌課税期間から登録の効力が失われるため、事業の状況変化にあわせた見直しも選択肢の一つです。
免税事業者がインボイス登録すべきかの判断ポイント

インボイス制度への対応で最も悩ましいのが、免税事業者が登録するかどうかの判断です。取引先との関係や事業規模によって最適な選択は異なるため、判断のポイントを整理しましょう。
登録を検討すべきケース
以下のような状況に該当する場合は、登録を前向きに検討する余地があります。
・主な取引先が課税事業者で、インボイスの交付を求められている場合
・取引先から値引き交渉や取引中止の可能性を示唆されている場合
・同業他社がすでに登録しており、競争上の不利を回避したい場合
取引先が仕入税額控除を受けられないことで実質的なコスト増を被る場合、取引条件の見直しを求められる可能性があるため、取引関係の維持を重視する判断は合理的といえるでしょう。
登録を急がなくてよいケース
一方、以下のような場合は登録を急ぐ必要性が低いと考えられます。
・主な取引先が一般消費者で、仕入税額控除が関係しない場合
・取引先が簡易課税や2割特例を適用しており、インボイスの有無が納税額に影響しない場合
・課税転換による消費税負担と事務コストが、登録しないことによる取引上の不利益を上回る場合
経過措置を活用した段階的な対応
令和8年度税制改正大綱では免税事業者からの仕入れに係る経過措置が令和13年9月末まで延長される方向となっており、関連法案が成立すれば、直ちに登録しなくても取引先が一定割合の仕入税額控除を受けられる状態が続きます。この猶予期間を利用して、事業の成長にあわせて登録のタイミングを見定めることも選択肢の一つでしょう。
ただし、経過措置は段階的に控除割合が縮小していくため、取引先から見た「免税事業者との取引コスト」は年々増加していく点を見落とさないようにすることが重要です。
まとめ:インボイス制度の要点と今後のスケジュール
インボイス制度は、適格請求書発行事業者が交付するインボイスの保存を仕入税額控除の要件とする制度で、2023年10月に開始されました。制度の要点を改めて整理します。
・インボイスを発行できるのは税務署に登録した適格請求書発行事業者のみ
・免税事業者がインボイスを発行するには課税事業者への転換が必要
・2割特例は令和8年9月30日の属する課税期間で終了、個人事業者は3割特例(令和9〜10年分)に移行予定(関連法案の成立が前提)
・免税事業者からの仕入れに係る経過措置は令和13年9月末まで延長の見込み(控除割合は段階的に縮小)
・簡易課税への移行を検討する場合は届出書の提出期限に注意
経過措置のスケジュールは複雑化しているため、自身の事業形態や取引先の状況にあわせて、2割特例終了後の計算方法の選択や届出書の提出期限を計画的に管理していくことが求められます。制度の詳細や最新の取扱いについては、国税庁のインボイス制度特設サイトや、管轄の税務署への相談窓口を活用しましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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