時事ネタ
ふるさと納税、2025年10月からどう変わる?制度変更と賢い活用法

ふるさと納税は、自分の故郷や応援したい自治体に寄付をすると、寄付額のうち2,000円を超える部分が所得税と住民税から控除される制度です(一定の上限あり)。寄付のお礼に地域の特産品がもらえるのが大きな魅力で、2024年度の寄付総額はさらに増える可能性があります。
ふるさと納税の仕組みと利用

多くの自治体は、ふるさと納税の受付や情報発信をふるさと納税ポータルサイト(仲介サイト)を通じて行っています。これらのサイトは手続きを簡略化するだけでなく、利用特典としてポイント還元を行っている場合もあり、利用者にとって大きなメリットとなっていました。
制度の目的と課題
ふるさと納税は、都市部から地方への税源移転を促し、地域経済を活性化させることを目的にしています。しかし近年、返礼品やポイント還元を巡る自治体間の競争が激化し、制度本来の趣旨から逸脱しているとの指摘もあり、法改正が続いています。
税控除の仕組みと手続き
寄付による税控除を受けるには、原則として確定申告が必要です。でも、一定の条件を満たせば、確定申告なしで控除を受けられる**「ワンストップ特例制度」**も利用できます。控除される金額には上限があるので、この上限額を超えた寄付は自己負担に。ご自身の控除上限額は、シミュレーションサイトで事前に確認しておくのがおすすめです。
ふるさと納税サイトとポイント還元
多くの自治体は、ふるさと納税の受付や情報発信をふるさと納税ポータルサイト(仲介サイト)を通じて行っています。これらのサイトは手続きを簡略化するだけでなく、利用特典としてポイント還元を行っている場合もあり、利用者にとって大きなメリットとなっていました。
2025年10月以降の主な変更点

ふるさと納税制度は、利用者にとってより公平で、制度本来の目的に沿った形にするため、近年も改正が続いています。特に2025年10月以降は、大きな変更が予定されています。
2025年10月からの変更:ポータルサイトのポイント還元全面禁止
2025年10月からは、ふるさと納税ポータルサイトを通じた寄付に対するポイント付与が全面的に禁止される予定です。これは、過熱するポイント還元競争を抑制し、制度本来の目的に回帰させるための措置です。主な影響は次の3つです。
・影響: 楽天ふるさと納税のような仲介サイト経由のポイント還元や、ポイントサイトを経由してのポイント還元も対象外となります。
・駆け込み需要の予想: ポイント還元を受けたい場合は、2025年9月末までに寄付を完了させる必要があります。このため、2025年9月には駆け込み需要が殺到すると予想されます。
・楽天グループによる提訴: 楽天グループは、ポイント付与の禁止が総務大臣の裁量権を逸脱しているとして、この告示の無効確認を求める行政訴訟を東京地方裁判所に提起しています。
地場産品基準の見直し(次期指定対象期間からの適用)
総務省は、2024年6月にふるさと納税の指定基準の見直しを発表しており、その中で地場産品基準のさらなる厳格化に言及しています。これは「次期指定対象期間に係る指定から適用」とされており、具体的な施行時期は明示されていませんが、今後のふるさと納税に影響を与える重要な変更点となるでしょう。現時点で総務省の発表から示唆される主な見直しの方向性は以下の通りです。
今後検討される可能性のある変更点
・地域との関連性や付加価値の重視
1.総務省は「当該地方団体で生じた付加価値や、地域との関連性をより重視した形で、基準を見直すこと」としており、返礼品がその地域でどれだけ付加価値を生み出しているか、地域とどれだけ深く関連しているかが、これまで以上に評価されるようになるでしょう。
2.これまでの議論や報道から、熟成肉や精米など、原材料が自治体外のものでも加工場所が自治体内であれば認められていた一部の加工品について、基準が厳しくなる可能性が示唆されています。より厳密に、原材料の産地や加工の過程で地域がどれだけ関与しているかが問われるようになるかもしれません。
3.返礼品の価値に占める自治体内での付加価値の割合に関する基準が導入される可能性もあります。
・特定の返礼品に関する基準の明確化:
自治体のキャラクターグッズや体験型返礼品(買い物券など)についても、その地域との関連性や、自治体の広報活動への貢献度などをより具体的に示すことが求められるようになる可能性があります。
これらの変更は、返礼品がより地域の特色を反映し、地域経済に直接貢献するものであることを目指していると考えられます。詳細な内容は、今後の総務省からの正式発表や通達で明確になるでしょう。
過去の主なルール変更と制度の変遷

ふるさと納税制度は、2008年の開始以降、度々ルール変更が行われてきました。
・2008年: ふるさと納税制度が始まりました。当初は返礼品に関する明確な規定はありませんでした。
・2011年: 東日本大震災をきっかけに、被災地支援としてのふるさと納税の利用が拡大し、制度の認知度が高まりました。
・2015年: 寄付金控除の上限額が約2倍に拡大され、さらに確定申告不要のワンストップ特例制度が導入されました。これにより利用者が大幅に増加し、返礼品競争が激化。一部で還元率が70%を超えるケースや、地域性のない家電製品、商品券などが返礼品として登場し、問題視されるようになりました。
・2017年4月: 総務省が、返礼品の還元率を3割以下にすること、地場産品以外の返礼品は自粛すること、金銭類似性の高いものは禁止することなどを要請しました(この時点では法的拘束力はありませんでした)。
・2019年6月: ついに地方税法が改正され、返礼品の割合を寄付額の3割以下に法制化し、返礼品は地場産品に限定することが明文化されました。この基準を満たさない自治体は制度の対象外とされました。
・2023年10月:
1.「5割ルール」の厳格化: 返礼品の調達費用や送料、仲介サイトの手数料などに加えて、ワンストップ特例事務や寄付金受領証の発行費用なども含めた「募集に要する費用」を寄付金額の5割以下とするルールが厳格化されました。これにより、同じ返礼品でも寄付金額が上がったり、量が減ったりするケースが生じました。
2.熟成肉・精米の地場産品基準厳格化: 自治体の外で生産された肉を自治体内で熟成させた「熟成肉」や、他県で収穫された米を自治体内で精米した「お米」が返礼品として認められなくなりました。これらは、その自治体内で生産された原材料を使用している場合にのみ返礼品として提供できるようになりました。
・2024年10月: 旅行・宿泊券の提供ルールがより厳しくなりました。宿泊施設は原則として同一県内で展開している施設に限定され、1人1泊5万円を超える宿泊券は一部例外を除き対象外となりました。
まとめと今後の展望

ふるさと納税は、納税者が自由に寄付先を選び、自治体を応援する目的で始まった制度です。しかし、返礼品やポイント還元を巡る競争が過熱したため、総務省は制度本来の趣旨への回帰を目指し、継続的にルール改正を行っています。
今後も、制度の本質から逸脱した動きがあれば適宜是正されていくでしょう。返礼品の魅力に惑わされることなく、あくまで税制優遇措置であることを理解した上で利用することが重要です。
ふるさと納税制度は、その規模の大きさや地方経済への影響から、すぐに廃止される可能性は低いと考えられます。しかし、総務省が継続的に規制を強化していることから、将来的には返礼品の還元率がさらに引き下げられたり、最終的には返礼品が禁止され、「単なる寄付」という形に近づいていく可能性もゼロではありません。
最新の情報を確認しながら、賢くふるさと納税を活用していきましょう。
お金に関する相談はファイナンシャルプランナーの金子賢司まで。日本FP協会の「CFP®認定者検索システム」、またはJ-FLEC(金融経済教育推進機構)のサイトの、J-FLEC認定アドバイザー検索で検索することも可能です。北海道エリアに絞って検索していただくと容易に検索できます。