税金(一般的な内容)
個人事業主の経費はどこまで認められる?家事按分の方法と減価償却の3区分

自宅兼事務所の家賃や水道光熱費は、国税庁によると「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額」に限って必要経費になります。
按分の割合を決めるだけでなく、その根拠を記録として残せるかどうかが分かれ目です。
また、青色申告者が使える少額減価償却資産の特例は、2026年4月から対象が40万円未満に広がり、適用期限も令和11年3月31日まで延長されました。一方で経費を増やしすぎると、小規模企業共済などの所得控除で得られる効果が薄れる点にも注意が必要です。
この記事では、家事按分の具体的な方法と減価償却の区分、そして経費を増やしすぎたときに起きることを解説します。
家事按分|経費にできるのは「明らかに区分できる金額」

自宅の一部を仕事場にしている場合、その費用は事業と生活の両方にかかわります。
このような支出をどう扱うかが出発点です。
国税庁が示す条件
一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわる費用を「家事関連費」といい、国税庁は店舗併用住宅に係る費用(租税公課、家賃、水道光熱費など)を例に挙げています。
このうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額に限られます。逆にいえば、区分の根拠を示せない部分は経費にできない仕組みです。
面積で按分する|家賃・固定資産税など
住まいの広さに応じて発生する費用は、面積の割合で分けるのが説明しやすい方法です。
総床面積80㎡のうち仕事専用のスペースが16㎡であれば、按分率は20%になります。家賃のほか、持ち家であれば固定資産税や火災保険料も同じ考え方で分けられます。
使用時間・走行距離で按分する|水道光熱費・通信費・自動車
使った量に応じて発生する費用なら、時間や距離で分けるほうが実態に近い形です。
1日のうち10時間活動して8時間を仕事に使っているなら、按分率は80%になります。自動車のガソリン代や駐車場代であれば、走行距離のうち業務分の割合で分ける方法もあります。
どの方法を選ぶかに決まりはなく、その費用の性質に合った説明ができるかどうかが基準です。
面積で分けにくい費用を無理に面積で按分すると、根拠を問われたときに答えにくくなります。
記録の残し方
按分の割合は税務署に事前に届け出るものではありません。
だからこそ、後から求められたときに示せる記録が要です。次のようなものが手元にあると、区分の根拠を説明しやすくなるでしょう。
・仕事用スペースの間取り図と面積の記録
・カレンダーや日報による業務時間の記録
・業務分とプライベート分がわかる走行距離の記録
・通信費の利用明細(業務用の回線を分けている場合はその契約書)
減価償却|取得価額で3つに分かれる

パソコンや車のように長く使う資産は、買った年に全額を経費にできるとは限りません。
取得価額によって、扱いが3つに分かれます。
10万円未満は取得した年に全額
使用可能期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満のものは、その全額をその年の必要経費にできる扱いです。
文房具や少額の備品は、この扱いで処理します。
10万円以上20万円未満は3年で均等償却
取得価額が10万円以上20万円未満の資産は、一定の要件のもとで一括し、合計額の3分の1をその年から3年間の各年に必要経費へ算入できます。
青色申告と白色申告のどちらでも使え、年の途中で購入しても月割にならない点が特徴です。
【2026年4月から】青色申告者は40万円未満まで一括で経費に
一定の要件を満たす青色申告者には、取得価額が一定額未満の資産を取得した年に全額必要経費へ算入できる特例があります。
中小企業庁によると、この対象となる取得価額は40万円未満に引き上げられ、適用期限も令和11年3月31日までとされています。年間の合計額は300万円が上限で、個人事業主の手続きは青色申告決算書の「減価償却費の計算」の「摘要」欄に「措法28の2」と記載することです。
なお、国税庁のタックスアンサーは令和7年4月1日現在の法令等にもとづく内容のため、改正前の金額が掲載されています。
金額を確認する際は、更新されている中小企業庁のページを見るほうが確実でしょう。
見落としやすい2つのルール
取得価額の区分については、次の2点も押さえておきたいところです。
・取得価額の判定は経理方式による:税込経理なら消費税を含んだ金額、税抜経理なら含まない金額で判定する(免税事業者は税込経理)
・貸付けの用に供する資産は対象外:令和4年4月1日以降に取得して貸付けの用に供した資産(主要な業務として行う貸付けを除く)は、上記3つの扱いを使えない
税込経理か税抜経理かで、同じ買い物が特例の枠に収まるかどうかが変わります。
判定でつまずきやすい部分なので、自分の経理方式を確かめてから区分を考えると迷いません。
出典:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」、中小企業庁「少額減価償却資産の特例」
経費を増やしすぎると起きること

経費が増えれば所得が減り、所得税や住民税は軽くなります。
ただし所得を小さくすることには、別の面もあります。
所得控除の効果が薄れる
個人事業主の退職金づくりとして使われる小規模企業共済は、掛金が月額1,000円から最高70,000円で、年間では最大84万円です。
中小機構によると、この掛金は事業上の損金または必要経費には算入できず、全額が小規模企業共済等掛金控除として所得から控除されると説明されています。経費とは別枠で所得を減らす手段だと理解しておくと、扱いを間違えません。
ここで注意したいのが、所得控除の効果が課税所得の大きさで変わる点です。
中小機構が示す試算では、掛金が同じ月7万円でも、課税所得400万円なら節税額は241,300円、200万円なら129,400円とされています。経費を積み増して課税所得を400万円から200万円へ圧縮すると、同じ掛金でも約11万円分の効果が失われる計算になります。
国民年金の保険料と年金額は所得と連動しない
会社員の厚生年金と違い、国民年金の保険料は所得にかかわらず定額です。
日本年金機構によると令和8年度は月額17,920円で、納付した保険料は全額が社会保険料控除の対象になります。将来受け取る老齢基礎年金の額も保険料を納めた期間で決まるため、経費を増やして所得を下げても、年金額そのものが減るわけではありません。
つまり所得を圧縮しても年金は目減りしない一方、所得控除の効き目は弱まるという関係です。
経費として落とせるかどうかだけでなく、残った所得に対して控除を活かせているかまで見て判断すると、税と将来の備えのバランスが取りやすくなるでしょう。
まとめ|按分の根拠と、経費以外の選択肢
家事按分と減価償却のポイントは次のとおりです。
・家事関連費で経費になるのは「業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる金額」のみ
・按分は費用の性質に合わせ、面積・使用時間・走行距離などから説明できる方法を選ぶ
・割合の届出は不要だが、間取り図・業務時間・走行距離の記録が根拠になる
・減価償却は10万円未満は全額/10万円以上20万円未満は3年均等/青色申告者は40万円未満まで一括(2026年4月〜・年間300万円まで・令和11年3月31日まで)
・取得価額の判定は税込経理か税抜経理かで変わり、貸付用の資産は対象外
・小規模企業共済の掛金は必要経費ではなく所得控除(月最高7万円・年84万円)
・経費を積み増して課税所得を下げると、所得控除で得られる効果は小さくなる
経費を増やすことと手取りを増やすことは、同じではありません。
按分の根拠を残しつつ、経費以外に所得を減らす手段も併せて考えてみてはいかがでしょうか。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司による執筆です。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムでご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズにお調べいただけるでしょう。
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