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NISAのロールオーバーとは?旧NISAからの移行をスムーズにする方法

現在、多くの方が利用しているのは2024年に始まった新NISAですが、それ以前の2014年から存在した「旧NISA(一般NISA)」口座で投資を続けている方も少なくありません。旧NISAには、非課税期間が終了した際に「ロールオーバー」という選択肢がありました。
新NISAにはロールオーバーの仕組みはありませんが、旧NISAからのスムーズな移行を考える上で、この「ロールオーバー」の知識は非常に重要です。この記事では、旧NISA制度の「ロールオーバー」の仕組みを詳しく解説し、その条件やメリット・デメリット、そして新NISAとの関連性について、分かりやすくご説明します。
「ロールオーバー」とは?旧NISA時代の重要な選択肢

旧NISA(一般NISA)には、「非課税保有期間5年間」という期限が設定されていました。この5年間の非課税期間が終了した際に、投資家が選べる選択肢の一つが「ロールオーバー」でした。
ロールオーバーとは、簡単に言うと「旧NISA口座で保有していた商品を、非課税期間が終了した後も、新たなNISA枠を使って非課税のまま引き続き運用し続けること」を指します。
もしロールオーバーを選択しなかった場合、保有商品は自動的に課税口座(特定口座や一般口座)へ移管され、それ以降に得られた利益には税金がかかることになります。そのため、特に含み益が出ている商品を非課税のまま運用し続けたい場合に、ロールオーバーは非常に有効な手段でした。
ロールオーバーの条件と上限
旧NISAのロールオーバーには、以下の条件がありました。
・その年の非課税投資枠を使用: ロールオーバーする商品は、その年の新たな一般NISAの非課税投資枠(旧NISAの場合120万円)を使用しました。
・非課税投資枠を超える場合: ロールオーバーしたい商品の時価評価額がその年の非課税投資枠(120万円)を超えていた場合でも、その全額を非課税でロールオーバーすることが可能でした。ただし、その場合、翌年以降の新規投資は制限される(その非課税投資枠は使い切ったことになる)という制約がありました。
ロールオーバーのメリットとデメリット

ロールオーバーが投資家にとってどのような意味を持っていたのか、そのメリットとデメリットを明確にしましょう。
メリット
・非課税メリットの継続: 最大のメリットは、含み益が出ている商品を売却することなく、非課税のまま運用を継続できる点です。これにより、売却益に課税されるのを避け、手元に残る利益を最大化できました。
・長期投資の継続性: 非課税期間が5年という制限がある中で、さらに非課税で保有期間を延ばすことができたため、当初の長期投資計画を非課税の恩恵を受けながら続けられました。
・売却タイミングの自由度: 非課税期間が終了しても、焦って売却する必要がなくなり、自身の投資計画や市場環境に合わせて、最適な売却タイミングをじっくりと見極めることができました。
デメリット
・翌年の新規投資枠の制限: ロールオーバーをする場合、その年のNISA年間投資枠(120万円)を消費することになります。もしロールオーバーした金額が120万円を超えていれば、その年のN課税投資枠はすべて使い切ったことになり、他に新規で投資する余裕がなくなる、というデメリットがありました。
・時価が購入時を下回る場合の注意: もし、ロールオーバー時に含み損を抱えていた場合でも、その時の評価額がロールオーバーされる金額となります。その後に価格が回復して利益が出ても、課税口座に移管した場合よりも税制上のメリットが薄れる可能性がありました。
旧NISAからの移行と「ロールオーバー」の役割(新NISAとの関連性)

2024年から始まった新NISA制度には、「ロールオーバー」の仕組みはありません。これは、新NISAの非課税期間が「無期限」になったため、期間終了後に商品を移管したり、非課税期間を延長したりする必要がなくなったからです。
では、旧NISA口座で現在保有している商品はどうなるのでしょうか?
・旧NISA口座の商品はそのまま継続: 旧NISA(一般NISA、つみたてNISA)口座で保有している商品は、それぞれの非課税期間(一般NISAは5年、つみたてNISAは20年)が終了するまで、引き続き非課税の恩恵を受けながら運用できます。
・非課税期間終了後の対応: 旧NISAの非課税期間が終了した場合、保有商品は原則として自動的に課税口座(特定口座や一般口座)へ移管されます。この際、課税口座へ移管された時点の価格が取得価格とみなされるため、その後の利益に対して税金がかかることになります。
・新NISA口座は別枠でスタート: 旧NISAとは別に、2024年から新NISAの非課税枠が新たに付与されます。旧NISAで投資していた金融機関で新NISA口座を開設する場合、自動的に新NISA口座が開設されるケースがほとんどです。旧NISAの残高とは関係なく、新NISAの年間360万円の枠(生涯1,800万円の枠)を使って、新しい投資を始めることができます。
スムーズな移行のためのポイント

旧NISA口座を持っている方が新NISAへスムーズに移行し、最適な資産形成を続けるためには、以下の点を押さえておきましょう。
1.旧NISA商品の非課税期間を把握する: 現在保有している旧NISA口座の商品の非課税期間が、いつまで続くのかを確認しましょう。金融機関の取引画面などで確認できます。期間終了が近づいたら、その後の対応(売却するか、課税口座に移管するか)を検討する必要があります。
2.新NISAの年間投資枠・生涯投資枠を意識して活用する: 旧NISAの運用状況とは別に、新NISAは年間360万円、生涯1,800万円という大きな非課税枠を活用できます。この新しい枠を積極的に使い、長期・積立・分散投資を軸に新たな資産形成を進めていきましょう。
3.旧NISA口座の運用状況を定期的にチェックする: 非課税期間終了が近づいていないか、含み益が出ているか、損失が出ているかなどを定期的にチェックし、終了後の対応を検討するための準備をしておきましょう。
まとめ:旧NISAと新NISA、それぞれの特性を理解し賢く資産形成
「ロールオーバー」は旧NISA制度において、非課税メリットを継続するための重要な仕組みでした。新NISAではその必要がなくなりましたが、旧NISA口座をお持ちの方は、その仕組みと非課税期間終了後の対応を理解しておくことが大切です。
新NISAの大きな非課税枠と無期限というメリットを最大限に活かしつつ、旧NISAからの資産も計画的に管理することで、あなたの資産形成はよりスムーズに進むはずです。それぞれの制度の特性を理解し、賢く未来の資産を築いていきましょう。