ニーサ
NISAで元本割れのリスクは?リスクを抑える投資戦略と対策

NISAは、投資で得た利益が非課税になるという非常に魅力的な制度です。しかし、預貯金とは異なり、NISAは「投資」です。そのため、残念ながら元本割れのリスクはゼロではありません。
この記事では、NISAが非課税制度である一方で、どのような場合に元本割れが発生しうるのかを明確に伝えます。そして、そのリスクを抑えるための具体的な投資戦略(分散投資、長期投資、積立投資、リスク許容度に応じた商品選びなど)と対策を徹底解説。あなたのNISA運用を、より安心して、そして着実に進めるためのヒントを提供します。
NISAで元本割れが発生しうるのはなぜ?

NISAは税制優遇制度であり、投資そのものの性質を変えるものではありません。投資は、基本的に価格が変動する金融商品を購入するため、元本割れ(投資した金額よりも資産の評価額が下回ること)のリスクを常に伴います。
元本割れが発生しうる主な理由は以下の通りです。
1.市場の変動: 株式や投資信託は、企業の業績、景気、金利、世界情勢など様々な要因によって価格が変動します。市場全体が大きく下落するような局面では、保有している商品の評価額が購入時を下回り、元本割れとなる可能性があります。
2.個別銘柄の業績悪化: 個別株に投資した場合、その企業の業績悪化や不祥事などにより、株価が大幅に下落し、元本割れに至ることがあります。最悪の場合、企業の倒産により投資額がゼロになるリスクも考えられます。
3.為替変動: 外国の株式や外国投資信託に投資する場合、為替レートの変動もリスク要因となります。例えば、投資した時点よりも円高が進んだ場合、円に換算した際の評価額が下がり、元本割れとなる可能性があります。
4.商品自体の特性: 元本保証がない投資信託の中には、積極的にリスクを取る運用を行うものもあります。特にテーマ型やレバレッジ型といった高リスク・ハイリターンを狙う商品は、大きな元本割れにつながる可能性も高くなります。
元本割れのリスクを抑えるための具体的な投資戦略

NISAで元本割れのリスクを完全にゼロにすることはできませんが、適切な投資戦略を実践することで、そのリスクを大幅に抑えることができます。
「長期投資」を徹底する
新NISAの最大のメリットの一つが、非課税期間が無期限であることです。これを最大限に活用しましょう。
・時間を味方につける: 短期的な市場の変動(上がったり下がったり)は避けられませんが、歴史的に見ると、株式市場は長期で見るほど右肩上がりに成長する傾向があります。短期間では元本割れしていても、数十年単位で保有し続けることで、回復し、利益に転じる可能性が高まります。
・複利効果を最大化: 利益が利益を生む「複利効果」は、期間が長ければ長いほどその力を発揮します。非課税で複利効果を長期間享受することで、元本割れのリスクを吸収しやすくなります。
「分散投資」を徹底する
「卵は一つのカゴに盛るな」という投資の鉄則をNISAでも実践しましょう。
・銘柄の分散: 特定の銘柄に集中せず、複数の銘柄に投資しましょう。例えば、NISAの「成長投資枠」で個別株に投資する場合でも、1社だけでなく、異なる業種の数社に分散して投資することが大切です。
・資産クラスの分散: 株式だけでなく、価格変動が比較的穏やかな債券や、不動産(REIT)など、異なる値動きをする資産クラスを組み合わせることも有効です。
・地域の分散: 日本株だけでなく、米国株や欧州株、新興国株など、世界中の様々な地域の資産に分散投資することで、特定の国の経済状況に左右されるリスクを軽減できます。NISAの「つみたて投資枠」で選べる「全世界株式」に連動するインデックスファンドは、これ1本で地域分散が自動的に行われるため、初心者にも強く推奨されます。
・時間の分散(積立投資): 毎月決まった日に定額を投資する「積立投資」は、購入タイミングを分散させることで、高値掴みのリスクを抑え、平均購入単価を平準化する「ドルコスト平均法」の恩恵を受けられます。
「積立投資」を継続する
積立投資は、単に手間を省けるだけでなく、元本割れリスクを抑える上で非常に有効な戦略です。
・ドルコスト平均法の活用: 市場が高値の時は少なく、安値の時は多く買い付けるため、結果的に購入価格を平均化し、高値掴みのリスクを減らすことができます。
・感情に左右されない: 自動で定期的に投資が行われるため、市場の短期的な値動きに一喜一憂したり、感情的に売買して損失を出したりするのを防げます。
ドルコスト平均法については、以下の記事も参考にしてください。
ドルコスト平均法とは?時間分散で賢く資産形成!
リスク許容度に応じた商品選び
あなたのリスク許容度(どれくらいの損失なら許容できるか)を正確に把握し、それに見合った商品を選ぶことが非常に重要です。
・リスクが低いと感じる場合: 元本割れを極力避けたい場合は、NISAの「つみたて投資枠」で、信託報酬の低い「全世界株式」や「S&P500」といった広範囲に分散されたインデックスファンドを中心に据えましょう。これらは一般的に個別株よりもリスクが抑えられています。
・積極的にリターンを狙う場合: より高いリターンを狙う場合は、NISAの「成長投資枠」で個別株やテーマ型投資信託なども検討できます。しかし、その分リスクも高まるため、全体のポートフォリオにおける割合を抑えるなど、バランスを考慮しましょう。
NISA運用で元本割れを避けるための具体的な対策

上記の戦略を実践する上で、さらに意識すべき具体的な対策をまとめました。
1.「生活防衛資金」を確保する: 投資を始める前に、必ず生活費の半年~1年分程度の「生活防衛資金」を、すぐに引き出せる預貯金として確保しておきましょう。これにより、急な出費や収入減でNISA口座の資産を損した状態で売却せざるを得ない、という状況を防げます。
2.無理のない金額で始める: NISAの年間投資枠(最大360万円)を無理に使い切ろうとせず、あなたの家計に負担をかけない範囲で、継続できる金額を設定しましょう。無理な投資は、精神的な負担を増やし、感情的な売買につながりやすくなります。
3.市場の暴落時も冷静に対応する: 市場の暴落は、投資をしていれば必ず経験するものです。そんな時でも慌てて売却せず、冷静に状況を見極め、可能であれば積立を継続したり、安くなった商品を買い増したりする「逆張り」のチャンスと捉えることもできます。
4.定期的にポートフォリオを見直す: 一度設定したポートフォリオも、時間の経過とともにバランスが崩れることがあります。年に1回程度は、自身の資産配分が当初の目標と合っているかを確認し、必要に応じて「リバランス」を行いましょう。これにより、リスクを適切に保ち、効率的な運用を続けられます。
5.情報収集と知識のアップデート: 投資に関する基本的な知識を継続的に学び、市場の動向や投資している企業・ファンドの情報を定期的に収集しましょう。しかし、情報過多に陥らず、信頼できる情報源から冷静に判断することが大切です。
まとめ:NISAの元本割れリスクを理解し、賢く付き合おう
NISAは非課税という大きなメリットを持つ制度ですが、投資である以上、元本割れのリスクは存在します。しかし、このリスクを過度に恐れる必要はありません。
「長期投資」「分散投資」「積立投資」という投資の基本戦略を徹底し、あなたのリスク許容度に合わせた商品を選び、余剰資金で無理なく続けることで、元本割れのリスクを大幅に抑えながら、着実に資産を増やしていくことが可能です。
NISAの仕組みとリスクを正しく理解し、賢い対策を講じることで、安心してNISAでの資産形成を始め、あなたの未来を豊かなものにしていきましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。