iDeCo
iDeCoは誰でも加入できる?加入資格と掛金の上限・下限を詳しく解説

「いくらまで積み立てられるの?最低いくらから始められる?」
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金を準備するための強力な制度ですが、「誰でも入れる」わけではありません。加入資格や、月々積み立てられる掛金の金額は、あなたの働き方や、勤務先の企業年金の有無によって細かく定められています。
この記事では、iDeCoに加入できる人の条件(加入資格)を、会社員、公務員、自営業者、専業主婦といった職業別に詳しく解説します。さらに、気になる掛金の上限額と下限額、そして加入前に自分の資格や掛金上限を確認する方法まで、iDeCoを始める前に知っておくべき重要な情報を網羅的にご紹介します。
iDeCoに加入できる人・できない人:加入対象者の詳細

iDeCoは、日本国内に住む20歳以上65歳未満のすべての人(国民年金被保険者)が原則として加入できます。ただし、一部例外や、職業によって掛金の上限が異なります。
第1号被保険者:自営業者・フリーランスなど
国民年金に加入している自営業者、フリーランス、農業従事者、学生など、会社に属していない方々です。
・特徴: 公的年金は国民年金のみのため、老後資金を自助努力で準備する重要性が高い層です。
・掛金上限: 月額6万8,000円(年間81万6,000円)
・特記事項: 国民年金基金に加入している場合、iDeCoと合わせて月額6万8,000円が上限となります。
第2号被保険者:会社員・公務員など
厚生年金保険に加入している会社員や公務員の方々です。勤務先の企業年金の有無によって、掛金上限が変わります。
・会社員(企業年金なし):
特徴: 勤務先に企業年金(企業型DCや確定給付企業年金など)がない会社員の方です。公的年金は国民年金と厚生年金です。
掛金上限: 月額2万3,000円(年間27万6,000円)
・会社員(企業年金あり)や公務員:
特徴: 勤務先で、企業型確定拠出年金(企業型DC)や確定給付企業年金(DB)などの企業年金に加入している会社員や、公務員の方です。
掛金上限: 月額2万円(年間24万円)。ただし、企業型DCの掛金とiDeCoの掛金の合計が月額5万5,000円(年間66万円)を超えない範囲内です。ただし、iDeCoに拠出できる金額の上限は2万円となっています。また、企業型DCに「マッチング拠出」があり、マッチング拠出を行っている場合は、iDeCoに加入できません。
第3号被保険者:専業主婦(夫)など
第2号被保険者(会社員・公務員など)に扶養されている配偶者の方々です。主に専業主婦(夫)が該当します。
・特徴: 自身で保険料を負担せずに国民年金に加入しているため、老後資金を自助努力で準備する重要性が高い層です。
・掛金上限: 月額2万3,000円(年間27万6,000円)
・特記事項:そもそも所得税を支払っていないため、所得控除のメリットがない点に注意
iDeCoに加入できない人(例外)
以下の場合は、原則としてiDeCoに加入できません。
- 国民年金保険料を免除・猶予されている方
- 海外に居住している方(一部例外あり)
- 65歳以上の方(2022年5月以降は65歳未満まで加入可能に拡大)
iDeCoの掛金の上限額と下限額を改めて確認

iDeCoの掛金は、月々5,000円から始めることができます。上限額は前述の通り、加入者の職業や企業年金の有無によって異なります。
・掛金の下限額: 月額5,000円
年間6万円から始められるため、無理なく老後資金の準備をスタートできます。
掛金の上限額:
第1号被保険者(自営業者など):月額6万8,000円
第2号被保険者(企業年金なしの会社員、第3号被保険者):月額2万3,000円
第2号被保険者(企業年金ありの会社員、公務員):月額2万円(企業型DCと合計で月額5万5,000円まで、またiDeCoに拠出できる金額の上限は2万円)
掛金変更の手続き
iDeCoの掛金は、一度設定したら固定というわけではありません。年に1回まで、掛金額を変更することが可能です。
・変更方法: 運用管理機関(iDeCo口座を開設している金融機関)に「加入者掛金変更届」などの書類を提出します。
・どんな時に変更する?: 収入が上がって節税効果を最大化したい時、ライフイベント(出産、住宅購入など)で一時的に家計が厳しくなった時など、状況に合わせて柔軟に見直すことができます。掛金を一時的に停止することも可能です。
加入前に自分の資格を確認する方法

iDeCoに加入する前に、ご自身がどの区分に該当し、いくらまで掛金を拠出できるのかを正確に確認することが重要です。
1.ご自身の国民年金被保険者種別を確認する:
・会社員・公務員:第2号被保険者
・自営業者・学生など:第1号被保険者
・第2号被保険者の扶養配偶者:第3号被保険者
・不明な場合は、お勤め先の人事・総務担当者や年金事務所に確認できます。
2.勤務先の企業年金の有無を確認する(第2号被保険者の場合):
・企業型確定拠出年金(企業型DC)や確定給付企業年金(DB)に加入しているかどうかを、お勤め先の人事・総務担当者に確認しましょう。
・企業型DCに加入している場合は、マッチング拠出の有無や、iDeCoとの併用が可能かどうかも確認が必要です。
3.掛金シミュレーターを活用する:
多くの金融機関や国民年金基金連合会のウェブサイトで、掛金上限額や節税額のシミュレーターが提供されています。ご自身の年収や企業年金の状況を入力することで、目安の掛金上限額を知ることができます。
4.金融機関や専門家に相談する:
もしご自身の状況が複雑で判断に迷う場合は、iDeCoを取り扱っている金融機関の窓口やコールセンター、またはファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ:iDeCoは「あなたの働き方」で加入資格と掛金上限が決まる
iDeCoは、日本に住む20歳以上65歳未満のほとんどの人が加入できる制度ですが、その加入資格と掛金の上限額は、あなたの働き方(国民年金被保険者種別)や、勤務先の企業年金の有無によって細かく定められています。
・自営業者: 月額6万8,000円まで。
・会社員・公務員: 企業年金の有無によって、2万円、2万3,000円のいずれか。
・専業主婦(夫): 月額2万3,000円まで。
まずはご自身の状況を確認し、無理のない範囲で月々5,000円からiDeCoを始めてみましょう。適切な掛金設定と継続的な拠出が、あなたの老後資金準備を強力にサポートしてくれるはずです。
重要な補足情報:将来の制度変更について
本記事は2025年7月時点の情報に基づいていますが、iDeCo制度には将来の税制改正による変更予定があります。これらの変更は、より多くの人がiDeCoを活用しやすくなる方向で検討されていますが、現時点では「予定」であり、具体的な施行時期や詳細については、今後の政府の発表にご注意ください。
1. 2025年度税制改正による掛金上限額の大幅な制度拡充(予定)
2025年の税制改正により、iDeCoの掛金上限額が大きく引き上げられる方向で検討されています。
・自営業・フリーランスの方(第1号被保険者): 国民年金基金と合算して、現在の月額6.8万円から月額7.5万円になり、月7,000円のアップが見込まれます。
・会社員(企業年金なしの方): 今回、最も上限額が増える予定で、現在の月額2.3万円から月額6.2万円と、月3.9万円の大幅なアップが検討されています。
・その他の会社員・公務員(企業年金ありの方)、専業主婦の方: これらの区分についても、掛金上限額の見直しが予定されています。
これらの変更が実現すれば、より多くの掛金をiDeCoに拠出し、税制優遇を受けながら老後資金を準備できるようになります。詳細については、イオン銀行の「iDeCo改正:掛金の上限&加入年齢が70歳未満まで引上げ?」などの情報を参考にしてください。
2. 加入年齢の拡大(予定)
現在、iDeCoに加入し掛金を拠出できる期間は20歳から65歳未満までとなっています。しかし、今回の税制改正により、一定の要件のもと70歳未満までに延長する予定です。
3. 受給時の税制変更(予定)
iDeCoの受け取り時に関わる税制についても変更が予定されています。
・退職所得控除の「5年ルール」が「10年」に変更される可能性: 現在は、iDeCoの一時金と退職金の受け取り時期を5年以上空けることで、それぞれに退職所得控除を適用できますが、これが10年に延長されることで、同じ優遇を受けるためには、より長期間空ける必要があります。この変更により、受け取り方法の戦略を見直す必要が生じる可能性があります。」
これらの制度変更は、iDeCoをこれから始める方や、すでに加入している方にとって非常に重要な情報となります。最新の情報は、国民年金基金連合会や各金融機関の公式発表、税制改正に関する政府の発表などで随時ご確認ください。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。